15.07.リザとサキ1

299: 名無しさん :2017/04/23(日) 19:10:55 ID:???
所変わって、ここはトーメント王国の王城。
王様からの突然の呼び出しにより、会議室には王下十輝星のリザ、アイナ、ヨハン、フースーヤが集まっていた。

「おいーっす、いや悪いなみんな、急に呼び出しちまって」
「まったくですわ!せっかくリザちゃんと酒池肉林染みたお菓子パーティーを開いていましたのに!」
「……アトラとシアナは?」
「あの2人なら、ネットオークションで買った物を取りに行くって言って出かけてるよ」
「あらそうなんですの、てっきりハッテンでもしてるのかと……で、なんでフースーヤはそんなボロボロになってるんですの?」
「いや、実はついさっきまでヨハンさんにこってり絞られてまして……」
「まぁ、ちょっとした訓練だよ」

「おっほん、まぁ女の子リョナるわけでもない野郎共の特訓風景は今度気が向いたらスピンオフですませるとしてだ。今回集まってもらったのは他でもない。アルガスに潜入したサキに異変があったらしい……最悪、囚われている可能性もある」
王のその言葉に、十輝星たちはにわかにざわつく。

「王様、それは確かですか?あの子がそう簡単に捕まるとは思えませんが……」
「うむ、まずはこれを見てくれ」
ヨハンの疑問に直接的には答えず、王は手元のリモコンを押してプロジェクタースクリーンにある画面を写す。

「これはサキの仕事用携帯から送られてきたアルガスの重要資料だ。そしてこれが送られてきた直後、サキの携帯のGPSの反応が消えた」
「と、いうことは……」
「ああ、敵地のど真ん中で敵に発見され、証拠隠滅に携帯を潰した可能性がある」
「サキ……!」
リザは歯噛みする。恐れていた事態が起こってしまった。

「で、今日の議題はこのDTT計画なるものについてだが……」
「え?」
「なんだ、どうしたリザ?」
「サ、サキは助けに行かないんですか……?」
「当たり前だろ?」
「……!」
そうだ、この王はこういう人間だった。配下はあくまで配下。貢献している間はともかく、失敗してからの対応は冷酷だ。

「でも、サキはこの情報を送ってきた……任務に失敗したわけじゃ」
「あのなリザ、そういうことじゃないんだよ。ここで大々的にサキを助けに行くと、サキがトーメント王国のスパイだってことがバレるだろ?そうすると下手すりゃナルビア王国とはすぐに全面戦争だ。負ける気はしないが、かと言ってサキ一人の為にそこまでするような依怙贔屓はしたくない」
「……!」
「工作員のサキにはそういった不利益を押し付けるからこそ、普段は安全な異世界勤務や後方勤務ばかりさせているわけだからな」
王様はいつも屁理屈を言うが、その屁理屈には筋が通っている。だが、ならば逆に……こちらも屁理屈を言えばいいのではないか?

「王様、私はあくまで国益のため、サキの救出作戦を進言します」
「ほう?」
「研究都市アルガスなら、破壊された携帯を復元する程の技術力があってもおかしくない……もしそうなら、サキを助けに行かなくても全面戦争になるかもしれません。しかし、サキを救出し、携帯の残骸も回収すればその事態は回避できます」
無口なリザらしからぬ長台詞によるある程度筋が通った屁理屈。王様にはこういった屁理屈による進言が効果的なのだ。

「まぁ、一理はあるな……ヒヒ、いいだろう。今日の議題にサキ救出作戦案を追加してやる」
「ありがとうございます、王様」

(なんか最近リザさんばっかり目立ってずるくないですか?)
(僕なんか王都から出れないから、活躍の機会も限られるしね……)
(リザちゃんばっかり目立ってるというか、貴方たちが空気なだけd)
(言わせねぇよ!?……なんちゃって)
(ヨハンさん……貴方……)

