15.10.カペラとベテルギウス

322: 名無しさん :2017/05/04(木) 23:26:21 ID:???
彩芽、アリサ、サラ、桜子の四人は、リザ達が踏み込んだ第1拷問室の隣、第2拷問室で、怪しげな機械に拘束されていた。
そして四人の前に立っているのは、研究所長のマルシェザール。

「…では、早速始めようか」(何やら隣が騒がしいようだが…まあ、何かあれば警備から報告が来るだろう)

「その前に…約束しろ。実験が終わったら、必ずスバルを生き返らせると。それと…その実験とやら、私がすべて一人で受ける」
桜子は拘束ベルトのついた大型ベッドに寝かされたまま、気丈にマルシェザールを睨みつける。

「くっくっく…随分と身勝手な言い草だ。だがいいだろう…実験に協力的なのは願ってもないからな」

「桜子さん…なんでだよ……そうやって、自分ばっかり背負い込んじゃだめだって、言ったばかりじゃないか…」
マルシェザールの不気味な笑みに、彩芽は改めて不安を覚えた。
亜理紗やサラは戦える状態ではなく、桜子もろくに抵抗しなかったため、あの後やって来た警備ロボたちに
四人はすぐ捕らえられてしまったが…自分だけでも、最後まで抵抗するべきだったのだろうか。

「先程の実験では、多少の波乱もあったが…君たち自身が危機に瀕した際、DTTが実際に発動し、
『最小限の犠牲で』破滅の運命から逃れることが出来ると立証された」
「……っ!!」
「その主な理由は、君たちが異世界人であり…この世界の運命とでも呼ぶべき物から、外れた存在だからだ。
そこで、一つの仮説が成り立つ。君たち自身だけでなく、君たちを元にしてコピー体を作ったとしたら…
そのコピー体もまた、この世界の運命から外れた存在と言えるのではないか、と」

マルシェザールは、自説を熱心に語りながら端末を操作し続ける。
桜子の身体は拘束ベッドごと起こされて、頭にはヘルメット型の機械が装着された。
「…何を、するつもりだ…!?」
「君の記憶は、既にスキャンさせてもらった。そのデータをもとに、仮想空間に君のコピー体を作り出す…
ただし、コピーと言っても実験用の不完全な物だから、仮想空間内で受けたダメージは、君自身の脳にもフィードバックされる。
そのつもりで、必死で戦う事だ…と言っても、戦うのは君のコピーなのだが。
そして、対戦相手は…君の記憶の中で、過去に最も苦戦し、最も無惨な敗北を喫した相手…」

「っ……まさか…アイツか…!!」
マルシェザールの言葉に、桜子の顔色が瞬時に変わった。その時の記憶が蘇ったのか、拘束された手足もガタガタと震え始める。
そのただならぬ様子に、彩芽とアリサは思わず訝しんだ。
「桜子さんが、あそこまで恐れる相手って誰なんですの…!?」
「ぼ、ボクにもわからないよ!…過去に負けた相手っていうと……もしかして、篠原唯かな?」
「え!?…篠原唯って、…え?…」
…アリサは予想外過ぎる名前を耳にして驚愕した。だが……どうやら、桜子が恐れているのは、別の人物であるらしい。

「やっ……やめてっ!!…アイツを…アイツらを、またサクラコと戦わせるなんて…!」
「え。サラさん、知ってるの…?」

「くくくく……そうだな、サラくん。記憶データによれば…あの時、君も一緒に戦ったそうじゃないか。
折角だから、やはり君にも参戦して貰おう。サラくんと桜子くんの、地下闘技場での最初の試合…
それは、タッグマッチ形式で行われた。対戦相手は…王下十輝星『カペラ』と『ベテルギウス』…!」

324: 名無しさん :2017/05/05(金) 13:17:53 ID:???
【名前】ロゼッタ
王下十輝星の一人である女性で星位はカペラ。年齢は22歳。謎めいた意味深な発言やそれっぽいポエムを連発するが、特に意味はないことが多い。一言で言えば不思議ちゃん。
魔力で練った不可視の糸を用いて相手を拘束したり切り刻んだりする。糸を自分の周囲に巻いて即席の盾にすることも可能。
基本的に相手は何が起こったのか分からないうちに敗北するため、彼女の実力は未だ未知数との声が高い。



