14.05.英雄達

185: 名無しさん :2017/03/23(木) 18:27:50 ID:???
「ひとまずはこれでよし……と。」
有坂真凛は水鳥の魔術「リストリクション」によって立木に拘束された。
長い詠唱と触媒を必要とするが、対象者を魔力が使えない状態で長時間拘束できる便利な魔法である。
「ねえ水鳥ちゃん…アイドルの真凛ちゃんがどうしてこんな森にいるのかな?」
「い、市松と呼んでくださいっ……真凛さんがここにいるのも、全部トーメント王国のせいです!あの王様が真凛さんをこんなところに飛ばしたから、ライラとやらに操られたんですよ……!」
精一杯の強い口調で言いながら、水鳥はリザをキッと睨みつける。その視線を浴びたリザはバツが悪そうに目を逸らした。
「それに、爆炎のスカーレットと呼ばれるエミリアさんは、どうして王下十輝星と一緒にいるんですか……?」
「あ、私は別にトーメント王国に味方してるわけじゃないよ!ただ、リザちゃんの役に立ちたいからここにいるだけ。ライラを倒したら、リザちゃんがわたしを故郷に返してくれるの!」
「え……?それって……」
「エミリア……余計なことをベラベラと喋らないで。お互いの事情なんてどうでもいい。今の私たちは、何が何でもライラを倒す……それだけを考えていればいいの。」


3人がライラを倒すという目的に集中した頃、洞窟の最深部ではライラが儀式の準備をしていた。
魔法陣の中には人間の遺体が2人。その周りには邪術の触媒である怪しい草や小さな粉が大量に積まれている。
「さ~て!3対1ではさすがの私もフルボッコにされて泣いちゃうかもしれないから、心強い味方を作らないとね……!」
ライラが今まさに実行しようとしている邪術……それは邪術の中でも最高難度を誇る、「人体錬成」である。
「150年前に拳聖と呼ばれた、スピカの「ワルトゥ」と……ルミナスの英雄と呼ばれた「カナン」……この2人の髪の毛と体液を使って、私が霊界から2人を呼び寄せちゃうよ~!」
日課である邪術配信の真っ最中でテンションの高いライラ。触媒の準備を終えると、両の手を勢いよく合わせてから地面に手をつけた。
途端に、魔法陣の中に暗闇が立ち込め禍々しい力が溢れ始める……!

186: 名無しさん :2017/03/23(木) 19:20:49 ID:???
「んあぁ……なんだぁ、なんだぁ!?どこだここはぁっ!?薄暗ぇぞぉっ!」
「げっほ!げっほっ!……その声は、ワルトゥ!?どうしてあなたと私が……!」
闇の力が立ち込める魔法陣の中で、野太い男の声と落ち着いた女性の声が響いた。
やがてその霧が晴れると、ライラの持ってきた電灯で2人の姿が露わになる。

「現世へお帰りなさい。過去の英雄さん。今回あなた達を使役させていただく、邪術のライラと申します。」
「呼び出したのはテメェか……先に言っとくが、俺は隙を見つけたらすぐに逃げ出してやるからな!」
元スピカのワルトゥ。現スピカのリザとは対照的に、30代後半と思われる大柄で無骨な印象の偉丈夫である。
格闘家らしい腹筋を露出した服装で、その腹筋にはいくつもの刀傷が付いており、彼の長年の戦闘経験を物語っている。
倒木のような腕から繰り出されるパンチの威力は計り知れない。

「もう……!邪術はどこの国でも禁じられてるはずでしょ!?どうしてこんなことするの!」
夕陽のような色の長髪をした、20代後半と思われるルミナスの英雄カナン・サンセット。またの名を魔法少女・トワイライトディザイア。
ワルトゥと同じ時代にルミナスの少女兵士として活躍し、当時の王下十輝星を5人も倒した英雄の中の英雄である。
今は変身前の姿のため、オレンジ色のコートに身を包んだ年相応の格好だった。

「クスクス……安心してくださいな。用事が済んだら2人とも土に還っていただきますから。」
「ケッ、胸糞悪い術だぜ。俺らのことを道具扱いじゃねえか……」
「そ、そもそもどうして私をワルトゥと一緒に召喚したのよ……!こんな不細工で下品で頭の悪い下衆男と……!」
「お、おい、ちょっと言い過ぎじゃねえか!?これから少しの間一緒に戦うんだから、あの頃のことは忘れて俺と仲良くしてみても……いいんじゃねえか?」
「な、何を言ってるの!?誰が貴方みたいな汚らしい男と!冗談もほどほどになさいっ!」
「チッ、ホントにつくづく可愛くねえ女だぜ……!」

