14.02.量産型

155: 名無しさん :2017/03/13(月) 00:22:10 ID:???
「……そろそろ、邪術師の住む洞窟がある森に着く」
「きっと使い魔とかがたくさんいるんだろうなぁ…とにかく、頑張ろうねリザちゃん!」
「……ええ、そうね」
双方共に先ほどの出来事は覚えていない彼女らだが、その旅路自体はとても順調だった。

「大丈夫!アイナちゃんとリザちゃんなら、ちゃんと話せば絶対簡単に仲直りできるよ!」
「そう…かな」
「そうだよ!」
エントランスでの出来事の後、なし崩し的にそのまま出発したリザとエミリア。なぜ一瞬とはいえアイナのことを忘れていたのかは分からないが、2人の間に溝ができたのは紛れもない事実である。

「…とにかく、今は戦いに集中しないと……!エミリア、下がって!」
リザとエミリアが森に足を踏み入れた瞬間、木の上から鎌が投げられてきた。
エミリアを抱えて後退し、その攻撃を避けるリザ。そして、下手人へと目を向ける。

「……!アレは、あの時の!?」
右腕のアタッチアーム。左腕の触手に、先ほど飛んできた鎌。なんだかよく分からない生物の下半身。胸と頭こそ以前見た時と違い、人間を模しただけの鉄屑になっていたが、それは、間違いなくドロシーロボであった。

「リザちゃん、あれが何か知ってるの!?」
「以前、戦ったことがある。手強いけど勝てない相手じゃない」
変わり果てた友の成れの果て。あの時確かに破壊したが、邪術師は同系統のロボットを量産していたようである。
ドロシーを殺された怒りを込め、そのロボットと戦おうとしたその時!


「リザ……タスケテ、タスケテ」

「え、しゃ、喋った?」
「……!う、?…!そんな、まさか…!」

「イヤダ、イヤダ、タタカイタクナイ、タタカイタクナイ」
右腕のアタッチアームから機関銃が現れ、射撃を開始する。呆然として動きが鈍っているリザを、エミリアの魔法が守る。

「戦いたくないなんて言いながら何を…!リザちゃん、どうしたの!?」
「ド、ドロシー…ドロシーなの!?なんで!?」
「ワタシハ、タマシイヲロボットニイショクサレ、アレカラズット、ムリヤリ、ジャジュツシニツカワレテイル」
ドロシーロボを倒した時、彼女は天国へ旅立ったと思っていた。しかし、それは大きな間違いだった。
魂すら弄んでしまう禁忌の術により、ドロシーは死してなお、苦しみ続けていたのだ。

「コロシテ、コロシテ、コロシテ」
「ちょちょちょっと、一体どういうこと?」
「私の…死んだ仲間の魂が……あのロボットに…囚われてる…!」
「……!!そ、そんな!」
迫りくる触手を異名通りの炎で燃やしていたエミリアだが、その言葉を聞いて出力を弱めてしまう。
そして、その隙を見逃すドロシーロボではなかった。

「あ!?きゃああああああ!!」
右足首を触手に捕まれ、逆さ吊りにされるエミリア。一気にトドメを刺すつもりか、右腕をエミリアに向けるドロシーロボ。

「く…!ドロシー…!」
それを見て、困惑していたリザも腹をくくる。両腕をエミリアに向けているうちに、神速で木の上のドロシーロボに肉薄し、ナイフで一気に切り刻む!

「ドロシー…!今度こそ…!グスッ……安心して天国に……行ってね……!」
「ア、ア、ア、コロ、シテ、リ…!ザ…!…………」
ドロシーロボが完全に沈黙したことにより、逆さ吊りにされていたエミリアが解放されて落っこちる。それを素早く受け止めるリザの顔は、苦悶に満ちていた。

「こ、こんな酷いことするなんて…!許せないよ!」
「……今度こそ…今度こそ仇を取る!」
そうやって意気込み2人だが……。

「コロシテ、コロシテ」「タスケテ、タスケテ」「リザ、リザ」「タタカイタクナイ、タタカイタクナイ」

「……!な、そんな、なんで!?」
「ドロシーが…こんなにたくさん!?」


「ふふふ、ドロシーちゃんの魂は、ここに繋ぎ止めてるからね」
暗い洞窟内。視界と聴覚をドロシーロボにリンクさせた邪術のライラは、ホルマリン漬けにされたドロシーの脳を愛おしそうに撫でながら呟く。

