15.05.彩芽とアリサ2

279: 名無しさん :2017/04/16(日) 22:36:38 ID:???
アトラとシアナの丸太ぜめ集中攻撃の前に、唯が絶体絶命の危機に陥っていた頃。

彩芽の手によって体調を回復したアリサは、ジャイアントサンドワームに逆襲の刃を叩き込んでいた。
「トラークヴァイテ・ギガンティッシュ・シュトラール!!」
「グオォォオオォッ!!」

「なんと…!!まさか、たった二人でジャイアントワームを倒してしまうとは!!」
「さすがディスティンクティブヒューマン…略してDTT!」

「なんか、改めて聞くとヒワイな響きだな」
「え?どこがですの?」
「…ああもう、亜理紗はちょっと黙ってて……おいおっさん達!実験だか何だか知らないけどいい加減にしろよ!?
だいたい『運命を変える力』か何か知らないけど、運が良い悪いで言ったらこんな所に捕まって…
いや、こんな世界に放り込まれてる時点で、最悪じゃないか!」
「そうですわ!…わたくしだって、元の世界でも、この世界でも……
もし『運命』なんて物があるなら。変える事が出来ていたなら、どんなに良かったか!」

…抗議の声を上げる彩芽とアリサ。
だが科学者たちはそんな二人を無視して、先ほどの戦い…いや「実験」の結果を検証していた。

「計測器の様子は?」
「…DTT反応は見られません」
「ふむ。考えられるのは…あの二人が単に強いだけの一般人だったか、
あるいは…DTTを発動するには、より過酷で凄惨な『運命』に直面する必要があるのか。
次はアレを使え……何。仮に被験体が死んだところで、我が国にも蘇生技術はある」

「……反応がありませんわね」
「こっちの話は聞く耳なしか…こうなったら、出入り口の電子ロックをスーパーハカーしてやる」
「え?…つまり扉を開けるって事ですの?…わたくしにはよくわかりませんけど、
そんな簡単に開くとは思えませんけど…あ!新手の魔物が出てきましたわ!」
「……5分で良い。時間を稼いでくれ。なんか強そうな魔物だけど……頼む。必ず扉を開いて見せる」
「…そこまで言うなら、彩芽を信じますわ。見るからに醜悪で、凶悪そうな魔物ですけど…」

「……さっきから魔物魔物って、ひっでえなー。こう見えても人間だぜ!…いや、正確には『元人間』か!
俺様は『ワルトゥ』ってんだ!よろしくなお嬢ちゃん達!がはははは!!」

そう言われてよくよく見ると、オーガ等の亜人型魔物と思われたその男は、単に大柄な人間だと分かった。
年齢は30代後半位だろうか。
だが、科学者たちはその男を見てにわかにざわつき始める。

「……おい!なんだあの汚らしい男は!ジト目貧乳少女型殺戮機械兵『エミリー』はどうした!!」
「…ああ。隣の部屋に置いてあったダッチワイフなら俺が2~3回使っただけでぶっ壊れちまったぜ!
耐久性に難あり、ってヤツだな!…それに俺様としちゃ、もう少しおっぱいがあった方が好みだ!がっはっはっは!」

「どうやら、あの科学者達の仲間じゃないみたいですけど…」
「そうだな……最低でも、そこの金髪ねーちゃん位には無いとな」
「……味方ってわけでもなさそうだな。気を付けろ、亜理紗…!」

…そう、これはアクシデントだった。
しかも、彩芽とアリサにとっては最悪と言ってもいい、過酷な『運命』。

彩芽達が疑問に思った通り、『運命を変える力』とは、必ずしも単純な幸運を呼び込む力ではない。
むしろその逆…力の持ち主には、普通の人間には耐えがたい、過酷な試練が次々と襲い掛かるのだ。
決して諦めず、ギリギリまで運命に抗い、ほんの僅かな勝機を見つけ出し…そして、待ち受ける死や絶望を『変える』のだ。
たとえその先に、更なる絶望が待ち受けていようとも…