「苦く消し去りたい記憶、思い出の残照、断ち切れぬ過去……人はそのいずれからも逃れることはない」
仮想空間に降り立った気だるげな目をした女性……カペラは早速意味深なポエムをかましていた。

「あ、あ、あ……」
同じく仮想空間に降り立った桜子の足は震えていた。前回、デモンストレーションと称して戦った際、何が起こったのかも分からないまま切り刻まれたのが頭から離れない。

「しっかりしてサクラコ!アレは所詮まがい物よ!」
それを言うと自分たちも十分まがい物なのだが……だが、サラは勝機はあると見ていた。アレは自分たちの記憶から産まれた者。ということは、自分たちの知らない技や能力を使うことはない。少なくとも、実際の王下十輝星よりは弱くなっているはず……




【名前】アイベルト
王下十輝星の一人である男性で星位はベテルギウス。年齢は24歳。英雄願望や承認欲求、自己顕示欲の塊で、回りから凄い奴だと思われたい、というのが基本的な行動原理。味方からは頼りにされ、敵からは恐れられるような男が目標。
剣や斧、槍、弓、といったあらゆる武器を使いこなし魔法も全属性扱えるが、何より厄介なのはその瞳に宿る異能。戦闘時には瞳が赤く発行し、数秒後の未来を写すことができる。
相手の次の行動が分かっているため、彼はどんな攻撃も簡単にいなすと言われている。


「俺を恐れろ、俺に恐怖しろ!」

「く……」
サラの脳裏に苦い思い出がよぎる。こちらの攻撃を全て分かっているかのように避け、あらゆる攻撃であらゆる痛みを与えてきた相手………



『ほぉ、王下十輝星のカペラとベテルギウスはこんな奴らだったのか……ククク、思わぬ収穫だな………では、バトルスタート!』

仮想空間に響くマルシェザールの声が、悪夢の再来を呼ぶ笛の音だった。

325: 名無しさん :2017/05/05(金) 14:23:06 ID:???
「私たちは幻……私たちは夢……私たちは紛い物……じゃあ、貴女たちは?」
ロゼッタが腕を一振りすると、不可視の糸が桜子を襲う!

「っく!」
その場に留まっていては攻撃を喰らう……桜子は右に大きく跳んで不可視の攻撃を躱すが、まるで『そこに移動することが分かっていた』かのように、アイベルトがそこに魔法を放っていた。

「バーンストライク!」
「しま……がああああああ!!」
「なぁ今の見たか!?見たよな!まぁ俺ほどの男になると、こんくらい出来て当然だけどな!」
「この連携も仮初……本当の私たちじゃない……」
「ぐぅうううう!?」
「サクラコ!?」

火の上級魔法でその身を燃やされ、そこに魔力製故に火にも強い糸で拘束される桜子。実力差を考えれば至極当然ではあるが、サラと桜子は早速ピンチであった。

「すぐに終わらせるのは駄目……たっぷりイジメてあげる……ねぇベテルギウス、お願いが……」
「みなまで言うな!俺ほどの男になると、相手の言いたいことを察するのも得意だからな!死なない程度にあの金髪を止めとくから、お前は好きに遊んでな!」
「ふふふ……ありがとう……流石に気が利くわ……」
「よせやい、そんな当たり前のこと言うなよ……俺ほどの男になると当然とはいえ照れるぜ!」

「さぁ……いつかの悪夢の続きを始めましょう……名も知らぬ女剣士……」
「や、止めろ!離せ、離せぇえええ!!」
「まずは少しずつ……その柔らかい肌に……糸を食いこませていく」
「ひ!」

前回戦った時も、男の方に動きを読まれて攻撃され、女の方にその隙に拘束されて嗜虐の限りを尽くされた。
知らず知らずのうちに足が震え、歯がカチカチと鳴っていた。

「段々血が滲んできた……私の魔力に……貴女の血が染み込んでいく……まるで砂が水を吸い込むみたい……」
「っつ!痛…!」
「大丈夫……今に痛いじゃすまない程キツくしてあげる……」

「サクラコを離しなさい!閃甲!」
「よせよせ!俺ほどの男になると、ダメージを与えずに足止めだけしとくのも簡単だ……お前は後でリョナってやるから、大人しく仲間が苦しんでるのを指を咥えて見てな!」
アイベルトの腕から闇のオーラが現れ、彼はその中から槍を取り出す。

「それは、あの黒づくめの女の子が使っていた……!」
「俺ほどの男になると、あらゆる武器を使いこなせるからな……この収容魔法は色々と便利だぜ!」


「ぐ!あああああ!!ぎゃああああああ!!」
(い、痛い……身体中が痛いぃいい!!)