「脳とロボは、電話の親機と子機のようなもの……いくらロボを倒しても、脳がある限り、ドロシーちゃんの魂はずーっと私のおもちゃ」
ドロシーロボは一年も前に急ごしらえで作ったロボであり、マイナーチェンジは繰り返しているが王下十輝星相手にするには数の暴力を考慮しても些か力不足だ。しかし、リザの心を痛めつけるのにこれほど適した存在はない。

「早く来て、リザちゃん…おもてなしは、まだまだたーっぷり用意してあるから」

156: 名無しさん :2017/03/15(水) 02:00:04 ID:???
「リザ。リザ。リザ。ヨケテカワシテサケテカイヒシテエエエエエエ。」
ドロシーロボの1人が突然ブスブスと不穏な音を立てながら、リザの背後に迫ってゆく。が……
(くそ……!あの時よりも武装が増えてる上に、動きに隙がない……!)
正面から迫り来るロボたちのバルカン砲と触手を捌いているがため、リザは背後を確認することができない。
だが、今は1人ではない。背後にはエミリアがいる。リザはエミリアを信じて、自分の背後はすべて彼女に任せているのだ。
エミリアもそれをわかっているから、戦いながらもリザの背後に危険がないかしっかりと注視していた。

(おっと、クソリザが無様に爆発するところは邪魔させないわよ!)
「リザちゃんあぶな……」
不審な動きでリザに近づくロボに気付き、ありったけの声で叫ぼうとしたエミリアの声は、サキの隷属の刻印によって阻まれた。
「え!?エミリア何か言った!?」
リザは正面からのバルカン砲を跳ね返しながら問いかける。が、返事はない。
「エミリアっ!無事なの!?」
返事がないことを不審に思い、エミリアの無事を確認しようと振り返ったその時だった。

「リザ。リザ。リ、リ、リリリリリリリリリリ。」
「え…?」
リザの目の前にいたのはプスプスと煙を上げながら、同じ言葉を繰り返すドロシーロボ。その尋常ではない様子にリザは直感的に危険を感じた。
(ま、まずいッ!!逃げっ)
「リザアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
焦ったためか、不運による不発だったのか、テレポートはあえなく失敗。
ドロシーロボの絶叫とともに起こった大爆発で、リザの小さな体は思い切り吹き飛ばされた。

「うああああああああぁっ!!!」
悲鳴をあげて吹き飛ぶリザ。その無防備な状態を好機と見たのか、ドロシーロボの触手が空中のリザを素早く拘束した。
「くそっ…!しまった……!」
「アアアアアア。ゴメン、リザ。ゴメンリザアアアアアアッ!!!」
ドゴッドガッバギッ!!!
「あぐっ!うぎゃあああっ!!」
地上に引き摺り下ろしたリザの腹に向けて、ドロシーロボたちのアームが炸裂。
内臓が潰されたような痛みに、たまらずリザは激しい悲鳴を上げた。
「リザ。リザ。コンナコトシタクナイノニ。コンナコトシタクナイノニ!」
そんなことを言いながらも、ドロシーロボは金属の塊を再びメリメリとリザの腹へ食い込ませる。
魔力を練ってテレポートをさせる暇すらリザに与えられることはなかった。
「うぐうおぉっ……!ぁ゛……ぐぁ゛………!」
「イヤアアアアアア!リザ、ナントカシテエエエ!ワタシヲコロシテエエエ!」
言葉とは裏腹に、ロボットはアームを物凄い強い力でリザに押し付けてゆく。
メリメリ…メリメリメリメィ……!
「あ゛、あがが……!おげえ゛え゛え゛っ……!」
メリメリ……という腹に金属の塊がめり込む恐ろしい嫌な音。それによりもたらされるとてつもない痛苦により、声にならない悲鳴をあげるリザ。
もう彼女は白目を剥いて意識を失う寸前で、今もなおガクガクと体を震わせていた。

「エ゛……エ゛ミ゛リア゛ァ゛……!だ……たずげてぇ゛……!」

157: 名無しさん :2017/03/15(水) 02:53:24 ID:???
「…ふふふ、量産型ドロシーロボは気に入ってもらえたみたいね…そうだ、クッシーの『実況動画』はどうなったかしら?」
ライラが手元のPCを操作し、とある動画サイトにアクセスすると……
森の中で戦闘するリザとロボットたちの映像が映し出された。
音声として聞こえるのは、金属の唸り声、そして少女の苦しげな悲鳴。