281: 名無しさん :2017/04/17(月) 23:03:05 ID:???
「ほう、その剣……どうやらアングレーム家の者らしいな。しっかし、なんでこんな辺鄙な場所に?」
「……新聞は読んでいませんの?アングレーム家は、養子である私を除いて、既に……!」
「そうか……あそこの領主とは美味い酒が飲めたんだが……ま、150年も経てばそういうこともあるか」
「はい?」
「なんでもねぇよ。せっかくだ!養子とはいえ、アングレーム家の最後の生き残り……武者修行の相手に不足はねぇ!」
「……何やらよく分かりませんが、向かってくるなら容赦はしませんわよ!」
「へ!そうこなくっちゃ!」
アリサへ向かって一気に駆すワルトゥ。

「シュヴェーアトリヒト・エアースト!」
相手は見るからに脳金なパワータイプ。ならば、大きく跳躍してスピードで翻弄すれば………
「おっと!こないだ空中戦で痛い目見てから鍛え直したばっかの俺に、その空中戦を挑むとはな!」
「え?ぐうぅうううう!!?」
ワルトゥは巨体に似合わぬ俊敏さでリコルヌを躱すと、すれ違いざまにアリサの右ふくらはぎを掴み、地面へと強く叩きつける。

「どうよ!これが新技、飛鳥落勢衝(あすからくせいしょう)だ!」
「ぐぅ………飛ぶ鳥を落とす勢い……なるほど随分安直なネーミングですわね!」
「ほぉ、一発当てただけじゃまだまだ闘志は衰えねぇか……こいつぁ楽しめそうだ」


(おいおい、なんかヤバい雰囲気じゃないか?とにかく、急いでドアロックを解除しないと……!)


「あの男、強い!この際だ!このまま計測を続行する!エミリーは誰か片付けとけ!」


「オラオラ!絶対必中、砂塵隆舞(さじんりゅうまい)!」
「ご、あ、ぐぅ……!ただの左ジャブの連打じゃ……きゃあ!?ぶ、ぐああああああ!」
躱すのはほぼ不可能とされる左ジャブを顔面に連打し、相手の意識を顔面に集中させる。足元がお留守になった所を足払いで転ばせる。転んだ所を腹部を蹴り上げる。
流れるような一連の動作は、ワルトゥの卓越した技術を表していた。

(脳金パワータイプなんてとんでもない……!この男、技術もかなりのもの!ここは一旦後退しませんと……!)
蹴られた衝撃を利用して後転し、そのまま距離を取ろうとするアリサ。
「おっと!後ろに下がるより、前に走る方が速いんだぜ!当たり前っちゃ当たり前だけどな!」
「しま……!」
「うぉおおおりゃああああああ!!」

ワルトゥはアリサにラリアットをかましたと思うと、腕をアリサの顔面にくっつけたまま自らの身体を半回転させ、アリサを彩芽の方へ放り投げる!

「があぁああああああああああ!!」
「え、ちょ、うわあああああああ!!」

アリサは彩芽を巻き込んで壁へと叩きつけられる!

285: 名無しさん :2017/04/20(木) 18:19:01 ID:???

「さて……金髪の嬢ちゃん、もう終わりか?」
「ぐぅううううう……!彩芽、大丈夫ですか……?」
「あ、ああ、なんとかな……あのおっさん、そんなに強いのか?」
「ええ……こないだの黒ずくめ女子高生とは比べ物になりませんわ……」
「そうか……すまない亜理紗、もう少しだけ時間を稼いでくれ。必ずこの扉を開けてみせる!」
「ええ……頼りにしてますわよ、彩芽!」

再び立ち上がるアリサと彩芽。彼女たちの瞳には、まだまだ強い意志が宿っていた。

「さぁ、第二ラウンドといきますわよ!」
「へへへ……『ぐう』とか『がぁ』とかじゃなくて、もっと色っぽい悲鳴で喘がせてやるぜ!」

289: 名無しさん :2017/04/22(土) 14:16:46 ID:dauGKRa6
「おりゃああああっ!!」
「やああああああっ!!」
唯と瑠奈がアトラたちと退けた頃、アルガス研究所の実験室ではアリサとワルトゥが火花を散らしていた。
「エアースト!」
「ふんっ!」
リコルヌの斬り払いを巨体に似合わない軽やかなステップで躱すワルトゥ。そこから放たれたカウンターパンチをアリサは身を低くして回避した。
「ツヴァィト!」
「はっ!」
低い体勢から放たれたリコルヌの突きを跳躍して回避し、ワルトゥは上空からアリサの脳天めがけてパンチを放つ!
「飛天岩落!」
「ドリット!!!」
上空からのワルトゥの強烈なパンチを、アリサは魔力を帯びたリコルヌの振り上げで弾き飛ばし、ワルトゥは空中で吹き飛ばされた!

