15.01.唯と瑠奈1

256: 名無しさん :2017/04/09(日) 14:59:42 ID:???
時は僅かに巻き戻り唯と瑠奈がルミナスを旅立つ前夜。最後の夜ということで、フウコ、カリン、唯、瑠奈は女子会兼パジャマパーティー的なことをすることにした。

「というわけで、今日はとことん騒ぐわよ!フウコ!唯!瑠奈!」
「これで2人ともお別れかぁ……寂しくなるね」
「大丈夫、また会うこともあるよ。結局一回も勝てなかったライカさんにもリベンジしなきゃいけないし!」
「わ、私はもうライカさんとは戦いたくないよ瑠奈ぁ……」
最初の頃は互いに敬語で話していた2組の2人組だが、元々同年代であったこと、新人同士であることも相まって今ではすっかり砕けた口調で話すようになった。

「アルガスかぁ……一体どんなところなんだろう」
「私らはまだ数える程しかルミナスから出たことないからなぁ……」
「大丈夫!私と唯の格闘コンビなら、何があっても簡単にはやられないわ!」
「私は格闘もいいけど、フウコとカリンみたいな合体魔法も使ってみたかったなぁ」
唯と瑠奈が覚えたのはライカ仕込みの体術なので、もろ魔法少女なビームとか属性攻撃みたいなのは使えないのだ。

「合体魔法は使用者同士の息があってないと使えないけど、使えさえすればかなり強力よ!魔力の上乗せ、属性の相乗……良いこと尽くめよ」
「……複数の属性を扱えるのと、複数の属性を合体させるのは、似ているようで全然違うからね」
「うーん、ライカさんの体術の修行ばっかり受けてたから、その辺よく分からないのよね……」
「よし、せっかくだからレクチャーしてあげよう……フウコ、お願い」
「え、私?」
「こういうのは眼鏡かけてる奴がやるって相場が決まってるでしょ!」
「もう、しょうがないなぁ……」
などと言いつつ部屋からホワイトボードと教鞭を引っ張りだすフウコ。
(ノリノリじゃない)(ノリノリね)(ノリノリだなぁ)

「魔法には色々な属性があります。火、水、土、風、雷、氷、光、闇……変わったところでは花や鋼属性もありますね。
基本的に、ある程度の魔力がある人が修行さえすれば、どの属性も覚えることは可能ですが……向き不向きはどうしてあります。なので、自分の得意な属性を極めるのが一般的です。とはいえ、全ての属性を極めるような天才も稀にいますが……。
とにかく、属性は多種多様です。そんな属性を掛け合わせるのが合体魔法なわけです。私とカリンちゃんのように、風と火なら熱風……といった感じですね」
「はい先生!1人で合体魔法を使うことは可能ですか!メド○ーアみたいに!」
「メ○ローアが何かは分かりませんが、良い質問です月瀬さん」
わざわざ苗字呼びにさん付けという、役になりきったフウコはビシ!とホワイトボードを教鞭で叩く。

「武器に複数の属性の強化魔法をかけるといった裏技を除けば、1人で合体魔法を使うのは基本的には不可能です。アイヴォリー家のミントさんやココアさんが得意とするのが前述の裏技ですね。
……約1名、風属性を『ある属性』と合わせて使うことができる人もいましたが」
「え?」
「フ、フウコ……」
「……なんでもありません。とにかく、合体魔法は複数の属性を掛け合わせる強力な技です。しかし、体術重視で合体魔法を使えないからといって悲観する必要はありません。
私は専門外なので詳しくないですが、ライカさん曰く体術使い同士はタッグで戦うことで両者をフォローし合う……謂わば常時合体魔法のような状態、とのことです」
「それなら一層私たちは敵なしね!唯と2人なら、あの王にだって負ける気がしないわ!」
「わ、私はもう危険な橋は渡りたくないよぉ……」
などとワイワイ騒いでいた4人だが、明日は早いのでそろそろお開きすることにした。