「さて、貴方達に倒してもらいたいターゲットですが……」
これからこの場所に来るリザ、エミリア、水鳥の3人の能力について、ライラはわかりやすく説明した。
「おもしれえ……今のスピカがどれほどの能力者か、確かめてやるいい機会だ。腰抜けタマナシ野郎だったら容赦しねえぞ!」
「貴方、説明聞いてなかったの?今のスピカは女の子なんだから、タマ……なんでもないわ。」
「女ァ!?そいつはいい。俺は男を殴るよりも女を殴る方が大好きだからな!ガハハハハハハハ!」
「はぁ……やっぱり下衆男ね……」

「それと……私の術が正しく当時の貴方達を再現できているかはわかりませんので、うまく体が動かなくても御愛嬌ということで。」
「はっ、別にお前に勝たせてやる義理もねえよ。術の力で勝手に戦っちまうだけなんだからな。……まあ相手が女なら、多少乗り気になっちまうかもしんねえが……!」
「ホント、嫌な術……生きてる頃に邪術の根を摘み取っておけばよかったわ……」
「それと、ターゲットの3人は殺さず戦闘不能にするようにお願いしますね。後で色々と使うので……クスクス……!」

蘇った拳聖とトワイライトディザイア。果たしてリザたちは生きてここから出ることができるのか。
その結末を隠すかのように、森には夜の帳が下りていった。

187: 名無しさん :2017/03/24(金) 01:08:20 ID:???
「キシャアアアアア!」「キシャアアアアア!」「キシャアアアアア!」

「ま、またすごいのがいるね」
「あれだけ厳重に守ってるということは……」
「邪術のライラのいる洞窟は、あそこで間違いなさそうですね」
森の奥地へと進んだ3人が見たのは、頭はクワガタ、両手はカマキリ、尻尾はサソリ……かつてドロシーが苦戦し、ライラに敗北した直接の原因を作った魔物であった。しかも、今回は3匹もいる。

「中々手強そうね…私が先行してまず1匹仕留めるから、2人は援護を」
「うーん、ここは私が不意打ちで魔法使った方がいいんじゃないかな。それで注意がこっちに向いた隙に、リザちゃんがテレポートで後ろから……っていうのは」
「くっ……王下十輝星の指図を受けるなんて……ここは、即席の連携をするくらいなら1人1匹ずつバラバラに戦うべきです!」
などと作戦会議をしていた3人だが……

「うおぉおおおおおおりゃああああああ!!!」

突如洞窟から現れた筋骨隆々の男が、門番の魔物を3匹まとめてふっ飛ばした!

「がーっはっはっはー!どうした小童共!この程度の魔物相手にチンタラ作戦会議とは、随分と情けない奴らだぜ!」
いきなりの展開に、呆然とするする3人。そこに、辛うじて息が残っていた門番の1匹がゆっくりと尻尾を男へと向ける……

「まったく、そういう貴方はもう少し慎重になったらどうかしら」
しかし、これまた突然現れた女性の手により、生き残った魔物もあっさりと排除された。

「おう、悪いなカナン!」
「気安く呼ばないで。そもそも、何を考えて今回は味方のはずの魔物に攻撃したのよ」
「なぁに、連中がチンタラ作戦会議してるの見てつい我慢できなくなってな。それに、示威行為にはなったぞ?あ、示威って言っても自慰じゃない方だからな!」
「さいってー……まぁ、初手でビビらせるってのは確かに悪手ではないけど……」

「ええと……どちら様ですか?」
呆然としている3人を代表して、エミリアが問う。それに対し、ニヤリと笑う筋骨隆々の男。
「一言で言えば、雇われだな」
「雇われ……?」
「まぁ、わざわざ事細かに説明する必要はないわね。なんたって……」
「……!エミリア、魔法少女、下がって!」