300: 名無しさん :2017/04/27(木) 23:34:42 ID:???
「まあ結論から言うとだ。DTT計画自体は、方向性もズレてるし放置しても当分は問題ない。
ただ、我々にケンカを売ろうとしているのは明らかだからな。そこで、リザとアイナ…暗殺チームの出番だ。
研究所長のマルシェザールを秘密裏に始末して、DTTの研究をされると困る…と連中に誤解させられればベスト。
ついでに、アルガスにいる『例の5人』を何人か連れ帰れれば文句ないな。
サキを助けたいなら、そのついでにやればいい。…ただし。
迎えに寄越すヘリには、乗せられる人数に限度がある。…わかるな?」
「…はい」
…すなわち、サキを救出するなら『例の5人』を拉致する人数を一人削らなければならず、その分はリザ達の失態と見なされる。
仲間を助けるためには、己の立場を犠牲にしなければならない。
だがこの時点で、リザは『犠牲にするべき一人』…『敵地に一人、取り残される役』を決めていた。
彼女にとって、それは考えるまでもない事だった。

「……私としては、サキの救出は賛成できません。むしろ、彼女の口を封じるべきだと思います」
続いて口を開いたのは、ヨハンだった。その意見は、理屈としては正論。
サキと同じ立場なら、リザ自身も、恐らくそれを望むだろう。

「それは…わかっています。でも……」
理屈は痛いほど理解できた。だが、その痛みに耐えられる強さを、リザは持っていなかった。

「…本当にいいのかい?君は気付いていなかったかもしれないが…サキは君の事を随分嫌っていた。
裏では色々と、君を貶めるようなこともしていた。僕なら、ざまあ見ろとほくそ笑んでいた所だ」
「……!!」
ヨハンの言葉に、リザの動きが一瞬固まった。次の一瞬、複雑な表情を浮かべ…すぐに、いつもの平静な表情を取り戻す。
だが、彼女にとってそれは青天の霹靂。内面では、その一瞬のうちに様々な想いが去来していて……

「どうして、今……それを言うんですか」
涙混じりの声で、それだけを絞り出すのがやっとだった。

303: 名無しさん :2017/04/29(土) 09:17:33 ID:dauGKRa6
「どうして、今……それを言うんですか」
ヨハンから告げられた事実にリザは涙交じりの声で答える。ヨハンはそれには答えず、リザの二の句を待つ。
だが、口を開いたのは別の人物だった。
「サキがリザちゃんを嫌っていたのはなんとな~くアイナも知ってましたわ。だってリザちゃんは顔良し、声良し、スタイル良し!もう眩しすぎて見えないくらいの超絶美少女ですもの!普通の女の子なら嫉妬して当たり前ですわ!」
「嫉妬…ですか。確かに女の子同士ってそういうのとても多いんですよね……はぁ。」
ルミナスで女同士の軋轢を嫌という程見てきたフースーヤは、意味深なため息交じりに同調した。

「ほら……リザの部屋にゴキブリが突然10匹も湧いたり、リザの下着が突然なくなったりしたことがあっただろう?あれはサキの仕業なんだよ。」
「どうして…そう言い切れるんですか。」
「僕の部下にもサキほどではないけど優秀な工作員がいてね。その子にサキのことを徹底的に調べてもらった。」
「どうしてサキを調べ上げる必要があったんですの?一応仲間ですのに。」
「俺がヨハンに指示をしたんだ。サキを監視しろとな。」
アイナの問いに、静観していた王が退屈そうに身を伸ばしながら答えた。

「王様がサキのことを調べたかったんですの?」
「まあな。あいつの工作員スキルは本物だ。それゆえにいつこちらの情報を横流しされるかわからない。だから定期的にヨハンにサキを調べてもらっているんだ。」
「あぁ、だからサキさんがリザさんに嫌がらせをしてるのも知ってたんですね。」
「まあそこは個人の考えだし、別にどうでもよかったんだけど……リザがあんまり意味のないことをしようとしてるから、バラしちゃったよ。」
「意味のないこと……?」
ヨハンの言葉を復唱したリザは、ゆっくりと顔を上げる。
「確かに工作員として優秀ではあるけど、こうして捕まった以上はもう敵に情報をバラしているかもしれない。もし裏切りの可能性が少しでもあるなら、生かしておくわけにはいかないしね。……特に彼女のようなタイプは。」
優秀な工作員だからこそ、捕まった時のリスクは高い。サキの持つ情報が敵国に漏れることは、万が一にも許されないのだ。
「助けたとしてもアルガスで何かをされて、ナルビアのスパイになっている可能性もある。実際ナルビア王国は敵国の捕虜を洗脳して、自分たちの駒として使っているしね。」
高い科学力を持つナルビア王国は、敵国の兵士でさえも有効活用する。
人体実験、薬物投与、人格洗脳……
ナルビア王国に捕まった捕虜の末路は、そういったものばかりだ。
「しかも……君にとってサキは危険な存在だ。……言っておくけど、サキは機会さえあれば君を殺すよ。機会さえあれば……ね。」
「………!!」
それはつまり、ゴキブリや下着紛失などの嫌がらせでは済まないということか。
普段の柔和な表情と口調で喋るヨハン。彼の発する言葉の全てに、リザに対する明確な意味が込められていた。