不可視の糸でギリギリと締め付けられ、締め付けるだけでなく糸が食い込んで血がどんどん流れていき……桜子の全身には言い知れぬ激痛が走っていた。

「仮初の空間……仮初の身体……なのにどうして痛いの?どうして苦しいの?その痛みは本当?その苦しみは本物?」

326: 名無しさん :2017/05/05(金) 15:52:48 ID:???
「ぐああああああ!!いあああああああ!!」

「うーむ、いくら十輝星のコピー相手とはいえ、ここまで一方的な展開になるとは……やはりただの異世界人とDTTには埋めがたい差があるようだな」
「もう分かっただろ!?それ以上桜子さんとサラさんを甚振っても無駄だ!研究ならDTTの……ボクや亜理紗にすればいいだろう!」
「そうはいかない。普通の異世界人でも何かの拍子にDTTに覚醒する可能性も捨てきれないからな……この実験はそれを確かめるためでもある」



「ふふふ……ふふふふふ……!」
ロゼッタが指をクイ、と動かせば、それに連動して魔力の糸も動き、より強く桜子の身体を締め付ける。糸はその柔肌に容赦なく食い込み、その気になればすぐにでも身体を両断できることを伺わせた。

「確か前は……生きたまま少しずつ食い込んだ糸に身体を両断されたんだっけ……」
「い、痛い……痛い痛い痛い!!」
「痛みは人を弱くする……営みは人を増やしていく……じゃあ、人を強くするのは、なに?」
「あ、あああ、か、身体が、痛いぃい……」
「もう一度貴女を真っ二つにしたら……どうなるのかな」


「はぁあああ!!」
「おっと危ない」
「たぁあああああ!!」
「おっとっとっと」
サラの攻撃を躱し、たまに手に持つ槍でいなし……アイベルトは完全に遊んでいた。

「く……真面目に戦いなさい!」
「俺ほどの男になると、滅多に本気出す必要もないんだなこれが。ほら見ろよ、あの女の絶望した顔……前と同じ死に方するだろうなぁ可哀想に……あ、俺ほどの男になると戦闘中によそ見しても全然平気なんだよな」
「どこまでも馬鹿にして……!その足元を掬ってやるわ!」
「まったく……ならちょっと痛い目見てもらう……ぜ!」
「が!?」

アイベルトはサラのアーマーを槍で穿つ。だが、それだけでは終わらなかった。

「ダークストレージ、オープン!」
アイベルトの周囲に闇のオーラが浮かび、その中から大量の武器が現れる。

「槍で一点集中攻撃!斧でひたすらパワー重視!剣でバランスよく!メイスで斬るのではなく殴打!俺ほどの男になると、全部完璧に扱えるぜ!」

黒いオーラから武器を取り出し、黒いオーラに武器をしまい、また取り出し……あらゆる武器を演武のように扱いこなして、サラに色々なダメージを与えていく。


「ぐ……!あ、アーマーが……!ぐぁあああああああ!!」

327: 名無しさん :2017/05/05(金) 16:31:42 ID:???
「ぐああああああっ……!あ゛あ゛……っ!」
拘束されている状態では抗う術もなく、
ロゼッタの糸がギリギリと桜子の肌に食い込んでいく。
「縦の糸はあなた……横の糸は私……織りなす糸は、いつか誰かを温めうるかもしれない……」
「ぐあ、あっ、あが……!や、やめ゛でぐれ゛……し、死ぬ゛……!」
「死ぬ?それは体?それとも心?それとも尊厳?それとも夢?それとも現実?それとも……この世界?」

ロゼッタが質問をするたびに糸はギリギリと桜子を締め付ける。
それはまるで、彼女の質問に答えなさい、という痛みを伴う催促のようだった。
「あぎいいいい……あ゛んっ……っ!うぐうううあああああ゛あ゛あ゛っ!」
「気持ちいいの?苦しいの?私にはわからないけれど……そういう声を上げるあなたを見ているのは、とっても楽しいわ……!」

ギギギギギ……!
「あがあああ゛っ!さ、裂ける゛っ!体が……こ……壊れ゛う゛……っぐううっ!」
締め付ける糸の力はさらに強まり、桜子の体ももう限界だった。糸の食い込んでいる皮膚が裂け、大量の血が全身から流れ出していく。

