15.11.幕間1・フースーヤ

323: 名無しさん :2017/05/05(金) 12:19:52 ID:???
「おう、任せたぞ。」
ベテルギウスの捜索をリザに任せて、俺はスマヒョの通話終了ボタンを押した。
「あーあ。リザのやつ早くどっかで適当に死んでくれないかなー!」
アウィナイトの保護なんていう慈善事業は俺様の未来予想図に入ってない。
ライラに殺してもらえればと思ったが、現実は思った通りに叶えられていかないもんだ。

「王様。何か考え事ですか?」
「ん?まあな。」
フースーヤが心配そうな顔で俺様に話しかけてきた。
よく見るとこいつ、可愛い顔しているな。声も高いし、見た目だけなら女の子みたいな可愛らしさだ。
ついいじめたくなるが、俺様に男をリョナる趣味はない。

「さっき話が出たついでに、ベテルギウスに連絡をしたら消息がつかめなくなっていてなぁ。リザに調査を頼んでおいた。」
「消息不明……ですか。リザさん1人で大丈夫でしょうか?僕も行きましょうか?」
「なんだぁ?むさ苦しい城を抜けてリザと2人になってイチャイチャしたいってか?フースーヤ君。」
「え、あ、いや、そ、そんなつもりじゃ……!」
ふん。慌てちゃってカワイイ奴だ。まあこいつはそんな理由で動く奴じゃないだろう。城の中は退屈なのと、ただ単にリザを心配していると見た。

「冗談だよフースーヤ。でも調査はリザ1人で問題ない。あいつは優秀だからな……」
「そ、そうですか……」
「そんなに暇なら……お前も捕まえた奴隷をリョナって憂さ晴らしをしたらどうだ?ケケケ!」
「え……リョナって、て……僕がミントさんにやった……?」
「そうそう。女をボコボコにすることだよ。退屈なときやむしゃくしゃした時になるとスカッとするぞ。城の地下にはいろんなタイプの女の子が捕まってるからな。」
柳原舞はサキの他の任務でいないし、エミリアはリザのオヒキ兼城の雑用をしてもらっている。
となると……特にカワイイ子はアイセの奴か鏡花ちゃんになるか。

「市松鏡花なんかどうだ?お前のお姉ちゃんの友達だろ。お前を苦しめてきたルミナスの魔法少女で、知っての通りパイオツカイデーの美少女だ。リョナるにはうってつけだぞ。ヒヒヒヒ!」
「鏡花さんを……僕が……!」
フースーヤの目の奥が輝いた。こいつはミントをリョナった時、気持ちよかったと言っていたからな。あの快感をもう一度楽しめるのだから、断る理由はないだろう。
「身バレしたくないなら、お面でもボイチェンでも使えばいい。拷問器具もいろいろ揃っているから、好きに使え。あ、事に及んでる時の様子は全てカメラを回して、後で俺様に見せるようにな。ヒヒヒヒ!」
「……わかりました。ありがとうございます。王様。」

歪な笑みを浮かべながら、フースーヤは地下に降りていった。
はてさて、フースーヤはどんなリョナり方を見せてくれるのか……今から楽しみだ……!

330: 名無しさん :2017/05/06(土) 02:05:06 ID:???
フースーヤはしかも脳波コントロールできそうな人がつけてそうなフルフェイスの仮面及びボイスチェンジャーという完全装備で、一松鏡花のいる特別牢を訪れていた。

「だ、誰……?アトラ君……?」
一松鏡花は魔封じの鎖で拘束されてはいるものの、トーメント王国の捕虜としては破格と言ってもいい程の好条件で囚われている。暖かい毛布や美味しい食事、暇を潰す娯楽本などをアトラがせっせと運んでいたからだ。

「アトラさんが捕虜の魔法少女にご執心という噂は本当だったみたいですね……」
「……!アトラ君じゃないわね!」
身バレしないか少し緊張していたフースーヤだが、この完全装備なら流石にバレる方がおかしい。フースーヤの正体には気づいていないようである。

「さて、カメラを起動して……と」
「私をどうするつもり……真凜にやったみたいに、酷いことする気!?」
「あー、そう言えばなんかソッチ方面の責めを受けたらしいですね……安心してください、そういうことはしませんよ……ただ、甚振りはしますけどね」
「!?」
フースーヤはカメラを設置し終わると、鏡花の顎を乱暴に掴んで顔を持ち上げる。

「『ポイズンクラウド』」
「!?毒魔法!?」
毒ガスを近距離に散布する基本的な毒属性の魔法を使う。この毒ガスは近くで吸わせないと効力を発揮しないため、普段は風魔法で敵に運んで無理矢理吸わせているが……この距離なら関係ない。