ライラは影の協力者であるサキの下僕…エミリアの感覚を通して、リザ達の状況を手に取るように把握できるのだ。
「やっほーライライ。こっちは順調に再生数伸びてるわよ。『チョーカー』もちゃんと動いてるかしら?」
首に巻いたチョーカーの機能によってリザ達の現在地が画面上に表示され、更には体力、魔力の残量までが数値化されている。
…かつて女時空刑事サラ・クルーエル・アモットが地下闘技場で戦った時のものと同じ技術であるが、
当然ながらリザやエミリアがそれを知る由もない。

[リザ] EN: 71/1000 MP:210/250 BS:瀕死 出血 内臓破裂  死亡回数:0

「あらあら…リザのやつ、早くも死亡寸前って感じね。ちょっと盛り上がりが足りないかしら?」
「大丈夫よ。あのエミリアって子、回復魔法が使えるみたいだし。それに…」

「…リザちゃん危ないっっ!!ロック・ブラスト!!」
エミリアの魔法によって放たれた岩の塊がロボットを弾き飛ばした。
「え……あっ……が、は……」
ようやく腹責めから解放されたリザだが…その場に倒れたまま、すぐには立ち上がることが出来なかった。

「コロ、シテ……」「…リザ」「リザ…」「ワタシヲ…」「…コロシテ」
「周り中からどんどん出てくる…これじゃキリがないよ…!」
「強行、突破する……エミリア、私に掴まって」
「そっ…そんなの、無茶だよ!!」
雲霞のごとく湧き出てくる人造魔物の大群に取り囲まれた二人。
リザはエミリアを抱きかかえ、テレポートで包囲の突破を試みる!が……
内臓破裂の重傷を負った身体で、人ひとりを抱えてのテレポートなど到底不可能。
一方のエミリアも、四方八方から降り注ぐロボットの銃撃や打撃を防ぐのに精いっぱいで、リザを回復させる余裕がない。

「それに…この森全体が、私の作った『結界』ですもの。一度や二度死んだくらいで、簡単に終われないわよ。クックック…」

158: 名無しさん :2017/03/15(水) 15:03:04 ID:???
テレポートのために精一杯魔力を練ったものの、さすがのリザも激しい痛みで朦朧としている状態では無理があった。
「ぅげほっ……ぐうぅっ!がはああぁッ!」
唸り声とともにリザの口から大量の血液が吐き出され、地面に大きな血だまりが出来上がった。
「ぁが……ぅぅ゛ぅ゛あ゛ぁ……!」
「リザちゃん無茶しないで!ここは私がなんとかするから、回復できるまで休んでて!」
「?げぇっふっ!ぐが……ぐごぼぼ……」
リザは返事をできなかった。というよりエミリアの声すらまともに聴けなかった。
内臓破裂している腹から夥しい量の血が逆流してきて、むせ返るような血の匂いと強烈な嘔吐感でそれどころではないのだ。

金髪美少女の腹パンktkr!
めっちゃ苦しそうwww
いたいのいたいのとんでけー!
魔法使いの子の被虐シーンまだー?
俺もあの子に腹パンしたいおっ
今北産業
美少女 腹パン おええ゛え゛え゛

「クックック…盛り上がってる盛り上がってる。ざまあないわねぇリザ……あんたはライライに惨たらしく殺されて、それからは永遠に邪術師たちのオナネタになるのよ……!クククク……アーハッハッハッハッハッ!」
「クッシー、よっぽどこの子が嫌いなのね。こんなに可愛くてお人形さんみたいな女の子なのに……」
「私的にはそこもムカつく……!ライライ、どう料理してもいいけど、クソリザには生まれてきたことを後悔させるようなとびっきりの拷問を、よろしくね?」
「もちろんよ。お父様も食べたがってるし、あの子の心臓と子宮も欲しいもの。わたしね、あの子が8歳くらいの時の姿を再現したホムンクルスを作って、たくさん愛でてあげる予定なのよぉ~?」
「あ、それできたら1人ちょうだい!ロリリザを奴隷にすれば毎日ストレス解消には困らないわぁ……アーハッハッハッハッハッ!!」