「貴女たちはこれから」「俺たちにぶっ飛ばされるんだからな!」

189: 名無しさん :2017/03/24(金) 12:36:50 ID:???
「竜衝破・山落しっ!」
腕の一振りから極太衝撃破を繰り出し、その飛び道具を盾にしながらドスドスと走り出したワルトゥ。
「変身っ!」
掛け声とともに魔法少女の姿へと変身するカナン。リボンとフリルのついたオレンジドレスにハイソックスという少女らしい格好になった。
「はぁ……29でこの衣装はやっぱりキツイわ……」

「う、嘘でしょ……あの人は……まさか……」
変身したカナンを見て狼狽する水鳥。それもそのはず、彼女はルミナス城入り口で毎日カナンを見ているのだ。
ルミナスの英雄トワイライトディザイアとして、金の銅像にされている姿を。
「魔法少女ッ!のんびりしてないで早く変身して!」
「あ、は、はいっ……で、でも……私なんかが勝てるわけが……!」
「エミリアッ!私があの男を抑える。魔法少女と2人であのオレンジを叩いてっ!」
「わかった!」

「てめえが今のスピカか?ハッ、なんだか随分とちんまりしてんなぁ……王下十輝星ってのはお人形の集まりになったのか?」
「…………」
衝撃破をやり過ごしたリザは無言で男を見据えた。彼女もまた、拳聖と呼ばれたこの男を知っている。
「俺はワルトゥだ。まあ俺が誰かなんてことは」
「もう知ってる……死人を蘇らせて操るなんて、邪術師の仕業でしょ……」
「なんだ知ってるのか。後世に伝えられるほど俺も有名になってるんだな!ガハハハハ!」
「……すぐに終わらせるわ。」
「お、見た目と違って肝が座ってやがるな。いいぞ……そうでないと壊し甲斐がねえからなぁ……!」



なんか怖いおじさん来たな
カナンちゃんめちゃくちゃ可愛い
カナンちゃん:29歳
ロリコン以外はみんな余裕っしょ おっぱいおっきいし
怖いおじさんにボコボコにされて完全屈服からの陵辱キボンヌ
↑カナンちゃん真面目そうだからおじさんがそういうことするの許してくれなそうw
視聴者数:79524

190: 名無しさん :2017/03/24(金) 20:15:18 ID:???
「へ…変身!」
伝説の英雄であるカナンを前に、怯えながらも変身し、魔法少女アクア・ウィングとなる水鳥。
「まったく…まさか邪術師に使役されるなんて…悪く思わないでね」
それに対し、カナンの態度は正に威風堂々。戦う前から、水鳥は気圧されていた。図らずも、ワルトゥの示威行為が刺さった形になった。

「ファイアボルト!」
まずは小手調べにエミリアが火属性の初級魔法を放つ。
「……!ライトシューター」
流石のカナンもエミリアの凄まじい魔力からなる高威力の魔法には驚いた……と見えたが、サイドステップで躱しながら光属性の初級魔法を放つ。

「プロテクトシー……」
「ロードアクセル!」
「きゃ!?」
防御魔法を張ろうとしたエミリアよりも早く加速魔法を発動させ肉薄し、彼女を殴打して無理矢理詠唱を止める。

「うぅ……アクアエッジ!」
水鳥が援護しようと魔法を放つ。そこで、カナンは殴られてふらついているエミリアをグイッと引き寄せ、アクアエッジを防ぐ盾とする。

「きゃあああ!?」
「爆炎のスカーレット!?ご、ごめ……」
「スターライト!」
「え!?あ、ぐぅうううううああああああ!!」
味方に攻撃を当ててしまった負い目から動きが鈍る水鳥。その隙を見逃さずに光属性の中級魔法を放つカナン。水鳥は悲鳴を上げて崩れ落ちる。

「今の攻防で、アンタたちは致命的なミスを四つ犯したわ」
「あぐっ!」
アクアエッジを喰らって傷だらけのエミリアを乱雑に地面へと放り投げ、カナンが言う。


「一つ、その気になれば身のこなしで避けられる初級魔法にわざわざ防御魔法を使おうとしたこと
一つ、そうやって隙を晒して、接近された時の対策を何一つ練らずに接近を許したこと
一つ、その状況を打破したかったからって、敵味方が入り乱れてる状況で何の工夫もせず魔法を使ったこと
一つ、その結果味方に誤射したからって、注意散漫になったこと」
「ぐ、ううう……」