サキの救出をするべきではないと。

「……それでも、私は……」
「まあ、そこはリザの判断に任せようじゃないか。サキを助けたいなら勝手にろ。もうヘリの用意はできてる。アイナと一緒にさっさと行け。」
「了解ですわ!さあ行きますわよリザちゃん!ウジウジ考えるのはヘリの中で、ですわ!」
「あ、気をつけていってらっしゃーい!」
アイナに手を引かれ会議室を後にするリザ。一瞬振り返った時に見たヨハンの表情は、いつも通りの優しげな表情だった。

(ヨハンは……私を心配してくれてるのかもしれない。それでも……それでも、私は……)

305: 名無しさん :2017/04/30(日) 00:47:15 ID:???
「リザさんとアイナさん、大丈夫でしょうか……僕、ちょっと心配です。」
要塞兼研究所を構えるナルビア王国の重要拠点であるアルガス。
敵国の拠点で捕虜の救出、異世界人の確保、DTT計画を主導するマルシェザールの暗殺という任務を請け負うのは、13歳の天真爛漫な少女と15歳の物静かな少女である。
「なんだフースーヤ。心配か?」
「だ、だって…あんな小さな女の子2人で、本当に大丈夫なんですか?」
フースーヤは真剣な表情で王に尋ねる。すると横で聞いていたヨハンが、跳ねた黒髪を撫でつけながら口を開いた。
「アトラとシアナはともかく、あの2人が揃って任務を失敗したことはないよ。心配しないで、フースーヤ。」
「そ、そうなんですか……!女の子とはいえ、さすが王下十輝星のメンバーですね!」


「それにしても、アイナもリザもサキもいなくなって少しむさ苦しいな。」
「そういえばそうですね。女性陣もアトラもシアナもいないから、今城にいる十輝星は僕とフースーヤ君だけか……」
「あ……そういえば僕、まだ会ってない十輝星の方がいるんですが……」
フースーヤが言うまだ面識のない十輝星……それはカペラとベテルギウスの称号を冠する2人を意味する。
エスカの星位だったフォーマルハウトは現在空位のため、十輝星という名目だが今現在活動しているメンバーは9人だ。
「カペラはアングレームの遺産の調査で、討魔忍の国『ミツルギ』を嗅ぎまわっている。おそらくあのアルフレッドとかいう遺産を狙う執事と火花を散らしているんだろう。」
「ベテルギウスは確か……聖騎士の国の『シーヴァリア』を調査中でしたね。進捗は僕は聞いていませんが……」
「へぇ……お2人とも1人で他国の調査なんて危険な任務をこなしていらっしゃるんですね。」
他国の調査……それはすなわち敵国の情報収集や要人の暗殺などの仕事を1人でこなしているということだ。これは戦闘、情報収集、時には演技力など相当の実力者でないとできない任務であり、かなりの重責を伴う任務でもある。
「まああの2人は王下十輝星でヨハンと並ぶ実力者だ。国の外の調査でほとんどここへ戻ることはない。恐らくフースーヤが2人に会うのも当分先になるだろう……」
「まあ、2人ともみんなと同じように変わってるから、会えばすぐ名前も性格も頭に入ると思うよ。」
「承知いたしました!お2人にお会いできる日を、楽しみにしております!」

