14.07.カナン・サンセット

217: 名無しさん :2017/03/27(月) 02:40:30 ID:???
リザがライラに囚われ、危機に陥っていたその頃。
水鳥もまたカナンに洞窟の更に奥深くへと連れ去られ…

魔法少女アクアウィング EN: 1/1000 MP: 106/1500 BS:猛毒 出血 火傷 暗闇 沈黙 衰弱 恐怖 麻痺 幻覚 呪い 重力(強) 石化(腕) 凍結(脚) 死亡回数:23

「あうっ…ぐ……ひぐ……ごめんなさい…もう、逆らいません…ゆるして、ください…」
…延々と、いたぶられ続けていた。

「…ったく、情けないわねぇ…さっきお友達と居た時は少しだけ威勢が良かったのに…一人になったら、こんなもの?」
傍から見ると、イタいコスプレした29歳が若さに嫉妬して小学生を虐めている光景にしか見えないが、
カナンがここまで水鳥に対して激怒しているのには別の理由があった。

「これでも少しは手加減したつもりだけど…少しは理解できたかしら。
負けた魔法少女が抵抗する事さえ止めてしまったら、どんな目に遭わされるのか…」
ツインテールに結んでいた髪の片方は解け、腰まで届く長い髪には血と泥がこびりついている。
カナンは残るもう片方の髪房を掴むと、水鳥の上半身を無理やり引きずり起こした。

「ひっ……もう、いや…誰か…助けて…真凛さん…エミリアさん……お姉…ちゃん…」
「まだ、わかっていないようね。貴女は…魔法少女は…
助けを求めるのではなく、誰かを助けなければならない立場の人間なのよ」
…カナンは、水鳥の髪を掴んだまま、爆炎系の上級攻撃魔法を詠唱し…

「…敵に許しを請うこと。安易に味方に助けを求めること。そして何より、諦め…希望を捨てること。
…どれも、魔法少女には…絶対に許されないのよ」
(………ズドンッ!!)
「…う…ああぁぁあああっ!!!」
水鳥に、何度目かの(…十を超えた辺りで数えるのをやめた)止めを刺した。

市松水鳥 EN: 0/200 MP: 0/ 0 BS:-  死亡回数:24

…カナンは水鳥の死体を仰向けに蹴り転がすと、回復魔法を詠唱し始めた。
しばらくすると、水鳥の身体はピクリと動き、瞳には僅かながら意志の光が灯り始め…

「さあ…目を覚ましなさい。貴女の力はそんな物じゃないはずよ」

「…………げほっ……っが、はぅ…」
…大量の血の塊を吐き出しながら、水鳥は再び目を覚ました。
だが、既に水鳥は完全に戦意を喪失し、怯えきった眼でカナンを見上げたまま立ち上がれない。

(私も、この子も、魔法なんて…戦う力なんてなかった方が、幸せで居られたのかもしれない。
だけど、これ程までの…私を超えるかも知れない程の素質を持ちながら、
誰かの影に隠れて、ぬくぬくと守られたままでいるなんて…私には、どうしても許せない)
カナンはうっすらと目に涙を浮かべながら、遠い昔……自分が水鳥と同じくらいの歳だった頃の事を思い出していた。
…自分の力が足りなかったせいで死なせてしまった仲間や、守れなかった人々の顔が浮かんでは消えていく。

(…なんとなく、分かった気がするわ……なんで私がこんなに、この子にムカついてたのか)
(あの頃の私に、この子位の力があったら……理不尽なのは分かってる。この子には何の責任も関係もない事も。でも…)
『英雄』として語り継がれる伝説の魔法少女も…元を辿れば、ただの一人の人間でしかない。
時には嫉妬もするし、感情を抑えられない事もあるのだ……

218: 名無しさん :2017/03/27(月) 20:42:41 ID:lCNEjBfA
「どうしたの、立ちなさいよ。立って私に立ち向かって来なさいよ!」
「おぐぉ!!?」
足を振りかぶって、仰向けに倒れている水鳥の腹部を思いっきり踏みつける。
「あ、ぎ、ゃ……やめて……ください……」
「止めてほしかったら力ずくで止めて見せなさい……!」
「あ、ぐ、ああああ……!!」
踏みつけた足をグリグリと押し込んで挑発するも、水鳥はされるがままで一向に反抗してこない。

「はー、全く気概のないガキね、もうアンタはいいわ」
「う……ケホッ、ケホッ」
突然、踏みつけていた足をどけるカナン。助かったのかと安堵する水鳥だが、続く言葉に驚愕する。

「これならまだ、外にいる魔物になった魔法少女とやらの方が潰しがいがありそうね」
「な……!?」
「どうせなら、また土に還る前に楽しみたいからね。魔物なら心置きなく殺せるってもんよ」
「や……やめてください!真凛さんは、邪術師に改造されただけなんです……!邪術師を倒して、ルミナスで療養すれば、きっと元に……!」
「やれやれ、何を根拠に言っているのやら……もう一度だけ言うわ。止めたかったら力ずくで止めなさい」
「う、ううう……!」

酷な事を言っているのは自分でも分かっている。だが、これでもなお決起しないというなら、その才能を無為に浪費するというのなら、今度こそ生き返れないほど身体をバラバラにして殺すつもりだった。