なんとか起き上がろうとするエミリアの頭を踏みつけながら、カナンは淡々と述べる。

「現代の魔法少女たちは、随分と腑抜けてしまったようね……相手が魔法の詠唱を待ってくれるとでも思ってるの?仲間を心配するのと信頼することの違いも分からないの?」
「あ、ああ……やっぱり、勝てるわけないよ……あの人は、あの伝説の…!トワイライトディザイアなんだ……!」

192: 名無しさん :2017/03/24(金) 23:41:07 ID:???
すぐに終わらせる……その言葉の通り、リザはワルトゥの背後へと一瞬で移動し、首元に斬りかかった。が……
「ぐうっ!?」
「ほー瞬間移動か……便利な能力なんだろうが、そう殺気立ってちゃバレバレだぜお嬢ちゃんッ!」
「ひ、ひゃあっ!」
斬りかかった右腕をすげなく捕まえたワルトゥは、そのまま片手でリザの体を空高く放り投げた。
「いくぞォっ!落山破岩撃イイィィィッ!!」
落山破岩撃──敵を投げた後跳躍し、空中で身動きの取れない敵の腹に太い腕を力強く食い込ませ、そのまま地面へと叩きつける豪快な技である。
「ううっ!」
皆まで説明されずとも、自分の腹に太腕が食い込んだ時点でリザはこの後の展開が読めていた。
「はっはー!さぁ着地までにワープができるかなぁっ!?」
言われずともリザはすかさず魔力を集中させ、テレポートを試みるが……
「ぐあぅっ!!」
そうはさせまいとワルトゥは片方の腕で、リザのがら空きの背中へと殴打を食らわせた。
「かわいい声してんじゃねえか……もっと俺に聞かせろよ……テメェの悲鳴をっ!」
「ああああぁッ!!!」
ワルトゥの力強い強い一撃に耐えられず、先ほどよりも一際甲高い声で悲鳴をあげるリザ。その女を感じさせる声にカナンは素早く反応した。
「ちょっとワルトゥ!?あんたまさかその子に変なことしてんじゃないでしょうね!?」
「はぁっ!?し、してねえよ!!こんなときにするわけねーだろ!お前は馬鹿か?」
「ならいいけど……女の子に変なことするんじゃないわよ!」
「ったく……ってああっ!いねえぞ!?」

カナンに問われたワルトゥが出川◯郎のようなセリフを言い放ったとき、明らかに集中が逸れたのをリザは見逃さなかった。
そしてリザがワープした先……それはワルトゥの真上だった。

「連斬……断空刃ッ!!!」

193: 名無しさん :2017/03/25(土) 01:55:19 ID:???
エミリアと水鳥の攻めを全く寄せ付けず、圧倒的な実力を見せるカナン。
だが、単純な魔力についてのみ言うならば、エミリアの力は決してカナンに引けを取るものではないし、
水鳥にも、並々ならぬ潜在能力が秘められている事を、カナンは感じ取っていた。しかし……

「一つだけ教えてあげる。魔法使い同士の戦いでは、頭数の差は必ずしも絶対ではないのよ…同士討ちのリスクがあるからね。
…かと言って、一人で戦うのは限界がある。だからこそ、ルミナスの魔法少女軍は仲間との調和を重んじ、徹底的に連携を磨くの。
機会があったら一から優しくレクチャーしてあげたい所だけど…残念ね。今は敵同士だから…」

…カナンが地面に向けて手をかざすと、足元の影が動き出し、立ち上がってカナンそっくりの人型へと変わった。
それも一体や二体ではなく……七体の分身が、エミリアと水鳥に一斉に襲い掛かった。
「…疑似的に、ではあるけど。完璧に統一のとれた連携、ってやつを身体で覚えてもらうわ。ふふふ…」

「な、何あれ…分身!?…あれだけの数を、詠唱なしで召喚なんて……」
「や、やっぱり…勝てるわけない…相手は、伝説の魔法少女…」
闇属性の魔法『シャドウサーヴァント』…術者自身の影から分身を作り出して操る魔法で、闇魔法の中では中の上級…といったレベル。
だが複数の分身体を同時に召喚・操作するとなると、分身の数を増すごとにその難易度は等比級数的に跳ね上がる。

そして、いかに伝説の魔法使いといえども中級以上の魔法を詠唱なしで使う事はできない。
カナンはこの時、『思念詠唱』と呼ばれる技術を使い…要するに脳内で呪文を詠唱していたのだ。

