19.22.分断

709: 名無しさん :2017/11/18(土) 19:34:38 ID:???
「…よし、新手が来る前に城を脱出しよう。さっき教授のコンピュータで調べたんだけど、
この先に地下道に通じる抜け道があるはずだ」
(((地下道か………)))
彩芽の言葉に、唯、瑠奈、アリサの表情がこわばった。
ここの地下にはあまり良い思い出がないのだが、今はそうも言ってられない。

「道案内は頼むみますわ、彩芽。…でもこの煙の中を突っ切っていきますの?」
周囲は鏡花の攻撃魔法で発生した爆煙がまだ残っており、視界はかなり悪かった。
闇雲にいけばはぐれてしまう危険性もある。

「す、すみません…ちょっと威力出し過ぎちゃって」
「まあ、身を隠すには好都合だよ。…でも声かけたり音の出る機械を使うのも目立つし、どうするか」
「…みんな。はぐれないように手を繋いで行こう!」
「なるほど。…それなら行けそうね」(手を繋ぐのも、プールでちょっと嫌な思い出があるけど…)
「ナイスアイディアだわ、ユイ!」
「わたし、桜子お姉ちゃんと手を繋ぐー!」
「ふふ…スバル、静かに。…よし、全員いるな」
「行きましょう……必ず8人で」
「脱出しますわよーー!!」

こうして唯達は、互いに手を繋いで煙の中に駆け出して行った。
(…ん?今、最後に叫んだのって亜理紗か?なんか微妙にキャラ違ったような…)

………

「…アヤメカナビによれば、地下道の入口はもうすぐだ…みんな、大丈夫?」
案内役の彩芽が先頭、サラと瑠奈、唯がそれに続く。
「ええ、アヤメ。正直キツいけど…城を抜け出すまで、気は抜けないものね」
「サラさんもボロボロだけど、唯も辛そうね…頭の中、まだ痛む?」
「う、うん。少し……でも、この手だけは離さないよ…」
(今また敵に襲われたら、かなりヤバいわね…後ろの方は大丈夫かしら……?)

………

711: 名無しさん :2017/11/18(土) 23:39:26 ID:FlyynNeY

「あ、あれ?」
「キョウカ?アリサ?サクラコ?スバル?」
「ちょ、いつの間にか半分になっちゃってるじゃない!」
「い、いつの間に!?」

一方その頃唯たちは、自分たちが分断されていることに気づいていた。

「みんな、落ち着いて。ここで焦っては敵の思う壺よ」
「サラさん……でも、どうすれば……」
「アリサたちはアリサたちで、目的地へ向かっているはず……ここは彼女たちを信じて、私たちは前に進みましょう」
「うう、みんな大丈夫かなぁ……」
「でも、ここはサラさんの言う通り……アリサたちを信じるしかないわ」

仲間たちは心配だが、ひとまずは目的地へと向かうことにした異世界人たち。

(唯は頭を攻撃されてて、サラさんもボロボロ……彩芽は後衛だし……ここは私が頑張らないと!)

一番元気な自分が頑張らなければならないと、気合を入れて先頭を歩く瑠奈。


その瑠奈の足元に……!

712: 名無しさん :2017/11/20(月) 18:03:21 ID:???
ガシャン!

「っ、きゃあああ!?」

突如現れたトラバサミが、瑠奈の右足を捕らえる。

(ヒヒヒヒ!引っ掛かった引っ掛かった……成長しないなー、瑠奈ちゃんは)
(そう言えば、初めて会った時もアトラの罠に嵌まってたな)

唯たちがいる廊下の、突き当たりの角の片隅で、アトラとシアナは赤外線カメラを覗き、隠れながら唯たちに攻撃を仕掛けていた。

「る、瑠奈!?大丈夫!?」
「く、右足をやられた……!それよりも気を付けて!この能力、奴よ!」

瑠奈は腕力で無理矢理トラバサミをこじ開けながら、この罠の下手人を確信していた。

「奴?ルナ、それは一体?」
「あの赤毛よ!あ、変態の方じゃなくて、子供の方!」
「スピカのリザに気絶させられていた、あの……?」
「そう言えば、5対8でフルボッコにされた時にいたような……」
「あいつの能力はトラップ生成!みんな、足元に注意して!」
「そうは言っても、この煙の中じゃ足元が見えないよ……!」

鏡花の魔法による土煙は、身を隠すのに役立つと同時に、こちらも周囲を警戒しづらくさせてしまっていた。


「へへ……煙が晴れる前に、ポイント荒稼ぎしてやるぜ! まずは俺が1ポイントな!」
「チ……いいんだ、僕はポイント勝負よりも、最後に唯ちゃんだけ残してリョナれれば」
「オイ、負けた方がコーラ奢る約束忘れるなよ!」
「ま、どちらにせよ……唯ちゃん以外はさっさとダウンさせるか」


