15.15.全員集合

350: 名無しさん :2017/05/13(土) 10:52:48 ID:???
(……あ、あれ?……確かボク達、アルガスに着いた後、怪しい科学者に捕まって……ヘンなおっさんと戦って……
スバルや桜子さん、サラさんが……殺されて……その後、どうなったんだっけ……)

気が付いたら、彩芽は地面に倒れていた。草や土の匂いがする……少なくともここは、アルガスの研究所ではないらしい。

(そうだ。なんか…ヘンなボールの中に捕らえられて…その後の記憶がはっきりしないぞ………)

ボクは……それに、亜理紗も…

…どうして、血まみれで倒れているんだ……?


……

「ぶはっ!!…ぼ、ボクたち助かったのか…?…き、キミは一体…!?」
「……一体、どうなってますの?……る、瑠奈!?どうしてここに」
派手な音と煙と共にヒューマンボールが弾け、中にいた彩芽とアリサは解放された。

「なっ!?…いくら教授の発明品がイイカゲンだと言っても、落としただけで中身が出てくるなんて…ありえませんわ!」

落ちた弾みで何かのスイッチが押されたか、元々壊れていたか……ありえなくても、実際そうなった。
そして今、瑠奈は尖った石(たまたまどこかで拾ったのだろう)をアイナの首筋に突き付けている。
アリサと彩芽も瑠奈の側に付き、それぞれ手に武器…というか、なんだかよくわからない機械…で武装した。

「と…とにかくこれで、形勢逆転ね!このピンクツインテを殺されたくなかったら、私達をこのまま逃がしなさい!もちろん唯も!」
「瑠奈って言ったっけ?…いきなりすごい卑怯なことしてるな(なんか気が合いそうだ)」
「……確かに、あまりフェアなやり方ではありませんけど…この際手段を選んではいられませんわ」
にらみ合いを続けるリザと瑠奈だったが…しばらくの後、ふいにリザが口を開く。

「なるほど…こんな風に、いざと言う時コロコロと都合のいい事が起こる…それが貴女達の『運命を変える力』、ね」
「…は?…何をわけのわかんない事を……いいから、さっさと私達を」

「だけどそんな物…私達『王下十輝星』の前では、何の意味もない」
「ええ…そろそろ、迎えのヘリが来る時間ですわね。久々に『アレ』で片を付けましょう」

リザとアイナ、二人が身に着けている指輪から細い光が伸びる。
二人の指と指が赤い光の糸で繋がれて…次の瞬間、二人の姿は瑠奈たちの目の前から消えた。

「あ……あれ!?…私達、どうしてこんな所に……」
…そして、記憶からも。

「確か…わたくし達、アルガスで捕まって…その後の記憶がはっきりしませんわね。瑠奈が助けてくれたんですの?」
「え?ええと…確か、アルガスから逃げて来たサキって子に会って…唯が箒に乗って…あれ?……」
記憶がところどころ曖昧で、思い出せない。だが、何だか…とてつもなく嫌な予感がする。
とんでもない危険が、すぐ近くに潜んでいるような…


……「スピカ」と「ベガ」。二人の指輪が光の糸で接続されている間、二人はそれぞれの能力を共有する。

(リザちゃん……アイナの事、ちゃんと覚えてます?)
(ええ、もちろん…能力を共有していれば、お互いの記憶が消える事はないみたいね)
…そして二人の指に繋がれた糸は、二人の心の繋がりの強さによって無限の硬度・切れ味を発揮する。

(よかった……でもこれで、はっきり解りましたわ……今のアイナと、リザちゃんは…)
(私とアイナは……)

((無敵!!))


「なんだか、わかりませんけど……」
「ボクたち今…とんでもなくヤバい気がする。」
「……逃げろぉぉぉおお!!」

「「エクストリーム・ピジョンブラッド・インビンシブル!!」」

351: 名無しさん :2017/05/13(土) 13:32:51 ID:???
「え……きゃあああああああああッ!!
!」
「うわあああーーーッ!!!」
「ひっ!い…いやああああああっ!!!!」
突如現れた見えない糸に、瑠奈、アリサ、彩芽の3人は悲鳴をあげながら体を切り刻まれていく。
(加減してるから体を切断まではしませんけれど、それでも動けなくなる程度にはなってもらいますわ……!)
(かわいそうだけど……これも私の目的のため……!)
光速で動き回る2人は、3人の悲鳴を聞いてもなお勢いを止めることはなく、容赦のない外傷を与えていく。