ドガンッ!!
「ぐおあっ……!」
アリサに弾き飛ばされたワルトゥは実験場の壁に叩きつけられ、小さく呻いた。
「その体にしてはなかなかいい踊り方でしたけれど、今の勝負はわたくしの勝ちですわ。」
「へへ……さっきのお返しってわけかい。なかなかやるじゃねえか金髪ねーちゃんよぉ……!」
よろよろと立ち上がるワルトゥ。その表情にはまだ余裕が見て取れる。敵はまだ全力を出していないことをアリサは確認した。
「そろそろ本気を出してはいかがですの?わたくしも全力でお相手いたしますわ。」
「へっ……可愛いねーちゃんにそんな風に誘われちゃあ、断る理由はねえな……!」
ワルトゥがそう言った瞬間、アリサは目を疑った。
「なっ……!」
「フフフ……安心しなねーちゃん。俺が2人に見えるのは悪い夢じゃねえよ……いや、だからこその絶望か……ガハハハ!」

ワルトゥの特殊能力の分身は、魔力によって2人か3人まで作り出せる。
作り出すのは一瞬のため、少しでも目を離すと本体と分身の区別はつかない。
分身への攻撃は本体には無効。リザが脳天にナイフを刺したのも分身だった。
分身にも攻撃をすれば消えるが、ワルトゥのような格闘の達人が2人も3人も相手では、単純な肉弾戦で倒すことは難しいだろう……

290: 名無しさん :2017/04/22(土) 14:37:03 ID:dauGKRa6
「「いくぞおおおおおっ!!」」
「くっ……!」
分身した大男2人を相手に剣を構え直す。でもこの時点で……自分が勝てるビジョンは思い浮かばなかった。
「あああっ!」
当たり前のことだけれど、片方の攻撃を防げば、もう片方に隙だらけの後方から攻撃される。
「ぐっ、あっ、やあぁっ!」
そのまま体勢を崩されてリコルヌを持つ手を叩かれ、唯一の武器は遠くへ吹き飛ばされてしまった。
「これでもう抵抗はできねえな。金髪ねーちょんよぉ……!」
「あんっ!!!」
大男の1人がわたくしの体を抱き寄せ、もう1人は弾き飛ばされたリコルヌを回収しに行った。
「ベアハッグって技は女にやるに限るぜ。むさ苦しい男を抱きしめるなんざ、こっちのメンタルの方がやられちまうからなぁ……」
「べ、ベアハッグ……?」
「知らねえのか?ならそのちっちゃな体に教えてやるよ。ベアハッグてのは……こういうことだッ!」
大男が叫んだ瞬間、体全身に痛みが走る。自分の体を締め付けている男の丸太のような腕が、プレス機のような重圧をかけてきている。
「ぐううっ!?んやあああああああああああっ!!!」
「あ、亜理紗っ!?大丈夫か!?」
「そうそう、そういう声が聞きたかったんだよ……!おらっ!」
「んぐがあぁっ…!う゛ああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛゛あ゛あ゛ッッ!」
扉を開けようとしてくれている彩芽が、慌てて振り返ってこっちを確認したけれど、あまりの痛みにみっともなく泣きながら叫ぶことしかできない。
そんな自分の姿を見ている男のニヤついた顔が、とても恐ろしい悪魔に見えた。

293: 名無しさん :2017/04/22(土) 23:45:50 ID:???
「あ、亜理紗ぁああ!!このおっさん!亜理紗を離せ!」
親友のピンチに、思わず扉を開けることも忘れて飛び出す彩芽。