253: 名無しさん :2017/04/09(日) 10:00:33 ID:???
ルミナス城、謁見の間。
集まっているのは唯、瑠奈、リムリット、ウィチル、ヒカリ、ライカの6人。
修行を一区切り終え、新たな体術を身につけた唯と瑠奈はアルガスに向かう前の最後の挨拶をしていた。
「ルミナスの皆さん、今日までお世話になりました。このご恩は忘れません!」
「2人とも、本当に行くのか?ずっとルミナスにいてもいいんじゃぞ?フウコとカリンも寂しがっておる。唯と瑠奈なら、わらわは大歓迎じゃ。」
「あ、ありがとうございます……でも、私たちにはのんびりしてる時間はないんです。一刻も早く元の世界に帰りたいので……」
「むぅ……すまんな。ウェイゲートが閉じているばかりに、2人をあの世界に帰すことができなくて……」

ウェイゲートとは、この世界と現実世界を繋ぐゲートのことである。世界各地に点在し、ここルミナスの城でもしばらく前までは稼働していた。
悪しきものがウェイゲートを使い魔物を現実世界に送り込むことがあるため、その都度魔法少女たちが現実世界で魔物退治をするためだ。
だがある日、突如世界中のウェイゲートが稼働を停止し、それ以来2つの世界の行き来は不可能となってしまったのだ。

「ウィチル。どうしてウェイゲートは閉じてしまったのじゃ?」
「それは……現時点では何もわかっておりません。」
「うーん。王様は普通に行き来したり、唯ちゃんたちみたいな女の子を拉致ってたりしてたから、その辺の事もなにか知ってると思うなぁ。」
ヒカリが十輝星だったころ、王は現実世界の電子機器から拉致をしていた。
ウェイゲートを使わずとも、2つの世界を行き来することは可能なのかもしれない。

「で、ライカよ。2人の修行は終わったのか?」
「いいえ。唯には基本の型を教え込んだのみ。瑠奈には応用も教えてありますが、まだ完全に終わったわけではありません。」
「むぅ。やはり修行がしっかり終わるまではここにいた方がよいのではないか?」
「いえ。そろそろ実戦経験が必要になってくる頃です。私があれこれ言うよりも、2人にはこれから実践を通して自分なりに成長をした方がいいでしょう。」

「失礼致します。お二人の箒の準備が整いました。」

こうして、唯と瑠奈は魔法少女たちに別れを告げてルミナスを旅立った。
「やっぱり、元の世界に変える方法はあの王様が知ってるみたいだね……」
「そうね。でも異世界人が集まるアルガスでも他に帰る方法が見つかるかもしれない。あまり悲観せず、楽観的に行きましょ。唯。」
「うん……でも結局、最後までライカさんに褒められることはなかったなあ……」
「私は、唯は褒められて伸びるタイプじゃないと思うけどなぁ。ほんわかしてるくせに結構根性あるし。」
「そ、そうかな。ちゃんと強くなれてるかな……」
「ま、アルガスで何かあったら暴れてやりましょ。今の私達ならちょっとやそっとじゃ負けないわ!」

257: 名無しさん :2017/04/09(日) 17:17:57 ID:???
ルミナス王国を出発し、アルガスへと向かう唯と瑠奈は、
トーメント王国の南に広がる「アレイ草原」の上空へと差し掛かっていた。

「魔法はあんまり覚えられなかったけど、箒は上手く乗れるようになったね!…これ、元の世界にも持って帰れないかなぁ?」
「確かに便利そうだけど…目立つわよ、これ。制服のまま乗ったら下から丸見えになるし…大人しく朝寝坊を直しなさい」
…楽に通学しようという唯の魂胆も、瑠奈にはお見通しだったようだ。
この世界に来てからたびたび過酷な運命に晒され、厳しい修行を経ても、
唯の性格は相変わらずだ、と瑠奈は心の中で安堵のため息をつく。

…だがそんな二人を、密かに見つめる者たちが居た。
「アレイ草原」から「ゼルタ山地」辺りを根城とする盗賊…その名も「牙突き立てられし闘犬の団」。
「お頭!空から箒に乗った女の子×2が!」
「あのぱんつは…ルミナスの魔法少女と思われます!」