「っや!」
毒ガスを吸うまいと必死に顔を背けようとする鏡花だが、フースーヤが顎をがっしりと掴んでいるせいでそれも叶わない。

「う……ゴホ、ゴホ!げ、ゲバ!おぅえ!」
毒ガスを吸ったことで、しばらく苦しんでから吐血する鏡花。
(普段あんなに凛としてた鏡花さんが、ポイズンクラウド一つで汚く血を吐いてる……!)
もっと魔力を込めればもっとあられもない悲鳴をあげるような毒も作れる。だがひとまずは、こうやって吐血させるだけに留めた。

「今のはまだまだ弱めの毒ですよ……そんなんで大丈夫なんですか?」
「ど、毒魔法……なんて……」
「おっと、ルミナスでは毒魔法は、邪術や禁呪程じゃないにしても禁忌扱いでしたっけ?」
わざわざ聞かずとも知っているフースーヤだが、身バレ予防も兼ねてあえて問う。

「ゲホッ、ゲホッ!そうよ。こんな風に、残酷なことを簡単にできる魔法は、英雄カナン・サンセット様が禁じたのよ!」
ちなみに、カナンは別に毒魔法を禁じたわけではなく、その危険性故に良識ある上位の魔法少女以外の使用をあくまで非推奨としただけだが……それは長い歴史において曲解されてしまっていた。

「こんなに便利なモノを自分から封じるとは……英雄って人種の考えることは分かりませんね」
「君みたいな人が……君みたいな人がいるから……毒魔法は危険性にばかり目がいって……良識のある毒使いを目指す男の子は……フウヤ君は……とても苦しんで」
それを聞いた瞬間、フースーヤはいきなり鏡花の顔面に強く強く殴りかかった。

「ぶ!」
「違うな……その毒使いの少年が恨むとしたら、風評被害をばら撒く残酷な毒使いではなく、正義を押し付ける勝手な魔法少女たちだ」
「ぐ……何を……魔法少女はみんな、清く正しい!光達の想いは……押し付けなんかじゃない!」
「魔法少女は清く正しい……まったく、その通りですよ」
「え?」
「でも、清くて正しいだけじゃ生きていけない人もいるんだ……!」

フースーヤは……フウヤ・トキワは魔法少女の中において珍しい少年戦士だ。女だらけのところに順応できなかった。
きっとそれだけなら、ちょっと浮いてる男の子というだけだったろう。しかし不幸にも、フウヤに適正のある魔法は風と毒であった。
そして幸か不幸か、一部の裏ワザ染みた手法を除いて基本的には不可能とされる単独での複数の属性の融合……言うなれば一人合体魔法を使える特殊体質であった。

ルミナスの歴史を紐解けば男性の魔法戦士というのは珍しくはあっても決してあり得ない存在ではないことがわかる。そして彼らは往々にして魔法に関する何かしらの特殊体質を持っていた。特殊体質故に男性でも魔法戦士足りえる魔力を持っているというのが通説ではあるが、詳しい原理は分かっていない。
ただ、フウヤにとって不幸だったのは、適正のある魔法が風と毒であったこと。そして一人で合体魔法を使える特殊体質だったことである。

331: 名無しさん :2017/05/06(土) 02:06:42 ID:???
強力ではあるが攻撃範囲の狭さから扱いにくい毒を、風で相手まで運ぶ。はっきり言って、危険かつ非人道的なことを簡単に行えてしまう魔法だった。
そこでルミナスが選んだのは……その能力を飼い殺しにすること。フウヤには風魔法だけ使ってもらって、あまりにも危険な能力は封印しようというのだ。

理性ではルミナスが正しいと分かっていた。危険で非人道的な力を振るうのは間違っているのだと、理性では分かっていた。
だが、フウヤは男の子であった。自分の力を十全に振るいたかったし、思いっきり得意な魔法を使いたかった。

毒だって立派な魔法だ。自分の得意とするれっきとした魔法だ。なのに毒を使えばお行儀の良すぎる魔法少女たちに批判される。男一人で信頼できる友人もいない。フウコは……姉は守ってくれない。あくまで冗談半分ではあるが、フウヤが女の子だったらよかったのにと言っていたのを聞いたことがある。

だから、だから少年は、自らの中に鬱憤を貯めていった。きっかえさえあればルミナスを裏切る程に。

「君は一体……?」
「ちちんぷいぷい……」
鏡花の問いかけを無視して詠唱を始めるフースーヤ。これ以上下手に話したら正体がバレるかもしれない。
そして鏡花は疑問に思う。その詠唱は初級の回復魔法のものだ。なぜこの状況でその詠唱をするのか……?その疑問はすぐに晴れることになる。

