14.01.出発

147: 名無しさん :2017/03/12(日) 00:46:48 ID:???
リザとサキの密談の翌日。ライラ討伐にエミリアを同行させたいというリザの申し出は、特に問題なく王に受理された。

「どうしたのリザちゃん?今日はなんかいつもに増して神妙な顔をしてるけど……?」
「…聞いて、エミリア。これから私とエミリアは反乱分子の鎮圧目的で共同任務に就く。このチョーカーには魔法がかけられていて、エミリアがわたしに強制的に従うようになっている……」
そこまで言って、リザはエミリアの細首にゆっくりとチョーカーをかけた。
「リ、リザちゃん……?」
「安心して。服従の魔力はかけてないから。……城を出るまでエミリアは、私に従っているフリをしてくれればいいの。城さえ出れば、あとはガラドに帰るだけ。……私の言ってること、わかる?」
珍しく額に汗を浮かべるリザ。その理由は、あの王や仲間たちを欺くという緊張感と、慣れない長台詞によるしゃべり疲れによるものである。
「エ、エミリア。いい?ここから出て家族のところに帰りたかったら、城を出るまではなにがあっても私に従うフリをして。…わかった?」
「リザちゃん……!ありがとう……!本当にありがとう……!わたし……ガラドに無事に帰っても、リザちゃんのこと絶対に忘れないっ……!」



(クククク……!これはいいものを見たわ。クソリザたちが城を出る前に、少し遊んでいけそうじゃない……!)
サキは、自身が奴隷化させた者の視界や聴覚を共有することができる。2人だけの牢獄で話されていた一連の計画も、サキには全て筒抜けだった。
(本当に奴隷化しているのか怪しむことができれば、色々と楽しめそうね。さて、どうしてやろうかしら……!)

148: 名無しさん :2017/03/12(日) 14:15:35 ID:???
「……おかしいですわ」
「……なにが?」
「リザちゃんが教授のチョーカー付けたサキの配下と邪術のライラ討伐に行くことに決まっているじゃありませんの!アイナでなく、サキと組んで!」
バン!とテーブルを叩いてアイナが言う。シアナとアイナは、城内の食堂で昼食を取っていた。

「ほんと、どうせなら俺と組んでほしかったぜ」
「確かに、意外な組み合わせでしたね」
訂正。シアナとアイナだけでなく、アトラとフースーヤも同じ四人掛けのテーブルを囲んでいた。別に最初は2人だけで昼食を取ろうとしてたとかいうわけではない。今回の任務の組み分けに関することを話したかったので、必然的にこの4人になっただけだ。

「…捕虜の中には結構な実力者が多い。裏切る心配なく使役できるなら、有効活用すべきだ」
「そういうことを言ってるんじゃありませんの!どうしてアイナとではなく、サキと組むのかと言ってるんですの!」
「…そう言えば、サキさんって戦えるんですか?そういうの苦手そうに見えるんですけど」
「あー、流石に一般兵よりは大分強いけど、あくまで潜入調査とか工作がメインだしな…」
「一応リザと組んでるってことになってるけど、戦闘にはついて行かずに手下だけ寄こしてるんだろ?ちょっとズルくね?」
「サキは教授の助手もしてるからな。戦闘まで本人にさせるのはちょっと酷だろ」

などと話しているうちに、食事を終えて食堂から出る。

「まぁ、もうしばらく臨時チームのまま行動することになるな。フースーヤ、すまないが我慢してくれ。アトラにはまた無茶なことしないようにキツく言っておくから…」
「なんだよそれ!あんなオバサンなんて俺ら2人なら楽勝だったっつーの!なぁ?」
と言ってフースーヤの肩を抱くアトラ。

「た、確かに思ったよりは楽に勝てましたね。実際、アトラさんと組むと戦いやすかったです」
(こういう男同士の戦友的なノリ……!ルミナスで何度夢想したことだろう!)
フースーヤは男同士のノリ的なことされると途端にチョロくなる。

「まぁとにかく、任務と関係ない相手に喧嘩売るのは止めろよな……アイナ、さっきから静かだけどどうした?」
「え!?な、なんでもありますわよ!?」
(リザちゃんのことだから、連れていく途中でエミリア・スカーレットを逃がして一人で邪術のライラと戦うなんてことも…でも、これはシアナに相談するわけにもいかないですし…どうすればいいんですの!?)