「クックック。久々の獲物だな…だが、いいかお前ら!見た目に惑わされるんじゃねえぞ!
この間は、白い服の金髪女一人に、50人からの部下をぶちのめされた!
その前は、4人組の女を捕まえたと思ったらあっという間に脱走されてアジトを滅茶苦茶にされた上に
『桜子さん免許持ってて助かったわー』とか言いながら車と食料を奪われた!」
「今回は慎重に行け!…そして、どんな卑劣な手を使ってでもそいつらを捕まえて、
『牙犬団』の恐ろしさを徹底的に教え込んでやるんだ!!」
「「「おおー!!」」」

…ルミナス王国随一の格闘魔法少女に鍛え上げられた今の二人の実力なら、並の盗賊などは物の数ではない。
だが、その指導を施したライカ本人が別れ際に言っていたように、今の二人にはまだ『実戦経験』が不足していた。

「あ…あれ?…何これ、箒が引っ掛かって…」
「よーし!網に掛かったぞ!!」「矢を放てー!!」

霞網で飛行を妨げられた二人を取り囲むように、岩陰から何人もの盗賊たちが現れて、一斉に矢が放たれる。
修行を積んだ二人は、飛んでくる矢を叩き落すことも容易だが…網で動きを拘束された状態では、それにも限度があった。

「な…何なのよあいつら、いつの間に…!?」
「……瑠奈、あぶないっ!」
しかもその矢には…掠っただけでも全身を麻痺させる、強力な痺れ毒が塗られていた。
毒矢で一斉に射かけられた二人は、網で地面に引きずり降ろされてしまう。

「いったー……ゆ、唯、大丈夫…唯っ!?」
「だ……大丈夫…ちょっと、掠った、だけ…って、あ。」
瑠奈に心配を掛けまいと、唯は気丈に痛みを堪えるが…その右脚には毒矢が深々と突き刺さっていた。

「一人は矢が右足に命中。もう一人も右腕に掠ったので、間もなく毒が効いてくると思われます」
「クックック…よくやったぞお前ら。だが、まだ油断は禁物だ!取り囲んで、じわじわ追い詰めるんだ…」

…稽古とは別物、唯も闘技場でルール無用の試合を経験してはいたが、それとも全く違う。
大人数での不意打ち闇討ち、毒も人質も何でもあり…それが、非道な輩との『実戦』。
その厳しさ、恐ろしさを…唯と瑠奈は、出発早々に思い知らされることとなる。

「あんた達、よくも唯を…絶対に、許さないっ!!」

258: 名無しさん :2017/04/09(日) 17:26:46 ID:???
「いくぞオラー!」「ろりきょにゅうー!!」
「アンタたちなんかに…やられるもんですかっ!!」
次々と武器を手に襲い掛かって来る盗賊たちを、瑠奈は次々と蹴り倒していく。

…だが、倒した人数が15人を超えた辺りから、その動きは目に見えて精彩を欠き始めた。

「はぁっ……はぁっ……」(…なに、これ…身体に力が、入らない……それに、右腕が動かない…!?)

同じように全力で蹴りを入れたつもりなのに、最初は軽々と蹴り飛ばせていた敵が、
二発・三発と攻撃してもなかなか倒れない。
掠りもしなかった敵の剣が、服やスカートの裾を少しずつ切り裂いていき、
ついには服の胸元が大きく切り裂かれて…下着と、それに包まれた大きな胸が、盗賊たちの視線に晒されてしまう。

「ヒッヒッヒ……どうやら、矢の毒が効いて来たみたいだな……?」
「真っ先に向かってった奴はバカだよなぁ…こういうのは、俺らみたく20~30人目くらいが丁度いいんだよな」
「いやいや、先に戦って倒せば、倒した奴が好きにできるルールだからな。
ああいうギャンブラーな連中がいるから、俺たちは美味しい役にありつけるワケだよ…ケケケ」
「グヒ…とにかくこうなりゃ、こっちのもんだ。最近不足がちだったおっぱい成分、たっぷり堪能させてもらうぜ!!」

「ふざ、けないで…私は…負けない……唯を、守るんだから…」
…なおも、雲霞のごとく襲い掛かる盗賊たち。
瑠奈は必死に応戦し、そこから更に6~7人を倒したが…それが限界だった。
体力はみるみる削られ、視界は霞んで、足元もふらつき始める。そして乾坤一擲、必殺の気合と共に放った蹴りは…
体格差からすれば、本来それが当然なのかも知れないが…片手で難なく受け止められてしまった。