159: 名無しさん :2017/03/15(水) 23:39:03 ID:???
「こうなったら…!みんなには止めろって言われてるけど、上級魔法を使うしかない!」
エミリアは生まれつき強い魔力を持って産まれたため、初級呪文は中級呪文級になり、中級呪文は上級呪文級になる。上級呪文に至っては予想がつかない規模になるため、彼女が迂闊に唱える事は固く禁じられていたが、今はそんなことを言っている場合ではない。

「まずは…アースクエイク!」
土の中級魔法で周囲の地面を隆起させ、周囲からの攻撃を防ぐ即席の盾とする。これだけではドロシーロボたちの流動的な触手は防げないが、直線的な弾丸はしばらく防げる。触手が隆起した地面を伝ってこちらを拘束してくる前に、上級魔法の魔力を練り上げる。

「ハァアアアアア!」
(ドラゴ○ボールの引き伸ばし並に時間使って魔力を練りなさい!)
「……ハァアアアアア!」

今まさに上級魔法を放とうとした瞬間、隷属の刻印が発動する。
「ハァアアアアア!」
エミリアが無駄に時間かけて魔力を練っている間に、ドロシーロボの触手は盛り上がった地面を伝ってリザを捕らえようとしていた。
「ハァアアアアア!」
「ご、がひゅ、げぶぉ!あ、あ?あ?あ?、や、め……」
触手がリザの足を捕らえ、逆さ吊りにする。逆さまにされたことで、ただでさえ破裂した内蔵から逆流していた血液がさらに逆流する。
「エ…ミ…」
「ハァアアアアア!」
「たす…け…」
「ハァアアアアアア!!」

「このまま逆さまにしてれば、出血多量で死んじゃうかな?」
「ハァアアアアアァアア!!!」

「頼りになるはずの味方がちんたらやってるせいで少しずつ死が近づいてくる…クソリザにはお似合いね」
「ハァアアアアア!」

「ア、ア、ア!リザガ!リザガシンデイク!シンデシマウ!イヤダァアア!」
「ハァアアアアア!」

[リザ] EN: 43/1000 MP:210/250 BS:瀕死 出血 内臓破裂  死亡回数:0

「機械なら、電気に弱いはず!ライジング・サンダーフォース!」

とうとう放たれたエミリアの上級魔法。はたして、どうなってしまうのか!?

160: 名無しさん :2017/03/16(木) 15:41:19 ID:???
エミリアが呪文を唱えた瞬間、周囲は目が開けられないほどの強い光に包まれ、耳が割れるほどの凄まじい轟音が響き渡った!
「アアアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア!!!」
「ポメラニアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
「アビシニア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
「くぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
土壁の外から聞こえてくるドロシーロボたちの断末魔。エミリアの狙い通り、外で超威力の稲妻が走り回っているようだ。
「リ、リザちゃんっ!!」
リザは触手から解放され、うつ伏せに叩きつけられたが、反応はない。
「い、今回復するからね!死なないで、リザちゃん!」
「ぁ……ぅ……」
「うっ……!!ひどい……!」
リザの顔を確認して、エミリアは絶句した。
目は半開きでだらだらと口から血を流している、生気のない真っ青な顔。どう見ても死んでいるように見えるが、僅かにこひゅう、こひゅうと必死に呼吸をしている声が聞こえる。
すれ違えば誰もが振り返るであろう美少女の可愛らしさが、リザの顔から完全に消え失せていた。
「ぁ……ぇみ……りぁあ……!」
消えてしまいそうな切ない声でエミリアの名前を呼ぶリザ。その姿にエミリアは強く心を締め付けられる。
「だ、大丈夫だよリザちゃん……!すぐに治してあげるからね……!」

「嘘でしょ……?こんな規模の魔法を、あんな短い詠唱で……!?」
「け、けけ、結界にちょっとヒビが入っちゃった……!アレはちょっとヤバイかも……」
サキとライラ、端正な2人の少女の顔には、はっきりと焦りの色が浮かんだ。
それもそのはず。エミリアの魔法により期せずして出来上がったもの……それはリザたちを囲う岩壁を中心とした、80メートルほどの大きなクレーターだったのだ……!