「おっと!こっちも忘れてもらっちゃ困るぜ!」
「え?2人……ぐぁああああ!!?」
だが、リコルヌを拾いに行っていたワルトゥの分身が彩芽に立ちはだかり、ネックハンキング・ツリーをする。
「お、ご……うぐ……」
「おーおー、頑張って抵抗しないと首絞まっちまうせ?グハハ!」
実際に首を絞められているわけではないが、ワルトゥの親指が首に食い込んでとても苦しい。


「あ、や、め……あぁああああああ!?いやあぁああああああ?あ?あ?あ?!!」
「オラオラ!眼鏡のちんちくりん嬢ちゃんの心配してる暇があんのか?」
彩芽を助けたいアリサだが、ベアハッグされている現状では不可能だ。


「あ……う……カハッ、カハッ!」
(く、くる……し……ほ、ほんとに……窒息……す……る……)
「てーかこの首輪邪魔だな。外しちまうか」
「……!?や……め……」
ワルトゥの分身が彩芽の首輪を掴んで、無理矢理外そうとした瞬間!

バチバチバチィッ!!

「ひ、ぎっ……!!!?」
高圧電流が彩芽の身体を駆け巡る。
そう、皆さんお忘れかもしれないが、教授の付けた彩芽の首輪は無理に外そうとすると高圧電流が流れるのだ。

「あ、ヤベ」
そして、首輪に触れて無理に外そうとしたワルトゥの分身にも、高圧電流は駆け巡る!
ボウン!という子気味よい音と共に、ワルトゥの分身は消えた。ネックハンキング・ツリーで持ち上げられていた彩芽の身体は、地面へと落ちる。

「あーあ、分身の耐久性低いのがこの能力の難点なんだよなぁ。ま、どうせあの眼鏡に何ができるわけでもねぇし、俺はこっちの金髪嬢ちゃんと楽しませてもらうぜ!」
「ひぐううぅう!?あ、あああああああああああ!!」

(ふ、不幸中の幸いだな……首輪の電圧のおかげで、おっさんの分身が消えた……でも、ダメージのせいで身体がろくに動かない……何か、何かアヤメカで亜理紗を助けないと……)
今まで聞いたこともない亜理紗の凄まじい悲鳴に心痛めながらも、必死に這ってアヤメカの入っている鞄を目指す彩芽だが……あと一歩というところで、鞄は何者かにひょい、と持ち上げられてしまう。

(ち、ちくしょう……あと、少しずつだったのに………あれ、待てよ?おっさんの分身は消えたのに、一体誰が鞄を……)

彩芽が顔を上げて鞄を持ち上げた人物を確かめようとすると、そこには……

「彩芽!アリサ!助けに来たぞ!」
「彩芽おねえちゃん!大丈夫?」
「そこの大男!その女性を離しなさい!」

そこにいたのはスバル、桜子、そしてサラであった。

「み、みんな……なん……で」
「話は後だ!今はあの男をなんとかするぞ!」

彼女らが幽閉されていた部屋の唯一の脱出経路と思しき通気口は外から鍵がかかっていた。そこで、桜子が新体操の応用で手を前で組んでサラを持ち上げ、サラが通気口を鍵ごと壊し、そこから脱出したスバルが外から部屋の鍵を開けて三人で脱出したのである。

しかし、彩芽と亜理紗がいる場所までたどり着いたのは全くの偶然であるし、ついでに言えば、扉が彩芽のハッキングでバグを起こしていた所に首輪の電圧を間近で流したことでエラーを起こして開いたのも偶然である。


「す、すごい、すごいぞ!とてつもないDTT反応だ!」
「アリサ、彩芽両名が死を覚悟する程の危機に直面し、それでもギリギリの所で諦めずに抵抗した結果……奇跡としか言いようがないことが起こった!」
「決まりだな……実験終了!あの異世界人達をSランクの実験サンプルとする!」
決め顔で実験の終了を告げるマルシェザール所長だが……

「でも所長、あの変なおっさんどうします?」
「あ……い、いや、忘れていたわけではない!せっかくだから、このまま彼らの戦いぶりを見学しようではないか!いざという時は、伝家の宝刀催眠ガスがあるしな!」
「了解」
(この人優秀だけど、実験中はすっごく視野が狭まるんだよなぁ)

  • 最終更新:2018-02-18 17:06:10

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