309: 名無しさん :2017/04/30(日) 23:10:21 ID:???
サラがワルトゥに胸をむにむに揉まれている頃、アルガスへ向かうヘリの中でアイナとリザは作戦を考えていた。
「とりあえず優先すべきはマルシェザール所長の暗殺ですわ。上をやれば示威行為にもなるし、DTT計画にも大きな支障が出るはず。」
「……うん……そうね……」
「そして、「あの5人」……彩芽、アリサ、サラ、桜子、スバルの5人の拘束ですわ。これを達成するために、教授が素晴らしいアイテムをくれたんですのよ!」
「……うん……そうね……」
「ジャジャーン!ヒューマンボール!これは弱らせたり麻痺させたり眠らせたり凍らせたりした人間を、この中に捕獲して携帯できる夢のようなボールですわ!」
いわゆるモンス○ーボールのようなものだが、本家と違い弱らせたりしないと絶対にゲットすることはできない仕様である。
「教授の発明もここまでくると天才を通り越して変態の領域ですわね!キャハハハハハッ☆」
「うん……そうね……」
「これがあるから、ヘリの定員も気にせず帰れますわよ!よかったですわねリザちゃん!」
「うん……うん……そうね……」
景色を見ながら同じセリフで返事を返すリザの様子に、アイナの堪忍袋の緒がブチ切れた。

「もーうっ!やる気ありますのリザちゃん!?さっきからしょーもない生返事ばかりで!!さすがのアイナもプッチンきましたわよっ!」
アイナが椅子をバン!と叩きながら叫ぶと、リザは小さく飛び跳ねて青い目を丸くした。
「あ、アイナ……どうしたの……?」
「はぁ……どうせリザちゃんはサキのことを考えているんでしょうけど、最優先でやるべきことを間違えないで欲しいものですわ!」
「あ……うん。わかってる……でも、どうしても気になるの。私がサキに憎まれる理由が……」
「そんなの、本人から聞けばいいんですわ。でもサキの救出はあくまで「ついで」ということをお忘れなく。アイナたちまで捕まったら、サキと一緒に仲良くあの世行きですからねッ!」
「うん……わかった……」
言葉ではそう返したが、リザにとってはなによりもサキの救出が1番だった。
(きっと私が無自覚にやったことで、サキは1人で苦しんでる……!早くサキに謝らなきゃ。そのためにも絶対にわたしが助ける……!サキ、無事でいて……!)
サキの無事を祈った瞬間、リザのガラパゴス携帯からベートーベンの第五交響曲「運命」が流れた。

ジャジャジャジャーン!ジャジャジャジャーン!
(リザちゃん……!まだガラケーでしたのね……!)
音楽はクラシックしか聞かなかったり、携帯が未だにガラケーだったりと、リザは世間に疎いところがある。
(しかも……それが着信音って……!)
だがそんなリザの少し普通から外れたところが、アイナは大好きだった。
「もしもし……あ、王様……!はい……はい……」
リザは王からなにか指示を受けているらしい。30秒ほど相槌をうったあと、通話を終了し携帯をパチンと閉じた。

「……シーヴァリアにいるベテルギウスの消息が掴めないみたい。この任務が終わったら、私が様子を見に行けって……」
「え……!リザちゃん、最近危険な任務を1人で任されすぎではありませんこと?聖騎士の国シーヴァリアに単独潜入だなんて……」
「……でも、任務だから……」
先日のライラの件から察するに、王はリザがいつ死んでもいいと思っているのだろう。だからこそ危険な任務ばかり回されているのだ。
とはいえ、アウィナイトの復興という目的のために、リザは与えられた任務をこなすしかない。

「リザちゃん。アイナはリザちゃんのいない生活なんて考えられないのですから、どんなことがあっても、行きて帰ってこないと承知しませんわよ!」
リザの手を握り、目を合わせて訴えるアイナ。口調こそ上からだが、リザはアイナが言葉に込めた優しい気持ちをすべて汲み取ることができた。
「……アイナ、心配しないで。私なら大丈夫だから……」
そんなアイナに不器用な笑顔を見せるリザ。その笑顔を見てアイナは思った。
「……最近のリザちゃんはよく笑うようになりましたわね。きっとあの子のおかげですわ。」
「え?……あの子って……?」
「エミリアですわよ。あの子が牢屋から出てリザちゃんの部下になってから、リザちゃんはよく笑うようになりましたわ。」
「……そうかな……?」