口頭での詠唱と同程度の時間は掛かるし、相応の集中力も必要とする。それでいて魔法自体の威力は変わらない。
一見メリットのない技術に思え、事実現代のルミナスでは失伝しつつある。だが使いようにっては…
関係ない話をしたり、友好的なそぶりを見せて時間稼ぎをし、その裏で自分だけ魔法を詠唱する、
という事も可能である。…まさに今、カナンがして見せたように。

「くっ…ファイア・ボr…ッッ!?」
(ドゴッ…!!)
接近する一体に魔法を撃とうとするエミリアに、横から急襲した別の影が体当たりを加えた。
(…バチバチバチッ!!)
「…!く、うあぁっ!!」
詠唱を止められ、体勢を崩した所へ、最初の一体が至近距離からの電撃魔法。
(ずんっ!!!)
「あ、が……か、はっ…」
更に別の影が『グラビティプレス』…局地的に重力を増加させ、動きを封じる魔法…を仕掛けて動きを封じる。
その間に、体当たりをした影はトドメの大技の準備を終えていた。
『サウザンドアームズ』…魔法の剣や槍を大量に召喚して敵の頭上から落とす、鋼属性の上級魔法である。
もちろん単体でも恐るべき殺傷力を持つ魔法だが、『グラビティプレス』によって重力が増加している今は…
(ザシュ!!…ガキガキガキンッ!!!)
「きゃあっ!?…ぷ、『プロテクトシールド』っ…!!」
最初の一本が右肩に刺さりはしたものの、奇跡的に防壁の展開が間に合った。
だがエミリアにはそこから先の、反撃に転じる手段が…全くない。

194: 名無しさん :2017/03/25(土) 03:06:43 ID:???
(ガキン!!ガキン!!ガキン!!ピシッ……)

「はぁっ……はぁっ……どうしよう…シールドがもう、限界………っ、あぐ!!」
剣の雨は徐々に勢いを増していった。超重力で加速された剣の雨に曝されて、
エミリアの魔法障壁は無数の亀裂が走っている。
更に、影の魔法によって増加した重力の影響で、右肩に刺さった剣はずぶずぶと深く喰い込んでいった。
大量の血が流れだすと同時に、エミリアの身体は地面に縫い止められてしまい…最早逃げる事も不可能。
シールドを展開するための、左手を上げているだけでも辛くなって来ている。

「いくら魔法使いだからって、接近戦が素人以下じゃ話にならないわね。
目の前の奴に気を取られて背後に回った敵に気付かないのもダメダメだし、
簡単に囲まれて動きを封じられるとか論外。ちゃんと後ろに眼ぇついてんの?
あそこは重力魔法喰らう前に被弾覚悟で突破しないと…っ……ええっと。
でもホラ、今は敵だから…ダメ出しじゃなくて、ダメ押しでもしとこっかなー?」

なんか異様にテンションアゲアゲになっているカナン。
それに呼応するかのように、エミリアの周囲にいた影が魔法障壁の亀裂を通って……

「ひっ……い、いやっ…入って、来ないで…っ、ひっ!!」
影達は魔法障壁を内側から崩そうと、あらゆる手段を使ってエミリアの集中を乱して来た。

「いぎっ…あ、んああああぁっ!!」
ある者は…肩に喰い込む剣を掴み、力任せに押し込む。

「ひゃんっ……や、そこはっ……は、うぅ……」
別の一体は服の内側へと潜り込み、重力に負けて拉げている胸を無理やり捏ね上げる。

いずれも、反撃できないエミリアにあえて止めを刺さず、ゆっくりじっくり嬲るような攻め手であったが…
残りのもう一体は更なる呪文の詠唱を始めた。…それは、かつてカナンの得意としていた魔法の一つ。
だが現在のルミナスでは禁忌とされている…毒属性。

「…うっ…が、ああ"ぁあ"あ"ぁあ"あぁっ!!!!」
『ポイズンクラウド』…その名の通り毒ガスを至近距離に散布するという、毒属性の中では基本的な術の一つである。
通常、かなり標的に接近しないと効果を発動する前にガスが霧散してしまう等、使いどころの難しい術なのだが…
今回のように、魔力的にほぼ密閉された障壁内では、抜群の効果を発揮する。