リザが捕虜を勝手に逃がすかもしれない、などとシアナに相談したら、リザが裏切り者の汚名を着せられてしまうかもしれない。
かと言って、一人でライラと戦うのは余りにも危険だ。

(リザちゃん…もし仮に逃がすとしても、ライラとの戦いには連れていくべきですわよ!)
エミリアはサキの奴隷と化しており、むしろ一緒に連れていく方が危険であることを、アイナは知らない。

149: 名無しさん :2017/03/12(日) 14:46:13 ID:???
「あ、リザ。今から邪術のライラを倒しに行くのか?」
城の通路でリザとエミリアは、昼食を食べ終えて部屋に戻るシアナとばったり出くわしてしまった。
「そ、そうよ。……邪術のライラを倒すには戦力が必要でしょ?このチョーカーでエミリアを操って、私と一緒に戦ってもらうの。」
「ああ、サキから聞いたよ。……おいお前、リザの言うことならなんでも言うことを聞くのか?」
シアナに声をかけられたエミリアは、ぴんと背を正しておずおずと喋り始めた。
「は、はい。私は美しきリザ様の奴隷……!強い心を持つリザ様に仕え、抜群のプロポーションを誇るリザ様に奉仕し…完璧美少女すぎる暗殺者のリザ様に忠誠を誓っています……!」
「は……?何を言ってるんだこいつは?」
(うっ、ううっ、嘘でしょエミリアッ……!?なんなのよその猿芝居はあああッ!?)
棒読みでいらない演技を始めたエミリアを掴み、リザはすぐさまテレポートをした。

「はぁ、はぁ……エミリア……ほんとにここから脱出する気あるのッ!?」
「え、え?なんかマズかったかな……台詞からリザちゃんの奴隷感を出そうと思ったんだけど……」
「……芝居が下手すぎ。台詞のチョイスも最悪。……もう一言も喋らないで。いい?」
「そ、そう?わかった。お口チャックしとくね。んー!んー!」
(まずいな……シアナに怪しまれたかも。本当に大丈夫かしら……)

ライラとの戦闘前にテレポートを連発して疲弊するわけにもいかない。リザは人目を避けながら慎重に城内を進んでいった。
「もうすぐ出口だから。怪しれないようにしててね、エミリア。」
「うん。……あ、あの人……」
エミリアの視線の先……トーメント城エントランスには、シアナとサキがいた。
(ま、まずい……見つからないうちに他の出口に行かなきゃ……)
リザがそう思った瞬間、エントランスに声が響き渡る。

「あ、リザさーん!何してるんですかー!?」
(な……サキ!?視線に入ってないのにどうしてバレたの……?)
呼ばれてしまっては逃げるわけにはいかない。リザは不安げな顔のエミリアの手を取った。
「リ、リザちゃん……!」
「大丈夫……私に任せて。エミリアは静かにしててね。」

150: 名無しさん :2017/03/12(日) 14:47:24 ID:???
「リザ……どうしてさっき僕から逃げたんだ?なにか隠してることでもあるのか?」
(うっ……いきなりか……)
「シアナさんから聞きましたよ?リザさんはそのエミリアって人を奴隷にしてライラを討伐するんですよね?それ以外に何かあるんですか?」
「……さ、ささ、さっきは話してる途中で……エミリアが恥ずかしいことをしゃべり出したから。その……私の奴隷とかなんとか言ってたでしょ……?」
額に汗を浮かべながらなんとか弁明しようとするリザ。その健気さに、エミリアは心を真綿で締め付けられる思いだった。
「へぇ……あれはリザの趣味で言わせてたのか?それをうっかり僕の前でベラベラ喋り出したから、恥ずかしくなった……と。」
「え……?あ、そ……そうよ。べ、別に奴隷に何を喋らせたって、私の勝手でしょ……?」
(リザちゃんすごい……!自分の焦りを逆に説得力にしてる!でも……私のせいで、これからはこの人たちに変な目で見られちゃいそう……)
機転を利かせ、シアナの追求を逃れようとするリザ。だがそこに追い打ちをかけたのは、サキだった。