「クックック……やっと捕まえた、ぜっ!!」
「そんなっ……っが、ああぁっ!!」
盗賊は瑠奈の蹴り足を掴むと、瑠奈を身体ごと振り回し…豪快に地面に叩きつけた。
二度、三度と叩き付けられるたびに、背中と後頭部に衝撃が走り、瑠奈は思わず意識を手放しかけたが…
同じく窮地に陥っている唯の事を思い、ギリギリの所で踏み止まる。

「へへへ…ここまで痛めつけりゃもう抵抗できないだろ。
 早速俺様の特大アメリカンドッグを、そのロリ巨乳でアツアツのホットドッグに…」
「わけ、わかんない事…言ってんじゃないわよっ!!」
目の前に突き出されたポークビッツを、瑠奈は反射的に左脚で蹴りつけた。
悶絶する盗賊を押しのけ、立ち上がる…だが地面に叩きつけられた弾みで捻ったのか、右足首がズキリと痛んだ。

敵はまだ大勢残っている。毒は瑠奈の全身に回り、立っている事さえままならない。
服や下着は多くの敵に斬られたり剥ぎ取られたりで、今や大半がその用を為していなかった。
(まだ、まだ……あの地獄の特訓に比べれば、この位…)
それでも闘志を奮い起こし、構えを取りなおした瑠奈の前に…盗賊たちの頭領が、姿を現す。

「…クックック。お前ら、遊びはその位にしておけ…おい、お嬢ちゃん。お友達の命が惜しかったら大人しくするんだ」
「瑠奈…お願い、あなただけでも逃げてっ…!!」
「そ、そんな……唯……!!」

260: 名無しさん :2017/04/09(日) 19:08:01 ID:???
…瑠奈が戦っている間に、唯は自分の傷口に応急処置を施していた。

「…『ちちんぷいぷい いたいのいたいのとんでけ』!」
魔法の才能は一般人並と評された唯だが、修行の合間にココアから魔法を教わり、
呪文を詠唱すれば初歩の治癒魔法くらいは使えるようになったのである。

なんとか止血し、立って歩ける程度には回復したが、脚に不自然なしびれが残っていた。
…唯の治癒魔法では、怪我は治せても解毒まではできない。
瑠奈も、先ほどこれと同じ矢でかすり傷を負っていた事を思い出し…
「この矢、もしかして毒が塗ってあったの…!?…瑠奈っ…気を付けて!」

唯の不安は的中し、瑠奈の動きは目に見えて悪くなっていった。
しかも、明らかに右腕をかばうような動き方…おそらく、矢の毒のせいでほとんど動かせないのだろう。

だが、助けに入ろうとする唯の前には、新手の盗賊たちが立ちふさがった。
その中心にいるのは、他の者たちとは明らかに格が違う……恐らくは彼らの首領。

「ククク…いいかお前ら。…まずは弱ってる方を捕獲だ。こいつを人質にすりゃ、残ってる方も大人しくなる」
(わ、私を人質に!?…そんなの…瑠奈の足手まといになんて、絶対に嫌!
 私だって、ライカさんの特訓を耐え抜いたんだもの…絶対、切り抜けてみせる!!)

相手の実力は、ライカより…いや、闘技場で以前戦った敵よりも遥かに格下だろう。
しかし今の唯は、毒で右脚が動かない。それどころか下半身に殆ど力が入らない。
だが、それでも…諦めてしまったら、そこですべてが終わってしまうのだ。

(気を抜いたら、やられる…)
首領の武器を警戒し、カウンターを狙う唯。しかしここで、実戦経験の無さが露呈してしまった。

「……ヒヒッ!背後がお留守だぜぇ!!」
「…きゃあっ!?」
目の前の敵に集中するあまり、別の敵に背後から奇襲を受けてしまったのだ。

…反射的に掌底を叩き込むが、上半身だけの打撃では大した威力は望めない。
更に別の盗賊が、左右から襲い掛かり…
「ケケケ!足元もお留守だぜ!!」「ついでにぱんつとおっぱいもな!」
「きゃああ!!やっ…放し、てっ……あぁんっ……!!」