「イタイイタイ病になれ!」
イタイイタイ病。それは四大公害の一つであり、日本において最初に発見された公害である。患者は病的骨折による激痛に悩まされることになる。

そのイタイイタイ病を相手にかける魔法。名付けて『ペイン・シック・フロスト』。これは教授の研究書に書いてあった公害を見て、そこから実験に実験を重ね、最終的にヨハンとの訓練を経て完成したフースーヤのとっておきの魔法である。

「イタイイタイ病……?嘘でしょ……?」
「暴れない方がいいですよ……自分から骨折したくなければ」
そう言ってフースーヤは(仮面に隠れて見えないとはいえ)歪んだ笑みを浮かべる。

「殴って骨を折る感覚……ミントさ……ミント・ソルベットで初体験して以来、ご無沙汰でしたから……貴女で楽しませてもらいます」
「ミントさん……?ミントさんに何をしたの!」
「答える必要はありませんね……あ、そうだ」
急にフースーヤは佇まいを正すと、鏡花を正面から見据える。

「ちょっと照れますが……決め台詞ってのも、男の子の夢ですからね。せっかく王様に考えてもらったわけですし」
「何を……」
「魔法少女リフレクトブル―ム、一松鏡花……僕は貴女を、告訴する」

その直後、骨が折れる音と少女の悲鳴が、牢屋に響き渡った。

334: 名無しさん :2017/05/06(土) 23:39:35 ID:???
ボキ!ボキボキ!ボキャ!

「あ、があああああああ!!!いやあああああああ!!!あああああ!あ?あ?あ?あ?あ?!!」
「すっごい声出してますねぇ!それにまるで小枝みたいにポキポキ簡単に骨が折れる!」
「う、が、が…!」
フースーヤの新技『ペイン・シック・フロスト』により、鏡花の骨はとても脆くなり、彼が少し殴るだけで彼女は簡単に骨折した。

「このまま首の骨を折っちゃってもいいんですが…一応アトラさんのお気に入りですし、それに『五人の戦士』は重要な捕虜ですからね。下手すれば死ぬようなことはしませんよ」
「ふー、ふー、ふー!」
歯を食いしばって全身を駆け巡る激痛に耐える鏡花。その姿に嗜虐心をそそられたフースーヤは、別の趣向を凝らすことにする。

「折ってばかりも飽きてきましたし…次は『ずらす』としますか」
「ず、ずらす…?」
「こういうことです、よ!」
フースーヤは鏡花の右肩を掴むと、力を込めて無理矢理押し込み、関節を外そうとする。

ギチ…ギチ…ギチ…ボキ!

「ん、ぐうううううううう!?」
「ハハハハ!腕が長くなってよかったですね……そう言えば、脱臼って癖になるらしいですね?癖になるとすぐに肩が外れるようになるとか」
「ま、まさか…」

フースーヤは鏡花の外れた肩に手を置いてずれた骨を入れようとする。当然、優しさからではない。

「何回くらい外したり入れたりすれば癖になるんですかね?」
「や、やめて!」
「ふん!」

ゴキ!

「っ、~~~~~!!?!!?」
「は!」

ボキ!

「あ、んううううううう!!」
「せい!」

ゴキ!

「あ、やああああ!!ん、ぎゃあああああ!!」
「ハハハハ!ハーッハッハッハ!!」

笑いながら鏡花の肩を入れたり外したりを繰り返すフースーヤ。もうとっくに脱臼が癖になっているだろうが、それでも彼はとても楽しそうな笑い声をあげ、鏡花を甚振り続けた。

344: 名無しさん :2017/05/08(月) 01:19:27 ID:???
その頃…シアナとアトラは、トーメントの王都イータブリックスに帰還していた。
ネットオークションで落札した篠原唯と月瀬瑠奈を捕獲…するはずが、取り逃がしてしまった二人。
もしこれが王の命令だったら、懲罰は免れなかっただろう。
だがそれより何より、二人は唯が言った言葉が、胸の奥に棘のように突き刺さっていた。

(弱い人たちに暴力を振るって良い、なんて考えでいたら…いつか、自分より強い力に倒されてしまう)

「なあ、シアナ…唯ちゃん、本気だと思うか?……王様を倒す、って」
「わからない…少なくとも、正気じゃない。いくら唯ちゃんが修業したって、あの王様に勝てるわけが…」