「真凛さん……真凛さん……!」
水鳥が思い返すのは、真凛との修行の日々。優しく指導してくれた、もう一人の姉のような存在。
歌うのが好きだった彼女。危険なスパイ任務にも、アイドルになりに行くなんて夢のようだと笑っていた彼女。
王に囚われ、あの国の者たちに弄ばれ、邪術師に玩具にされ、今また、自然の摂理に抗った死者に殺されようとしている。なぜ彼女ばかりこんな酷い目に合わなければならないのか。運命は彼女を見捨てたというのか。

「真凛さんは……私が守る!」
誰も真凛を守らないなら、自分が守る。いや、真凛だけではない。光も、リムリットも、姉である鏡花も―――
「ルミナスのみんなを……守ってみせる!例え相手が誰であろうと……伝説の魔法少女であろうと!私はもう怯えない!もう迷わない!」
ここで初めて、水鳥の瞳に燃えるような闘志が宿る。

「アクア・ウィング!」
自らの異名の元でもある水の翼を発現させる。水の翼は水鳥の闘志に呼応するように、どんどん輝きを増していく。

「は……はははは!!そうよ、それを待ってたのよ!いいわ、最後の一騎討ちといきましょう!」
それに対し、笑いながらカナンも魔力を開放させる。暗い洞窟の中に、青い光とオレンジの光が鮮やかなコントラストを描く。それはまるで、青空が半分ほど夕陽に照らされた、黄昏時のようであった。

219: 名無しさん :2017/03/27(月) 22:37:46 ID:???
魔法少女アクアウィング EN: 400/1000 MP: 106/1500 BS:なし

「はぁああああああ!!」
(もう魔力は残り少ない……!短期決戦に賭けるしかない!)
水鳥の魔力が急速に高まっていき、水の翼が光を纏う。だが、それを黙って見過ごすカナンではない。
「大技を使うのはいいけど、溜めが長いということは相手に邪魔されやすいということでもあるのよ!スターライト!」
光の輝きが水鳥を襲う!
「時には……!逃げることも!」
「な!?」
水鳥は水の翼によって得た高い推力で、光属性の攻撃魔法を回避する。しかも、魔力を溜め続けながらだ。攻撃の準備と回避を同時にこなす器用さには流石のカナンも驚嘆する。

「でも、ロードアクセル!」
加速魔法によってカナンもまた高い機動力を得て、水鳥に肉薄する。
「この距離じゃ、大技は撃てないわね!アンタも巻き添えになるもの!」
「時には……!被弾覚悟で!」
「な!?アンタまさか」
「ファインブリンガー!」
水鳥の魔弓から、青い光の矢が放たれる。その矢はカナンに命中したが、その衝撃は水鳥にも及ぶ。
互いに吹き飛ばされる水鳥とカナン。

「くぅううう!」
(でも、日和ったわね!威力はあの溜めにしてはかなり低いわ!)
しかし、吹き飛ばされながらも決して相手から目を逸らさなかったカナンが見たものは、未だ色褪せない、水の翼であった。
「……!まさか、わざと少ない魔力で!?」
「接近された時のための技……!」
本来は多大な魔力によって放たれる大技をあえて少ない魔力で放ち、距離を取るためだけに使う。咄嗟の判断力がなければできないことだ。

「うあああああああああ!!」
吹き飛ばされた体勢のまま、翼をはためかせて無理矢理体勢の崩れたカナンに突進する。
体勢も身体の軸もブレブレの一撃だが、残る魔力を全て水の翼に注ぎ込み、推力の力押しによって、その体当たりは一筋の光となる。
体勢の崩れているカナンに、それを避ける手立てはなかった。



魔法少女アクアウィング EN: 200/1000 MP: 0/1500 BS:なし

「……やるじゃない」
カナンの身体は、水鳥の全力かつ捨て身のタックルによって崩壊し始めていた。
「カナン様……どうしてシャドウサーヴァントを使わなかったんですか!あれを使っていれば……」
「ふ……一騎討ちと言ったでしょ。それに、貴女が私の教えをどれだけ身につけているのかも確かめたかったのよ」
「カナン様……ひょっとして……」
水鳥が目を見開くが、それを無視してカナンは言葉を紡ぐ。

「私は……貴女に謝らなければならない」
「え?」
「貴女のような、才能ある子が……幼さを盾に誰かに守ってもらっているのが我慢できなかった。私が貴女くらいの時に、貴女程の才能があれば、大勢の人を守れたのに……って。おこがましい嫉妬よね。いい年して……」
「そんな……私なんて……!」
「じ……自信を持っていいの……全盛期には及ばないとはいえ……ほぼ……生前の力のまま生き返った私に……勝ったんだか……ら」
「カ、カナン様、身体が……!そ、それに、勝ってなんかいません!その気になれば今すぐにでも、魔力切れの私にトドメを刺せるはずです!」
「さ……最初に有効打を入れたんだから、貴女の勝ちでいいわよ……ず、随分……謙虚ね……」
「そんな……」

「貴女の名前……水鳥、だったかしら……?ふふ、水の鳥……貴女にぴったりね……」
「カナン様……」
「ねぇ水鳥……ルミナスを……みんなが幸せで、笑って過ごせるような……そんな、楽園(カナン)を……守……って……貴女は……守られるのではなく……守る側になる、責任……いえ、力がある……私が……ほ……しょう……」

その言葉を最期に、カナンの身体は崩れ、土に還った。

  • 最終更新:2018-01-27 02:26:22

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