唯はたちまち捕獲され、手足と首に枷を嵌められてしまった。
そして、瑠奈も……

………

「さっすがお頭!!実力は大したことないのに、妙に自信満々なオーラで相手の注意を奪うなんて…ただのザコとは一味違うぜ!」
「俺、お頭に一生ついてくよ!下手したら俺より弱いかもしれないけど!!」
「ガーッハッハッハ!…油断さえしなけりゃこんなもんよ!…よし!アジトに運び込むぞ!慎重にな!」

「うぅ……瑠奈、ごめんなさい…私の、せいで……」
「そんな…唯こそ、私のせいで、大怪我したのに……」
(…そのせいで、頭に血が上って…唯を守るどころか、こんな事に…)
(私達、あんなに必死に修行したのに…何の意味もなかったって言うの…!?)

旅立って早々、名もなき盗賊を相手に完全敗北を喫した唯と瑠奈。
その精神的ショックは計り知れない程に大きかった。
だがこれは『運命を変える運命』を持つ者に与えられる数々の試練の、ほんの始まりにしか過ぎないのである。

262: 名無しさん :2017/04/10(月) 23:12:52 ID:???
一方こちらは盗賊団のアジト。
雨風をしのぐ家屋や食料貯蔵庫。僅かだが家畜もおり、人が暮らしていくのに最低限の設備は整っているちょっとした隠れ里であった。

「いやぁ!離してぇ!」
「うるせぇ!ちょっと黙ってろ!」
「きゃあ!」
そこでは少女の悲鳴がこだましていた。

「唯!?唯に乱暴するな!」
「だったら大人しく着いてこいっつーの!」
「ガハ!?」
「る、瑠奈ぁ!」
「大人しくしてれば殴られずにすんだのになぁ!?ほら、小屋に放り込んでやるからとっとと歩け!」
盗賊に囚われた唯と瑠奈は、手足と首に枷をはめられてしまい、抵抗むなしく盗賊のアジトまで連れてこられてしまったのだ。

「へっへっへ……お頭、こんないい女、まさか独り占めしやしませんよね……俺にもちょっと味見させてくださいよ」
「馬鹿!お前そうやってこないだ捕まえた女逃がしたじゃねぇか!」
「そんな~、ちょっと足枷外しただけでパツキン巨胸姉ちゃんが蹴り倒してくるなんて思わないじゃないっすか!変な機械使ってくる貧乳メガネまでいたし……」
「うるせぇ!とにかく、トーメント王国辺りに高値で売っぱらうまで我慢だ!女はその時入った金で買えばいいだろ!」
そうこうしているうちに2人は小さな小屋に連れ込まれ、乱雑に小屋の中へと放り投げられてしまう。

「うっ!」「あん!」
「牙突き立てられし闘犬の団……お前らを捕まえた盗賊団の名前だ、覚えておけ」
無駄にカッコつけた頭領の台詞と共に小屋の扉が閉められ、ガチャンと鍵をかける音がする。

「うう……どうしよう瑠奈……」
「落ち着いて唯、私にいい考えがあるわ」
「ほ、ほんと!?やっぱり瑠奈は頭いいなぁ!」
「ええ、まずは……ってぎゃああああああああああ!!?いやぁああああああ!!」
「る、瑠奈!?どうしたの!?」
絶体絶命のピンチながら、瑠奈がいればなんとかなる……そう思っていた唯だが、突如悲鳴をあげる瑠奈を見て困惑する。

「あ、鼠だ……」
「いやぁああああああ!!鼠ぃいいいい!!無理無理無理無理無理無理ぃいいいい!!……うっ」
「る、瑠奈?嘘でしょ?いくら虫が苦手だからってこんな時に気絶しないでよぉ……ドラ○もんじゃないんだから……」
盗賊のアジト、それも普段使わないような隔離小屋が清潔であるはずがない。小屋の中は虫が多かった。
完璧美少女である瑠奈の唯一の弱点が虫である。手足に枷をはめられた状態では逃げることも叶わず、思わず気絶してしまう。