本人に自覚はないようだが、アイナは確信していた。
願わくば、この笑顔がある日突然絶えることないように……
アイナはリザの手をもう一度、ぎゅっと握りしめた。

312: 名無しさん :2017/05/02(火) 09:07:58 ID:???
「着きましたわね。ここがアルガス……ナルビア王国の重要拠点で、トーメント王国からも近い研究開発都市ですわ。」
「アイナ、誰に説明してるの……?」
レーダーからのステルス機能つきのヘリを離れた場所に下ろし、アイナとリザは研究所前に到着した。
「アイナたちのいいところは敵地へ簡単に潜入できるところですわよね。警備を強化したところでモーマンタイ!余裕で掻い潜れますわ!」
「でも……アルガスの研究所だから監視カメラだらけだと思う。アイナは消えれるけど、私は……」
「おおう、それもそうですわね……じゃあとりあえずアイナが先行して、監視カメラの場所を把握しないとですわね!」
「お願い。連絡用にこれも着けておいて。」
リザが差し出したのは連絡用のヘッドセット。ステルス起動中であれば声も周りに聞こえないため、アイナが喋る分には安心して連絡を取り合うことができる。

「よーし!美少女コンビの華麗なる潜入作戦開始ですわ!」
アイナはステルスを起動し、署員が入り口ドアを開けた隙にさっそく研究所へ潜入する。
教授の開発した「異能力一部無効化装置」により、アイナがステルス中でも味方だけはアイナのことを忘れないようになっている。
裏を返せば、この装置が壊されれば制御が効かずステルスをすると自身のことを周りが忘れてしまうということ。弱点が増えてしまったが、敵に自身のことを忘れてもらえるという特性上、撹乱にはこれ以上ない能力となった。

(カメラが多いですわね……でもそれは入り口や出入り口ばかり。死角がないわけではありませんわ。リザちゃんにカメラの死角を教えていれば、2人で潜入できそうですわね。)
入ってきた入り口はもちろん監視カメラだらけのため、ドアが開いた瞬間に死角にテレポートすれば掻い潜れるだろう。
「リザちゃん。今署員が入り口を開けますわ。その隙にテレポートして前方の観葉植物の辺りに来てくださる?」
「……了解。」
退勤と思われる署員がドアを開けて出た隙に、リザは言われた通りの場所にテレポートして身を潜めた。
「完璧ですわ!この調子で進んで、マルシェザールを探しますわよ!」
「…………了解。」

本当は一刻も早くサキを見つけたいリザだったが、とりあえずはアイナの言う通りにして情報を集めることにした。
(いろんなところに研究所内の地図がある……サキがいそうな場所は……!)

318: 名無しさん :2017/05/04(木) 15:03:22 ID:???
「ここが管理室ですわね。アルガスの制御システムがある部屋ですわ。ここをハッキングすれば、監視カメラを無効化できますわ!」
「ねえアイナ……誰に説明してるの……?」
訝しむリザを無視して、アイナは教授から貰ったUSB端子を適当に突っ込んだ。
「教授の開発したハッキング端子ですわ!これでしばらく経てば全システムがダウンしますから、そのあとはリザちゃんも暴れ放題ですわ!」
「了解。」
地図にはサキが囚われていそうな部屋はなかった。監視カメラがなくなれば、地図にない地下を調べることができる……
そんなことをリザが考えていると、突如研究所内は停電し、非常用の灯りがついた。

「成功ですわね。これでマルシェザールの暗殺も、異世界人の確保もやりやすくなりましたわ。」
アイナが満足げにUSBを引っこ抜くと、制御室のドアが勢いよく開かれた。
「貴様ら!何をしているゥッ!!」
「アイナ!私に任せてっ!」
リザは男に向かって跳躍し、両足で男の顔を挟み込む!
「むぐぅ!や、やめろ……!い、いや、太もも柔らかいし、このままでもいいかも…ゲヘヘ。」
「はっ!」
男のセリフは聞かずに、リザは太ももで男の頭を挟み込んだまま回転し、巻き込んだ男の脳天を地面へと思い切り叩きつけた!
「ごぎゃっ!!」

「な、なんと綺麗な幸せ投げ……!リザちゃんにこんな幸せな技をかけられて昇天なんて、このモブ男は運が良すぎですわ!!」
「幸せ投げ……?それよりアイナ、ここから早く離れないと!」
「りょーかいですわ!早くマルシェザールを探しましょう!とりあえず走りますわよー!」
ニヤついた顔のまま気絶している男を踏みつけ、アイナはとてとてと走りながら部屋を後にした。