「いやっ!あああ゛あ゛!も、もうやめ…ぎゃああああああああッ!!!」
「あ!う゛あ゛ああっ!!!……あ……ボク……もう……だめぇ……!」
「あ、彩芽ええええぇぇっ!!うぐうっ!い゛や゛ああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!」
服が破れ、髪を切られ、肉が見えても、追撃の手が緩むことはない。
美少女たちが助けを求めて悲痛な悲鳴を精一杯上げ続けるも、厳重厳戒態勢のアルガスの街道には旅人や行商人もおらず、助けてくれる者は愚か3人を確認する者すらもいなかった。
「あ……ぐ……ぅあ……」
彩芽に続き、体も顔も傷だらけになった瑠奈は立っていることも叶わず、後ろ向きに地面に倒れ混んで仰向けになった。
「がぼっ!!!る……瑠奈……ぅ……」
アリサの来ていた純白の妖精の服も無残に切り刻まれ、服としての機能を失い下着が露わになってしまっている。
そして彼女も血を吐きながら意識を失い、仰向けの瑠奈の上にうつ伏せで倒れ込んだ。

リザとアイナの合体技になすすべもなく、異世界人の美少女3人は無残な姿で全滅してしまったのだ。

「く……そ……!どうして……どうしてこんな時に……運命を変える力が発動しないんだ……」
かろうじて言葉を発した彩芽の首筋に、リザはそっと手を当てた。
「運命を変える力……そんなものあるわけないわ。逆境にあるなら、自分自身の力で状況を変えるしかない。……運がいいだけで生きていけるほど、この世界は甘くないのよ。」
「うっ……!」
鈴のような声が耳に響いた後、首の裏を強く叩かれた彩芽は意識を失った。
「……ボールに戻そう。アイナ。」
「リザちゃん……さっきのセリフ、リザちゃんが言うと説得力マシマシで、アイナは痺れましたわ……!」

352: 名無しさん :2017/05/13(土) 17:29:50 ID:???
バババババ……

「じゃあ、早くボールにしまって……」
「ちょっと待ってくださいなリザちゃん、何か聞こえませんこと?」
「そういえば……」

バババババババ……

「あ、アレは……!」

ババババババババババ!!

「迎えのヘリじゃありませんの!なんで遠ざかってるんですの!?」
「しまった……!アイナ、早く能力を切って!」

アイナとリザが能力を共有している間、当然サキの頭からも2人のことは消える。迎えのヘリのパイロットからも忘れられる。そうなれば、起こることは一つ。

「お、置き去りにされてしまいましたの~!?そ、そんな殺生な……」
「能力を解いたから、すぐに思い出してくれるはず……戻ってくるのを待とう」
「うう……それはそうと、リザちゃんお水持ってませんか?」
「アイナがそんなに辛そうにするなんて……一体どんなお菓子を……」

などと話したり水を飲んだり異世界人たちをボールにしまったりしているうちに、リザの携帯から着信音が響く。当然ベートーヴェンの第五交響曲「運命」だ。
知らない番号からだが、とりあえず出ることにしたリザ。

「もしもし?」
『もしもしリザ?ひょっとして後先考えずアイナと合体技使ったんじゃない?』
「う……」
「やっぱりね……私がイタ電かける為にアンタの番号覚えてたことを感謝しなさい」
電話をかけてきた相手は、やはりというかサキであった。なんでもヘリのパイロットからスマヒョを借りたらしい。


『篠原唯は気絶させてヘリに乗せといたわ』
「うん、ありがとう」
『で、どうする?めんどくさいけどUターンする?私としては疲れたし早く帰りたいけど、異世界人たちを回収しないわけにもいかないわよね』
「うん、お願いしていい?」
『まったく世話が焼けるわねー、私がいたからよかったけど、最悪アンタら歩いて帰るハメになるところだったのよ?アホリザはテレポートできるからいいかもしれないけど、アイナなんかに長距離歩かせた日には』
「リザちゃん、ちょーっとごめんあそばせ……サキ!いいから早く迎えにきなさい!」