「ど、どうしよう……私がなんとかしないと、このままじゃ2人とも……!」

269: 名無しさん :2017/04/14(金) 00:19:58 ID:???
彩芽が亜里沙に(自主規制)しているころ、牙突き立てられし闘犬の盗賊団のアジトでは……
「う……うぅん……」
「る、瑠奈!!!」
「きゃあっ!ゆ、唯!?どうしてそんなに顔を近づけてくるのよ!?」
瑠奈の意識が戻るやいなや、枷をつけられたままの状態で転がって顔を近づける唯。
「だ、だって……また虫とか見たら瑠奈気絶しちゃうから……!」
「あ、あぁ……だからそんなに顔が近いのね。ちゃっと恥ずかしいけど……気遣ってくれてありがとう。唯。」

「さっき、盗賊の人の声が聞こえたの。明日になったら私たちをどこかに売るんだって……」
「売るって……どこに売られるのよ?」
「それはわからないけど……多分いいところではないと思う。それどころか、私たち離れ離れになるかもしれない……!」
瑠奈と離れることを想像したせいか、少しだけ泣きそうになる唯。
思うように修行の成果が出せず、出発して早々輩に捕まってしまったショックは、今盗賊につけられている枷よりも唯の心を締め付けていた。
「泣かないで、唯。大丈夫!私たち2人でいつも切り抜けてきたじゃない!なんとかなるよっ!」
そんな唯の心を慮る瑠奈は、努めて明るい口調で唯を励ました。

「私の思いついた脱出方法は2つ。1つはあの窓から脱出する方法。」
もともと牢獄用に作られた部屋ではないため、この部屋には小窓があった。
だが窓は鉄格子で塞がれており、そのままでは開けることは不可能だ。
「私たちを甘く見てるのよ。枷さえ外れれば、あんな鉄格子私と唯で窓ごと壊せるわ。」
「なるほど……!で、もう1つは?」
「もう1つはあんまりやりたくないけど……盗賊の誰かをここに呼んで、枷を外してもらうのよ。」
「ええ!?わたしたちを捕らえた人たちがそんなことしてくれるかなぁ?」
「まぁそのままでは無理だけど……ほら。私たちには女っていう武器があるじゃない。」
栗色のセミロングで悲鳴すらアニメ声の唯と、顔に似合わない特大バストを持つ青髪ショートカットの瑠奈。
この2人の美少女に誘惑されれば、どんな男もホイホイとついていってしまうだろう。不本意だが瑠奈はそれを確信していた。
「私たち2人で誘惑して鍵を持ってきたもらって、枷を外したところで気絶させるのよ。そしたらそのまま脱出するの。」
「なるほど……でも私、男の人を誘惑するの自信ないな……」
「まあ私には兄貴がいるから男子には慣れてるけど、唯は一人っ子だもんね……誘惑は最終手段にしましょ。」
「じゃあ、まずはこの枷をどうやって外すかだね……」
首と手足につけられたお互いの枷を、唯と瑠奈はしげしげと見つめた。

270: 名無しさん :2017/04/14(金) 22:57:47 ID:???
「瑠奈が気絶してる間、けんけん足で小屋の中を探索してる時に見つけたんだけど、これ使えないかな?」
そう言って唯が差し出したのは幾つかの針金。

「唯でかした!これで鍵を開けられるかもしれないわ!手がひとまとめにされてて少しやりづらそうだけど」
「ええ?自分で持ってきたクセに言うのもなんだけど、そんな刑事ドラマみたいなことできるの?」
「昔、空かなくなったおもちゃの宝石箱を兄貴に針金で開けてもらったことがあってね!それ以来覚えたのよ」
「へぇ……瑠奈のお兄ちゃんって多芸だよね」
「とにかく、まずは唯の手枷を外すわ!鍵穴がよく見えるように手の向き調整してくれる?」
針金で鍵穴をカチャカチャと弄ること数分。

「や、やった!外れた!ありがとう瑠奈!」
「へへん!私にかかればざっとこんなもんよ!」
その後も唯の枷を次々と外していった瑠奈だが、さぁ次は瑠奈の番というところで問題が起こる。

「……足はともかく、手は角度の問題で自分じゃ外せないし、首も鍵穴が見えないから外せないわね」
「うう、私も鍵開けできたらよかったんだけど……」
足枷以外を外せなかったのである。