「さて……」
リザが倒れている男をひっぱたくと、男は意識を取り戻した。
「う、ううん……?」
「時間がないからすぐに質問に答えて。答えなければ殺す。」
リザは冷たい声でそう言い放つと、切れ味抜群のナイフを喉元に突きつけた。
「ひ、ひぃっ!やめろ、やめてくれ……!」
「今日ここで捕まったスパイはどこにいる?」
「ち、地下だ……!地下の1番奥の部屋だ!」
「1番奥の部屋……ね。」
「な、なあ。頼む!殺さないでくれ!俺には妻と娘がいるんだ!」
「……………」
「頼むよ……娘はまだ3歳なんだ。俺が死んだら、妻とあの子が路頭に迷うことになっちまう……殺さないでくれ!おねがいだ……!」
「……私たちのことは、容赦なく殺したり誘拐したり性奴隷にするくせに。」
「え?……がはっ!」
ナイフの柄で素早く首を叩くと、男は小さく悲鳴をあげて気絶した。

(この人が悪いわけじゃない……それはわかってるけど、命乞いをされるといつもイライラする……!)
リザがそう思うのは、自分たちアウィナイトは命乞いなどしたところで、情けなどかけられないから。
命乞いをされると虫酸が走るのは、自分の心の中のドス黒い部分だと、リザははっきり認識していた。
「リザちゃん何してるんですの!?早く行きますわよー!」
「……今行く!」
この心の闇が晴れる日は果たして来るのか。
今のリザには知る由もない。

319: 名無しさん :2017/05/04(木) 17:55:27 ID:???
「アイナ、地下に地図には載ってない部屋があるみたい。ひょっとしたら異世界人はそこに隔離されてるかも」
「リザちゃん、最優先はマルシェザールの暗殺ですわよ?」
「研究所長ともなれば、異世界人のDTT計画にも積極的に関わってるだろうから……上手くいけば両方一度に見つけられるかも」
「……はぁー、まぁそういうことにしときますわ。どちらにせよアテもなく探し回るよりは効率的でしょうし」
(もっともらしいこと言ってますけど……やっぱりサキのことで頭がいっぱいみたいですわね。さっきの衛兵にも何か聞いてたみたいですし……)
「アイナ……ありがとう……」

任務を根本から否定するような行動を取っていたら流石にアイナもリザを止めただろうが、あくまでリザは『マルシェザール捜索』の一環としてサキを救出するというスタンスを取っている。
リザの言う通り、異世界人とマルシェザールを両方見つけて一石二鳥となる可能性もなきにしもあらずなので、ここはリザの無茶に付き合うことにしたアイナ。



「あ、そうだ。俺そろそろ行くわ」
「なんだ?最後まで見てかないのか?」
「いやもっと見てたいのは山々なんだけどさ、そのスパイちゃんが捕まる直前に壊してた携帯あったろ?あれの復元してどこのスパイか割り出そうと思ってな」

Dの残した水滴拷問装置によって、今もなお呻いたり痙攣したりしているどこかの美少女スパイ。その姿に満足して忘れかけていたが、そもそも自分たちの目的はこのスパイがどの勢力の手の者か口を割らせることだった。……俺としたことがぬかったぜ。

「ってなわけで、じゃあな」
「ああ、頼んだぜ」

そう言って真面目な兵士は出ていく。アイツも真面目だよな。携帯の復元なんかいつでもできるんだから、もっと美少女スパイの苦しむ姿を見ていけばいいのに。

「俺、アクアリウムの認識をちょっと改めるわ……これはすげぇ」
「なぁ、携帯の復元が終わってコイツの身元が割れたらさ、その後どうする?」
「どうする?って……用済みになったスパイに対してやることなんて一つしかねぇだろ」
「へっへっへ……それもそうだな」
「ぐへへ……」
俺とリックが下卑た笑いを浮かべていると、急に扉が開いた。