サキの毒舌が火を噴くより前に、アイナが電話を借りてサキに大声をあげる。

『っさいわねー、耳元で怒鳴るんじゃないわよ……ちょっと待ってなさい』

ブツ、という音と共に通話が切れる。なんにせよ、これでヘリは戻ってくるだろう。

「まったく、サキが実はこんなに腹黒で口も悪かったなんて……」
「でも、なんだかやっと、サキと本当の意味で同僚になれた気がする」
「り、リザちゃーん?なんか2人っきりで話して以降急に仲良く……というか距離感が近くなった気がしますけど、何があったんですの?例えるならば不良同士が川辺で殴り合って互いの実力を認めあったかのような感じが」
「特には……でも、サキにだって私にだって理由や覚悟はあるし、たとえ嫌われたからって私たちは同じ『王下十輝星』だから……だからきっと、これからも色々言いあいながらも助け合っていくんじゃないかな」
「お、おおう………?分かるようで分からないけど、ニュアンスは伝わるような……?」

そうこうしているうちに、今度はちゃんとヘリが近づいてくる。

「行こう、アイナ」
「ええ」
(なんだかよく分かりませんが……悪友、という奴ですの?)

353: 名無しさん :2017/05/14(日) 14:19:55 ID:RGcNCJnc
「……はい、途中で篠原唯、月瀬瑠奈の両名と遭遇し、捕獲しました……はい、はい、分かりました」
任務を終えた王下十輝星の三人が乗る帰還中のヘリコプター。そこではリザが王様に臨時の報告をしていた。任務外で篠原唯と月瀬瑠奈を捕獲したからである。

「まさか5人の戦士を全員捕まえられるとはね……これはボーナスも弾みそうだわ!」
素の彼女にしては珍しく、明るい声をだすサキ。それだけ今回の任務の成果は大きいということだ。

「リザちゃん……王様はやはり、単独でシーヴァリアに行かせるのを止めさせませんでしたか……?」
アイナも任務の大成功はもちろん嬉しいが、それ以上に王様がリザを使い潰すが如く危険な任務を単独でさせるのを思いとどまることを期待していた。

「うん、報酬は弾むけど、それはそれとしてシーヴァリアには行けって……」
「そうですか……リザちゃん、重ね重ねですが、無理はしないでくださいましね?」
「は?シーヴァリア?なに、アイベルトがヘマでもしたの?」
そこで、リザのシーヴァリア行きについて初耳だったサキが口を挟む。

「うん……連絡が取れなくなったから、様子を見に行けって」
「それで一人でシーヴァリアに潜入?王様ったら、アンタを使い潰す気満々じゃない。まぁアウィナイトの保護なんてどう考えてもガラじゃないし、当然っちゃ当然かしら」
「……!」
「サキ!貴女には言葉をオブラートに包むという概念がないんですの!?」
「なによ、本当のことをハッキリ言って何が悪いってのよ」
「大丈夫……分かってたことだから」

王様がリザに危険な任務をよく任せるのは事実だが、逆に言えば任務に失敗さえしなければいいだけのこと。
どんな危険な任務だって完遂して、王様にアウィナイト保護を続けさせる。
そうこうしているうちに、シーヴァリアとの国境が近くなってきた。

「そろそろヘリから降りないと」
「あっそ。精々捕まらないように気をつけなさい。いい子ちゃんの多い聖騎士の国に捕まっても、拷問とかされなさそうでつまらないから」
「……サキは、憎まれ口を叩くのが好きだね」
「は?なによ、ケンカ売ってるの?バラすわよ?例の件バラしちゃうわよ?」
「……そうしたら、サキの例の件もバレると思うけど」
「っち!そうだったわね」

エミリアが禁呪を使ったことを黙ってる代わりに、サキの邪術や裏の汚い任務も黙っている。友達でも敵でもない、敢えて言うなら共犯者である彼女たちを繋ぐ、奇妙で歪な縁。

「リザちゃんが軽口を叩くようになるなんて……それはそれで嬉しいですけど、疎外感……ああ疎外感、疎外感……」
エミリアと仲良くなったことでよく笑うようになったリザ。サキと一応の和解(?)を経て、年相応とまではいかずとも、生の感情を少しさらけ出すようになったリザ。『喋るのは苦手…相手が何を考えているかわからないから。言葉ではなんとでも言えるでしょう…?』なんて言ってた頃からは見違えるようだ。

(それを言えばアイナも少し変わった気がしますけど……きっと、良い変化なんでしょうね……)
リザやエミリア、シアナ……人との関わりは、人を成長させる。

(このままみんなと、ずっと一緒にいられたら……なーんて、柄にもなく思っちゃいますわね……)

  • 最終更新:2018-01-28 12:12:02

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