「あらあら…最近の魔法少女は毒対策もしてないの?ホンっト、たるんでるわねぇ…」
二手三手先の戦局を読み、多種多様な魔法の中から最も効果的なものを選ぶ…
数々の修羅場を潜り抜けた『ルミナスの英雄』の、正に真骨頂であった。

まさかの残虐ファイトww
29歳さんはドS
伝説の魔法少女…なんて恐ろしい
敵対と見せかけてコーチしてくれる展開 …と思った時期が俺にもありました
連携を見せるにしてもあんな大量に分身出す必要はどこに アッハイ 連携は重要です
視聴者数:81487

202: 名無しさん :2017/03/25(土) 13:20:09 ID:???
「ぐぎゃああああっ!」
連斬断空刃──空中で身動きの取れない相手にワープで翻弄しながら落下の勢いで切り刻む、リザの必殺技だ。
「くそっ、このガキ……いい加減にしやがれっ、ぐげええあああ!?」
憤るものの、空中ではテレポートを繰り返すリザのスピードについてこれるわけもなく、ワルトゥは身体中に致命傷を負ったまま地面に激突した。

「ぐおっ!……ち、ちくしょう……!」
「私に空中戦を挑んだのが運の尽き……さようなら。」
「けっ……やるじゃねえか……トーメント王国を……頼むぜ、嬢ちゃん……」
「…………任せて。」
しばし逡巡した後小さく返事をすると、リザはワルトゥの脳天に深くナイフを突き刺した。

「げほぉっ……毒が……も、もう、だめ……!」
リザが2人の元に向かうと、そこには絶望的な光景が広がっていた。
防御魔法の中で毒に苦しむエミリア。離れた場所で倒れている水鳥。そして……余裕の表情を見せているカナン。一目見ただけで状況は最悪だとわかった。

(ま、まずはエミリアを助ける!)
素早くエミリアの元に近づき、防御魔法を壊さんとしている剣や槍をのけようと蹴り飛ばす。が、もちろんカナンの重力によりリザの蹴り程度ではびくともしなかった。
「あなた……ワルトゥを倒したの?」
「はっ!」
カナンの問いかけには答えず、リザは防御魔法の中にワープすると倒れているエミリアに抱きついた。
「えっ?リ、リザちゃん!?」
「ッ!!」
そのままエミリアとテレポートした瞬間移動、防御魔法は粉々に壊れ剣や槍がエミリアのいた地面へと突き刺さった。

203: 名無しさん :2017/03/25(土) 14:49:48 ID:???
「まったくワルトゥも情けない。昔から残虐な癖に身内には甘すぎる男だったから、どうせわざと出○哲朗みたいなこと言ってチャンスをあげたんでしょうけど。
言っとくけど、私にそんな優しさ期待しないことね。むしろ、不甲斐ない現代の魔法使い達に腹が立ってるくらいなんだから」
「リザちゃん…!あの人、強い…!」
「ええ…でも、三対一なら」
「む、無理だよ……勝てるわけないよ……」

突如、カナンが舌打ちをする。

「そこのガキんちょ、アンタはさっきから何やってんのよ」
「え?」
「馬鹿力……いえ、馬鹿魔力女は未熟なりに食らいつこうとしてる。王下十輝星はワルトゥを倒した。なのにアンタは、さっきから怯えて震えているだけ」
「う、ううう……」
「何がなんでも勝とうという気概を無くし、お行儀がいいだけ?そんなんじゃ何も守れないし何も救えない」

「お姉ちゃん……!真凛さん……!」
水鳥の脳裏に、優しい姉と尊敬する師匠の顔が浮かぶ。姉はノワールに操られ、師匠は邪術師に魔物にされた。あの日、トーメント王国に攻め込んだ際に王を倒せていれば、そんなことにはならなかった。光やリムリットですら勝てなかった相手なのだから勝てるわけがなかったというのは言い訳だ。
無意識のうちに、自分は年下なのだからみんなよりも弱いのは当たり前と考えていた。だが、それは甘えだ。諦観だ。自分が誰よりも強ければ、姉も真凛も守れた。光ももっと早く救えた。