161: 名無しさん :2017/03/18(土) 12:11:53 ID:HtT313vg
「ふぅ…リザちゃん、もう動ける?」
「う……うん。もうダメかと思った……エミリア、ありがとう。」
「お、お礼なんか言わないでいいよ。私の不注意で、リザちゃんがこんな目にあったんだし……」
「不注意……?どういうこと?」

「なんかね、後ろから走ってくる敵がいたからリザちゃんに教えてあげようとしたんだけど、なぜかふっと意識を失っちゃって……気がついたらリザちゃんが吹き飛んでて……」
「……意識を失うって、不注意じゃないと思うけど……どうして気を失ったの?」
「わ、わかんない……でもホントだよ!もしかしたらあのロボットになにかされたのかも……」
「………………」
「リ、リザちゃん……?どうしたの……?」
口元に手を当ててなにか考え事を始めたリザ。その表情から感情が読み取れず、エミリアは困惑した。


(……考えたくはない……考えたくはないけど、エミリアが私を殺す動機は充分にある……あまり信用しすぎるのは危険なのかもしれない……)


「と、とりあえず外に出ようよ!さっき私の魔法で、ロボットたちを倒せたと思うから……」
「……そうね。」
「じゃあ、岩壁を崩しちゃうね!えい!」
ガラガラガラガラ……!
エミリアが岩壁を崩すと、とんでもない光景が2人の視界に広がった。

「こ……これ……エミリアが……?」
先ほどまで見ていた森の光景とはあまりにかけ離れていて、驚きのあまりリザは小さく開いた口を閉じ忘れていた。
「あ、でも今回は結構いい感じだよ!小さい頃はもっと広い範囲で焼け野原にしちゃったことがあるから……」
「……エミリア……やろうと思えば洞窟で私たちを倒すこともできたんじゃない……?」
隕石かミサイルならわかるが、魔法1つでここまで地形を変えるエミリアの魔力は常識の壁を遥かに超えているのだ。
自分とアイナ程度なら、ガラドの洞窟で返り討ちにあっていてもおかしくないとリザは思った。
「今回はうまくいったけど……まだ自分の魔力を完全に制御できてないの。だから、私が上級魔法を使うときは条件があるんだよね……」
「条件……?それは?」
「……あ!ええと……それは……!は、恥ずかしいから言いたくない……!」
「恥ずかしい……?まあ別に、無理に言わなくてもいいけど……」


(うぅう……私が上級魔法を使うのは、大切な人を守る時だけ……なんて、恥ずかしくて言えないよ……)

162: 名無しさん :2017/03/18(土) 12:57:07 ID:???
クレーターを降りて森の奥を目指す2人。あまりの衝撃でドロシーロボのいくつかはクレーターの外の森の中にまで吹き飛んでいた。
「…あ、見てリザちゃん。あの子……」
エミリアが指を指した先に、プスプスと煙を上げているドロシーロボがいた。
「リザ……リザ……」
「ドロシー……くっ……」
リザが駆け寄っても動く気配はない。意識はあれど機体を動かすことはできない様子だった。

「ドロシー……必ず仇は取るから。あなたをこんな風にした邪術師を……私は絶対に許さない。」
「リザ……リザガトーメントオウコクヲキラッテルノハシッテル……デモワタシハ、ダレヨリモマジメデ、ダレヨリモヤサシイアナタガ、イマデモスキヨ……」
「ドロシー……私もあなたと友達になれてよかったよ。いつも最前線でみんなを引っ張る貴方は、すごくかっこよくて……私の憧れだった。」
「フフ……ヤサシイコトバヲクレテアリガトウ。アウィナイトノタミノフッコウ……ウマクイクコトヲ、イ、イノッテル……アアアキラメナイデ……ガンバッテ……ネ……リ……ザ……!」
プシュウウウ……
リザにアームをぎゅっと握りしめられながら、ドロシーロボは静かに機能停止した。

「アウィナイトの民……そうか、リザちゃんの目が宝石みたいに青いのは……」
「エミリア……私のことはいいから、今は邪術師を倒してガラドに帰ることだけ考えて。」
「あ……う、うん……」

アウィナイトの民。海の近くに住み、海を母と崇めている少数民族である。
特筆すべきは、一族全員がリザのように青い目と美しい容姿を持っているということだ。そんな一族に目を付ける悪しき者は、決して少なくない。少ないわけがない。
男は殺され目を宝石にされたり、女は金持ちの男の性奴隷にされたりと、アウィナイトの民の歴史を声高に語ることは憚られるほどに悲惨だ。
元々は海の近くにひっそりと住んでいたのが今は、悪しき者の手を逃れるために一族はバラバラになって人目につかないようひっそりと暮らしている。