「罪の皮から流れる赤……終幕の時は近い。全ての赤が流れた時、あなたは何を思うのかしら……」
「あ゛、あ゛、ああ゛……も、もう……だめ……!」
「……でも最後に……あなたという存在を、私にしっかり刻み込ませて。」
そう言うとロゼッタは、桜子の唇に自分の唇をそっと重ねた。
「んむっぐ!?」
「前は忘れてたから……でもこれで満足。あなたのことは、忘れるまで忘れないわ。……さようなら。」
グイッ!!!
「あがあぁっ!ぐあああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーッ!!!」
ロゼッタが強く糸を引くと、桜子の体がどす黒い真紅に染まった。



「こっちは死んだか。確か……春川桜子だったかな。」
人間の声とは思えない絶叫をした桜子は、そのままがっくりと項垂れた。
「そ、そんな……桜子さん……!」
「心配しなくても蘇生することは可能だ。だが……こいつは蘇生する価値もないかもしれんな。」
「こ……こんなことって……スバルに続いて、桜子さんまで……結局わたくしは、何1つ守れないというの……?」

328: 名無しさん :2017/05/05(金) 17:30:31 ID:???
「さて、ダッサイアーマーは剥いたし……」
「ぐ、う……」
アイベルトは彼の連撃によって横たわっているサラに近寄ると、髪を掴んで無理矢理立たせた。

「ぐ……!」
「言え、ベテルギウスのアイベルト様はとても強くてカッコよくて卑小なこの私では手も足も出ませんでしたと言え!」
「な……あまり私を舐めないことね!そんなこと言うわけないわ!」
女性としてはかなり長身のサラだが、アイベルトの方がサラより数センチ背が高いのでサラは彼に見下ろされる形となる。
燃えるような短髪の赤毛をしたアイベルトの灰色の瞳に睨みつけられても、サラは毅然とした態度を崩さない。

「へ……強情な……まぁ俺ほどの男になると、相手に望まないことを無理矢理言わせるのも簡単……」

「あがあぁっ!ぐあああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーッ!!!」
と、その時、桜子の断末魔の悲鳴が響きわたる。

「おいロゼッタぁ……せっかくその女を人質にして俺好みの台詞を言わせようとしてたのに殺すなよぉ……」
「……せっかく、名前で呼ばずに星位で呼んでたのに……今ので名前がバレた……でもどうせ仮想空間だから意味のないこだわりだった……?じゃあ意味のあるこだわりってなに……?」
「俺たちほどの王下十輝星となると、名前バレ程度気にしなくていいっつーの!まぁしゃーないか……」

「い、今の声は……サクラコ!?う、ウソ……貴女がそんな簡単にやられるなんて……!」
「俺たちほどになるとあんな雑魚、赤子の手をひねるより簡単に」
「よくも、よくもおおおおお!!」
「最後まで言わせろ!」
「ガハ!?」
激昂して殴りかかってきたサラに逆にパンチして沈めるアイベルト。

「……飽きた。アイベルト、お願い」
長い紫色の髪をかき揚げるロゼッタの同色の瞳は気だるげだ。身長は160cmくらいしかないので威圧感はないが、何を考えているのか分からない謎めいた雰囲気は不思議と人を警戒させる。
薄いピンクがかった白い服は、桜子の返り血を浴びて真っ赤に染まっている。

「了解、と!」
アイベルトが紺色のマントを翻したと思うと……剣、槍、斧、棍棒、メイス、銃、さらには火魔法、水魔法、雷魔法、風魔法、闇魔法、光魔法……あらゆる攻撃がサラの腕を、足を、腹を、肩を、腰を打ち抜いていく。

「う、は、あ、が、ぎ、あ、ぐうう!?」

「さて、俺の望む台詞を言えば楽に死ねるし、ひょっとしたら助かる可能性もある。後は、俺の言いたいことは分かるな?」
「が、は……ゲホ!ゲホ!私は屈しない………アンタみたいなナルシスト自信過剰男は、必ず足元を掬われる!」
「へ……随分つまらん捨て台詞だな。俺ほどの男になると、妬みやら僻みは一々気にしないが……今のは気に食わねぇな!」

「あ、ぎ、ぐ……うあああああああああ?あ?あ?あ?!!!!」
アイベルトのありとあらゆる武器が火を噴き、命を奪っていった。

  • 最終更新:2018-01-28 11:13:29

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