「私は……!私はぁ……!!」
「なんかやる気出したっぽいとこ悪いけど、一旦サヨナラよ!」
「え!?」

突如、カナンの足元から煙幕がモクモクと立ち上る。『スモーキングクォーツ』と呼ばれる補助魔法の一種だ。例によって思念詠唱で話の最中に詠唱していたのである。

「流石に王下十輝星も込みで3対1じゃ些か分が悪いからね!一旦退かせてもらうわ!時には戦略的撤退も視野に入れるべきと覚えておきなさい!」
「……!待ちなさい!」
リザが煙幕の中に突っ込んで追撃しようとするが、カナンの分身達に阻まれる。

怖いおじさん意外と優しい人だったww
悪人だけど身内には甘いってのは割とよくいるタイプ
なんで29歳さんはガチで殺ろうとしてるんですかねぇ…
29歳さんはドS
視聴者数:87542

(さて、ゲリラ戦に移行するとしましょうか)
ワルトゥを倒したスピカのリザもいては、正面衝突では遅れを取る可能性がある。万全を期して、洞窟に潜みつつの奇襲戦法を取ることにしたカナン。
彼女は数が多い相手や地力で勝る相手にはゲリラ戦で幾度も勝利を収めてきた。

(正面から魔法を撃ち合うだけが闘いじゃないってことを教えてあげるわ)

206: 名無しさん :2017/03/25(土) 19:55:21 ID:???
「はぁ……せっかく冥界から蘇らせてあげたのに、あのおじさんすぐにやられちゃったじゃない。あの巨体を活かしてリザちゃんに強烈なベアハッグでもしてほしかったわ。」
洞窟を抜けた先にそびえ立つ館の中で、ライラは残念そうに呟いた。
「ア゛……アァ゛……」
ローブの中で父の声が響くと、ライラは父の顔にそっと手を添えて目を閉じる。
「なぁにお父様……ふんふん、もう我慢できない~早く女の子を吸収したい~……なるほどなるほど。要するにもうぐかなりグーペコになってきたのね。」
「アァアァアァ゛……ア゛ア゛ア゛……!」
「わかった、わかったわ。わたしの体だったらどこでも好きなだけ舐めて。お父様が待てないなら、私からあの3人のところに行ってあげる……クスクス……!」



「あ、あの人逃げたのかな……」
「わからない。でも警戒を怠らないで。オレンジがどこから攻撃を仕掛けてくるかわからないわ……」
突如姿を消したカナン。一旦サヨナラというセリフ通りならば退いたということになるのだろうが、リザは全方向に注意を配った。
「魔法少女、無事なの?」
「……私は大丈夫です。リザさん……スピカさんは、あの男を倒したんですか?」
「なんとかね……相手が手を抜いてくれた。多分邪術氏に操られるのが気に入らなかったんだと思う。」
「あ、あの人はそういう風に思ってないのかな……いたたた……」
肩の傷を治癒魔法で癒しながら、エミリアは苦しそうに顔をしかめた。
「エミリアさん、ごめんなさい。私、援護らしい援護もできなくて……」
「ううん。水鳥ちゃんはまだ子供なんだから、無茶しないで。私とリザちゃんに任せて。」
「……元々大した戦力だと思ってない。だから、別に何もしなくていい。」
「ちょ、ちょっとリザちゃん!そんな言い方はやめて!」
「…………」

ルミナスの魔法少女たちにトーメント王国がしたことを考えれば、リザは水鳥に優しく接することなどできなかった。
魔法少女と仲良くなろうものなら、またトーメント王国がルミナスと戦闘になった時に支障が生じてしまう。
アフェナイトの民のため、リザは魔法少女たちに対して非情に振舞うことを選んだのだ。

「足手まといで……ごめんなさい。あのオレンジの人はカナン・サンセット。ルミナスの英雄と呼ばれている人なんです。」
「そう……だから日和って何もできなかったのね。」
「リ、リザちゃん!!言葉を選ばないと、私リザちゃんのこと嫌いになるよッ!」
「い、いいんですエミリアさん。私も、王下十輝星に優しくされるよりは、今の態度の方がいいです……」
「う……水鳥ちゃんがそう言うなら……」
「誰が相手でも、私は勝ってライラを倒す。魔法少女はそれの邪魔をしなければいいだけ……だから、顔を上げなさい。」
「…………はい。」
水鳥がゆっくりと顔を上ると、リザはスタスタと歩き出した。後に続く水鳥。その小さな後ろ姿を見て、エミリアは思った。

(戦争って……悲しいなぁ……)

  • 最終更新:2018-01-27 02:17:51

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