「まだ本調子じゃないけど……<閃甲>!コンバットアーマーの防御力なら、多少の罠は大丈夫よ!私が前に出るわ!」

クレラッパーへと変身したサラが、自らが矢面に立とうと前へ出る。
だがそれを見て、唯はハッとしたように叫ぶ。

「サラさん、ダメです!アトラ君がいるってことは、きっとシアナ君も……!」

しかしその忠告は、あと一歩遅かった。

「ルナ!今行く……あぁ!?」

サラは、突如現れた落とし穴によって、城の下層へと落ちていってしまう。

「さ、サラさーーん!!」
「マズイ、今のボロボロのサラさんを一人にしちゃ……!」

次々と分断されていることに焦りを覚える少女たちだが、有効な解決手段があるわけでもなく、右往左往する。


「アイツはアイベルトを圧倒したらしいからな……正面きって戦わない方がいい」
「へへ、シアナ……ひょっとして、これで同点とか思ってねぇよな?」
「ん?思うもなにも、実際同点だろ?」
「ふ……お前の落とし穴のさらに下に、トラップを仕掛けておいたのさ!都合よく服だけ溶ける水をな!これで俺は2ポイント!」
「アトラ……ちゃっかりしてるな……でも確かに、あの鎧女に服だけ溶ける水は有効だ」

730: 名無しさん :2017/12/02(土) 00:42:22 ID:???
「くっ……サラさんが……!」
「る、瑠奈どうしよう!このままじゃ私たちも落とされちゃうよっ!」

唯、瑠奈、彩芽の3人には落とし穴に落ちたらしきサラを案じている暇もない。
姿の見えない敵の攻撃の糸口は、土煙に塗れて全く読めない状態であり、いつ自分たちも罠に嵌められるかわからないのだ。
だがそんな中、彩芽だけは冷静だった。

「2人とも落ち着いて!これを使うんだ!」
「え……なんなの?この妙な樽は?」
「アヤメカNo.64、たるたるジェットパックだよ!ドン◯ーコ◯グ64のチンパンジーを見て作ったんだ!」
「な、なんかすごそうだけど……どうやって使えばいいの?」
「背中に付けてウホホーゥ!って叫ぶだけで空が飛べるよ!樽から飛び出す元気でバカな猿をイメージしながらやってみて!」
「そ、空が飛べるの!?すごぉーい!」
「な、なんなのよ!元気でバカな猿をイメージしてウホホーゥっていうのは!なんで私たちがそんな恥ずかしいこと……!」
「まぁまぁ、ちょっと原作に忠実に作ってみただけだよ。気にしない気にしない!」
「はぁ……で、でも……落とし穴を回避するためにはこれしかなさそうね……!」

空が飛べるだけで地面に足をつけずに済むし、シアナの穴も回避できる。
もはや唯と瑠奈にやらない選択肢はなかった。
素早く背中に装着すると、2人は大きく息を吸い込んで……



「「ウホホーゥ!!!」」



2人が叫んだ途端、ゴオオオオオオオ!!!という音ともに樽が火を吹き、2人の体は宙に浮いた。

「わ、わ、わぁ!すごい!すごいよ瑠奈!わたしたち飛んでるよぉ~!」
「と、飛んでるのはいいんだけど……!よく考えたらこれ、制御ミスったら危ないってもんじゃないわよ!唯ぃ!」
「わ、見て瑠奈!彩芽ちゃんは靴にブースターみたいなのがついて浮いてるよ!かっこいいね!彩芽ちゃん!」
「へへん。これはウホホーゥとかバカなこと言わなくても使える優れモノだよ!」
「そ……そんなもの作れるなら無駄にウホホーゥなんて言わせる機能つけてんじゃないわよーッ!」
「い、いやだからあれは原作再現でsy」

731: 名無しさん :2017/12/02(土) 16:02:46 ID:???
「よーし、とにかく今のうちに地下道に行こう!二人ともこっちだ!」
「ウホホーゥ!…って、やっぱ納得いかないわ!これじゃ私たちだけアホみたいじゃないの!」
「しょうがないだろ、ボクのは結構コツがいるんだ。メガネ端末で細かい姿勢制御とかしてるし」
「ウホホーゥ!!(そうなんだー!ねえねえ、今度わたしたちにもそういうの作ってよ!)」
「……唯もあっさり馴染んでんじゃないわよ!」
なんやかんや言いつつも、三人は数々の罠を飛び越えて地下通路へと降りていく。

  • 最終更新:2018-02-02 00:25:19

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