「なんだ真面目くん、忘れ物でも……な!?」

俺の言葉は途中で驚愕に変わる。扉から出てきたのは……見たこともない美少女だったからだ。

320: 名無しさん :2017/05/04(木) 20:17:28 ID:???
「お?なんか変な機械がありますわね。それに、あそこで横になって喘いでるのは……」
「あれは……サキ……?」
アイナとリザが入った部屋には、兵士3人と目隠しをされて横たわっている少女が苦しそうに喘いでいた。
ピチョンッ!
「うあぁっ!……あ、あ……!」
機械から水が垂れて額に直撃した瞬間、少女は苦しそうに身をよじって喘ぎ始める。
その声を聞いたリザは、その少女がサキだとすぐさま確信した。
「だ、誰だ君達は?うちの署員の娘かなんかか?こんなところまで入ってきちゃダメだろう!」
「まったく……それにしても、2人とも可愛いねえ。お父さんは誰だい?」
「ふん。子どもだからって甘く見ないでほしいですわ!アイナたちは……」
アイナが無駄なおしゃべりを始めようとした瞬間、男たちは腹を抑えて倒れ込んだ。

「ぐああああっ!!、さ、刺されたああああっ!」
「こ、この金髪のガキ……能力者だ……!」
素早い動きで全員の腹部を思い切りえぐり出した後、リザはすぐさまサキへと駆け寄った。
「え……アンタは……」
「サキ……!今助けるから……!」
拘束具を魔力で強化したナイフで引き裂いて、目隠しを外す。
そこにあったのは……涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったサキの顔だった。

321: 名無しさん :2017/05/04(木) 21:15:28 ID:???
「り……ざ…なん……で」
「もし捕まったら、絶対助けに行くって言ったでしょ」
(サキがなんで私のことを憎んでいるのか……それは分からない。分からないから話を聞きたいけど……とりあえずそれは一区切りついてからでいい)
サキの顔を懐から取り出したハンカチで拭きながら、リザは優しく語りかける。

「ふー、やっぱり真っ先にサキを助けることになっちゃいましたわね……サキ!リザちゃんに感謝なさい!貴女がリザちゃんにしょーもない嫌がらせをしてたってのはヨハンが喋ったにも関わらず、リザちゃんは貴女を助けることしか考えてなくって」
「アイナ、今はその話は止めて。サキ、動ける?」
「な、なんとか……」
(く、く、屈辱だわ……!まさかよりによってコイツに助けられるなんて……!ていうか絶対バレてないと思ってたのにヨハン様にバレてたなんて!)
サキの心は色々と煮えたぎっていたが、今はわだかまりをひとまず置いておくべき状況であることも分かっている。

「サキ、話したいことも聞きたいこともたくさんあるけど……今は帰ろう」
「あのー、リザちゃーん?任務忘れてませんよねー?マルシェザールの暗殺と異世界人達の確保を忘れてませんよねー?」
「あ、それなら……」
そう言ってサキは腹を押さえてうずくまっている兵士たちに近づいていき……思いっきり蹴っ飛ばした。

「おぐぇ!」
「ククク……よくもまあ散々甚振ってくれたわねぇ……」
「ひ、ひぃ!」
「マルシェザールはどこにいる……?答えないと、アンタには私と同じ……いえ、それ以上の目に遭ってもらうわよ……クククク……」

嫌がらせはバレてたっぽいし、ぶっちゃけこれ以上リザとアイナの前で猫被っても意味なさそうなので、素で兵士に尋問する。

「なんて裏表の激しい……なんか少女漫画に出てきそうなキャラですわね」
「……」

「しょ、所長は今いない!諦めて帰ることだ!」

ブッブー!

嘘発見器が音を出す。

「あ、やべ」
「拷問道具のせいで却って自分の首を締めるとは……因果応報とはこのことね!オーッホッホッホ!!」

「応報だけにオーッホッホッホ」
「アイナ、ちょっと黙ってて」

「さぁ、次答えなかったら……どうなるか分かってんでしょうねぇ?」
「しょ、所長は実験室でDTT実験中だ!だが、実験の最終段階ではここの隣の拷問室にくる!ただし選りすぐりの護衛つきでな!はっきり言ってお前らに勝ち目はない!」
「ふん……それだけ聞けば十分、よ!」
「おっぐは!」
鋭いローキックでうずくまっている兵士の頭部を蹴りぬき、意識を刈り取った。

「選りすぐりの護衛……ステルス、テレポート、変装の3人相手に、そんなもの意味ないっての」
「……早く終わらせよう」
「色々言いたいことはありますけど、戦力が増えた状態で本来の任務に当たれるからよかったということにしときますわ!」

  • 最終更新:2018-01-28 10:48:05

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