「いいだろう……もしお前が王下十輝星としてトーメント王国の繁栄に多大なる貢献をすれば、考えてやる……!ヒヒヒヒ!」



リザが王に仕える目的……それはトーメント王国という巨大国家に、アウィナイトの民全員が迫害されないよう、手厚く保護してもらうことだった。


「……行くよ、エミリア。」
ドロシーを悼んで流れている涙をぐいっと拭って、リザは立ち上がった。
(……エミリアをガラドに返したい私が、どうして意思に反してエミリアをここに連れてきているのかもよくわからない。さっきのエミリアが意識を失った話といい……なにか……第三者の悪意を感じるわ。気をつけないと……)

163: 名無しさん :2017/03/18(土) 15:47:06 ID:???
クレーターを出て、森の奥へと進むリザとエミリアだったが……小一時間ほど経った頃。
リザは身体に異変を感じ、近くの木にもたれかかった。
「リザちゃん?…どうしたの?」
「…大丈夫。少し、身体が…痺れて……」

………
「…いやー、さっきはビビったわ。まさか記念すべき初死亡を、味方のはずの奴隷ちゃんに持ってかれるとは」
…ライラの結界の中では『魂』がこの世に縛られているため、通常なら死亡する程のダメージを負っても、
普通の回復魔法で蘇生する事が可能だ。…もちろん、肉体が原形を留めていれば、の話であるが。

「リザちゃん、モロに余波を喰らってたからねぇ…しかもあの距離で、『禁呪』級の威力の魔法を…面白い物が見られそうね」
エミリアの持つ規格外の魔力は、彼女の行使する魔法の威力を…いや、魔法の『階級』そのものを引き上げる。
初級魔法は中級魔法へ、そして上級魔法は…『禁呪』級へ。
その恐るべき威力、そしてあまりに忌まわしい「ある特性」によって、
国家間条約で邪術以上に固く使用を禁じられている、呪われた魔法へと昇華するのだ。
………

[リザ] EN:471/1000 MP:210/250 BS:-  死亡回数:1

「リザちゃん?…リザちゃん!しっかりしてっ!!」
「あ、ぐっ………身体、っ…電気が…!!」

『禁呪』をその身に受けた者は、身体だけでなく、魂までも傷つけられてしまうという。
たとえ蘇生されても、禁呪の威力は蘇生した身体にまで及び…苦痛に満ちた『更なる死』を迎えてしまうのだ。

バチッ!! バチバチッ!!
「いぎっ!!あ、…がああああ……ひ、あ"あ"あ"ああぁぁああ!!」
幾本もの稲光が爆ぜ、群れを成す蛇のようにリザの身体に絡みつき、這い回り、そして全身至る所に喰らいつく。
エミリアに心配を掛けまいと、最初は苦痛を堪えていたリザ。だが間もなくあまりの苦痛に声を漏らし始め、
今はまるで魔獣の断末魔のような、あられもない叫び声を上げ続けていた。
エミリアも回復魔法をかけ続けるが、リザの身を貫く電流は更に威力を増していき、やがて……

「え、っ………ひ、あう……っ…ぐ………」
「リザちゃん!!リザちゃん!! 嫌ああ!!死んじゃいやあああ!!!」

「死んじゃ嫌って、もう死んでるから。しかももう6回目w……もしかしてこのままゲームオーバー?」
「うーん…それは大丈夫じゃない?電撃の威力が少しずつ弱まって来てるから。
このまま行けば…あと10回くらいすれば、流石に落ち着くと思うわ」
「なるほど…アイツ、回復魔法も桁外れみたいだからね。…でもこの分なら、二度とさっきみたいな魔法は使って来ないでしょ」

(お父さんとお母さんの言った通り…やっぱり私、上級魔法を使うべきじゃなかったんだ。リザちゃん…本当にごめんなさい…!)
サキの推測通り、この一件でエミリアは上級魔法を使う事への深い恐怖心を持ってしまった。
…だがそれは、あくまで『表の人格』の話である。
サキの奴隷である『裏の人格』は、命令されれば、この恐るべき魔力を嬉々としてリザへと向けるに違いない。

「『実況動画』の方も、今ので視聴数が伸びてきてるし…」
「結界のヒビも、しばらくすれば自動的に修復される」
「状況は何も変わらないわ…もがけばもがくほど、余計な苦痛が増していくだけ」
「そしてリザちゃんは、もうすぐ私のモノになる。…永遠に……」


  • 最終更新:2018-01-21 23:19:57

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