「足の枷は外れたから、走る分には問題ないし……このまま行くしかないかしらね!」
「瑠奈!ちょっと待って!手さえ自由なら、私が残りの枷も壊せるかもしれない!」
「あ、その手があったか!それじゃあ頼むわよ、唯!」
「で、でも自信ないから、さっき外した私の手枷で一回練習させて……」
そう言って、既に外した手枷に手刀を叩き込む唯。すると、鉄の枷はすっぱりと両断された。
「やった!これならいける!」
そして、唯は瑠奈の手枷も手刀で破壊する。

「前の私じゃ、流石に鉄は壊せなかった……」
「そうよ唯!私たちの修行は、無駄じゃなかったのよ!」
「瑠奈……!」
あの地獄のスパルタ修行は、確実に自分たちの血肉となっている。それが実感できて、唯は嬉しかった。

「よーし!そうとなったら窓から脱出して、あの盗賊団に逆襲よ!」
「ええ?逃げようよ瑠奈ぁ……もしまた捕まったら」
「唯、ライカさんにも言われたでしょ?私たちには実戦経験が不足してるの。こういう時にちゃんとレベル上げしとかないと、後々詰むのよ!ファイアーエ○ブレムみたいに!」
「メド○ーアといいファイアーエ○ブレムといい、瑠奈って男の子っぽい趣味多いよね。やっぱり、男兄弟がいるとそうなのかな?」
「とにかく、いっせーのせで窓の鉄格子を破るわよ!」
「う、うん。戦うにしても逃げるにしても、とりあえずここから出ないとね」
「いくわよ!いっせーの……」

「「せ!」」

273: 名無しさん :2017/04/15(土) 19:23:42 ID:???
バギィンッ!
瑠奈と唯の魔力を込めた攻撃により鉄格子は破壊され、粉々に砕け散った。
「やった!これで脱出できるわね!」
「で、でも瑠奈ぁ……ほんとにあの人たちと戦うの?」
「モチのロンよ!毒も抜けた今ならあんな奴らに負けないもん!さあ張り切っていくわよ!唯ッ!」
瑠奈は飛び上がって窓を破壊し、そのまま外に出ていった。
(瑠奈は短気だからなぁ……レベル上げとか言ってたけど、ただ腹いせがしたいだけだよね……)

「おらおらおらおらーーー!全員出てきなさいよーーー!!!」
集まってきた盗賊たちを千切っては投げ、掴んでは殴り倒す瑠奈。
その姿は格闘家というよりも、ガラの悪いチンピラのような戦い方であった。
「お、おいどうなってんだ!?あいつらは捕らえたはずだろ!?」
「どうやったか知らねえが脱獄したんだよ!それでこの有様だ!お前も早く逃げねえとあのおっぱいにぶっ飛ばされるぞッ!」
「誰がおっぱいよッ!私には瑠奈っていうとっても可愛い名前があるんだからッ!」
「ひ、ひえええええええっ!!!」
瑠奈は逃げ惑う2人に啖呵を切りつつ、パンチとキックのコンボで2人を秒殺した。
「弱い、弱すぎるッ!もっと強いやつ出てきなさいよッ!!」
(瑠奈すごい……!私だって!)

(ゲヘヘヘ……前ばっかり見てる暴れん坊のおっぱいちゃんには、このナイフをブッ刺してから俺の腰の皮被り坊やをブッ挿してやるぜ……!)
暴れ回る瑠奈の背後から、狡猾な男がナイフを持って飛び出した!
「そのおっぱいもらったあああああっ!!!」
「四天連脚ッ!!」
「ひぶっ!おっ!あごっ!があっ!!」
背後から強烈な四連続の蹴りを食らい、狡猾な男はナイフを落として吹っ飛んでいった。
「唯やるぅ!ま、私も気づいてたからカウンターの準備万全だったけどね!」
「ぜ、絶対嘘だよっ!瑠奈前しか見てなかったもんっ!」
「アハハ!バレてた?正直あれ食らってたら危なかったわ。唯ありがとっ!」
「うんっ!瑠奈の後ろは私が守るよっ!」

「くそっ、逃げ惑う2人も狡猾な男もやられてしまった……!早くボスに報告だ!」
「何言ってんだ!ボスはとっくの昔にもう逃げてんだよ!俺たちもさっさとずらかるぞ!」
「ええええええーーー!?!?!?」

  • 最終更新:2018-01-21 23:24:40

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