(相手が自分より強いか弱いか、そんな事でしか他人を見られなくなる、か…
でも僕らは、そんな事には…ならない、はずだ)
力が全て、弱い者は全てを奪われる。それがこの世界の理ではあるが…
シアナもアトラも『それ以外の価値観』…『強さ以外の、大切なもの』の存在に、気付きつつあった。

「あーあ。なんか、モヤモヤするなー…帰ったら、また鏡花ちゃんとこ行こうかなー!ひひひ」
「やれやれ。アトラは相変わらずか……でも僕も今は、なんだか無性に…」
「ああ、アイナなら今、任務中らしいぜ。何でもサキがアルガスで捕まったから、助けに行ったって。
 会いたいのに会えなくて残念だったねシアナくーん!!」
「!?…ななな、僕は別に……そんな事、一言も……って、サキが捕まったって!?大丈夫なのか?」
「だいじょーぶ!俺には隠さなくてもいいから!お前らなら、きっとイロイロとうまい事いくって!」
「…い、イロイロって何だよ……いや、そんな事より…」

(…なんだろう…何だか、すごく……悪い予感がする…)

345: 名無しさん :2017/05/08(月) 15:00:56 ID:???
「さて、目立った傷はヒールで治しといたので、僕はこれで失礼しますね。アトラさんと鉢合わせたりしたら気まずいので」
「ぐ……」
「あ、一応言っておきます…フウヤ・トキワに痛い目にあってほしくなかったら、この事は黙っていた方がいいですよ」
「え…フウヤ君は無事なの!?」
「ええ、男を甚振る趣味のある人は流石にいないみたいでしてね…もちろん、貴女が余計な事を言えば身の安全は保証しかねますが」
フースーヤが鏡花をリョナったことがアトラにバレたら、彼はアトラにお灸を据えられてしまう可能性が高いので、一応嘘は言っていない。

「く…!フウヤ君に何かあったら、私、フウコに顔向けできない…!」
「なら、この事は黙っていることです」
フースーヤはそのまま、カメラを持って去っていった。


「おう、おかえりー。どうだったよ、リョナの感想は?」
「そうですね、最高でしたよ。あ、カメラはばっちり取れてましたよ」
「ほうほう、それは見るのが楽しみだな…ゲヒヒ」
「それにしても、よかったんですか?鏡花さんをリョナ?ったりして。アトラさんのお気に入りでしたよね?」
「なぁに、アイツもトーメント王国の男だ。可愛い女の子はリョナられる運命にあるってのは理解してるだろ。もちろん、王下十輝星及び俺に忠実な配下の場合はその限りではないが」



「たっだいまー!やっぱり我が家が一番!って感じ?」
「……ただいま」
丁度その時、アトラとシアナが王城に帰ってきた。

「おー、なんだ?手ぶらってことは、ネットオークションの商品とやらはやっぱりガセだったか?」
「え、ええと、ま、まぁ、そんな感じっすかねー?」
「変に挙動不審になるなよ…怪しまれるだろ」
「ほーう?まぁ、任務外のプライベートの時間で何をするかは各自の自由だ。とやかく追求はすまい」
「ふぃー!助かったー!じゃあ俺ちょっと鏡花ちゃんのところに行ってくる!」
「!?そそ、そうですか。い、行ってらっしゃい」
「…?どうしたんだフースーヤ、そんなに動揺して…あ!ひょっとしてお前も鏡花ちゃんのこと狙ってるのか!?」
「え!?いやいや、それはないですよ」
「まーそれもそっか、お前ってばルミナスの魔法少女嫌いだったもんな」
「ははは、そうですよ…ところで、シアナさんはどうかしたんですか?何か様子がおかしいですけど」
「いや…上手く言えないんだけど…何か、嫌な予感が…」
アトラは唯や瑠奈に負けかけたことを隠して挙動不審。フースーヤは鏡花をリョナった直後に彼女を色々と気にかけているアトラが鏡花の所に行くと聞いて動揺。シアナは言い知れぬ不安を胸に抱えて様子がおかしい……

「リザとアイナとサキは帰ってこないのに、アトラとシアナが帰ってきたから、余計にむさ苦しいな…」

王様はポツリと呟いた。

(世界情勢にドーンと変化でも起こったら、ロゼッタ辺りを呼び戻して配置変えでもするか?アイベルトも音信不通だし、いい機会かもしれんな…ま、そんな簡単に世界情勢が変化するわけもないかwww)

『スピカ』の手により世界情勢が大きく動こうとしていることを、王は知らない。

  • 最終更新:2018-01-28 12:00:23

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