「えー!私、気になります!どんな台詞を喋らせてたんですかー?」
「あぁ……なかなかえげつなかったぞ。自分のことを抜群のスタイルだとか完璧美少女だとか言わせてた。」
「え……?リザさんが自分のことをそんな風に言わせてたんですか!?」
「こういう美少女にそう言われると興奮するタイプなんだろ、リザは。僕も大概変態だけど、まさか君もそこまでアレだったとはね……いやあほんとに面白いものが見れたよ。クククク……」
「へー……私、リザさんはまともな方だと思ってたんですけどね……誰にも言われないからって奴隷に言わせるなんて。アイナさんあたりなら嬉々として言ってくれそうなのに。」
「アイナは自分のタイプじゃないからダメなんだろ。こういう…胸が大きくておっとりしてそうなのがリザのタイプってことだな。」
「と、というかそれじゃリザさんもレズだったってことですか!ひゃー!?」

(リ、リザちゃん……私のせいで、こんな……!酷すぎるよっ……!)
目を伏せて歯を食いしばるリザ。これから彼女は仲間たちにレズで変態というレッテルを貼られ、事あるごとにいじられ続けるのだろう。そう思うと、エミリアは気が気でならなかった。
「ち……違いますよっ!リザちゃんはモゴモモゴモゴッ…!」
大声をあげたエミリアをすかさず拘束し、口元を抑えるリザ。それを見て2人はクスクスと笑った。
「おいリザ、ちゃんと人前で変なこと言わないように教えておけよ?」
「リザちゃんは~の後、なんて言おうとしたんですかね?私、気になりますっ!」
「くっ……!」
ケラケラと笑う2人を背に、リザはエミリアを抱えて城の外へと出ていった。

151: 名無しさん :2017/03/12(日) 16:13:29 ID:???
顔から火が出る思いで、シアナ達の前から立ち去ろうとするリザ。だが…サキのターンはまだ終わっていなかった。

「あ、そうだ…忘れるところでした。出かける前に、教授からチョーカーの動作テストをしといてくれ!って頼まれてたんです。」
「ど…動作テスト?」
「どんな命令でも絶対聞くかどうか、試してほしいと…」
「…既に相当無茶な事してると思うけど」
お陰様で、既にリザは今後の人間関係に支障をきたしそうなレベルの危機に陥っている。

「まあまあ。万一チョーカーが壊れて、エミリアに『裏切られて』、『背後から襲われたら』大変ですし…念には念、ですよ!」
「……(チョーカーがあろうとなかろうと、エミリアはそんな事するわけないけど……)」
…リザは、そもそもエミリアをライラの討伐に連れていくつもりすらない。
すぐ目と鼻の先にある城門を出て、城下町を抜けたら、そこでエミリアを解放するつもりだったのだ。
が、ここは素直にサキに従わないと怪しまれてしまう。…教授のテスト、というフレーズからは不安しか感じないが…

「では、この紙に書いてあることを命令してください、だそうです」
……実際には教授のテストと言うのは嘘で、命令書はサキが書いたものである。だが、タチの悪さに掛けては…
「なになに。ではエミリア…ええと…『今着ている下着の色と種類、経過日数を報告しなさい。そして、私に差し出しなさい』」
…本人と同レベルだった。
「えっ」「えっ」「えっ」
リザとエミリアだけでなく、横で聞いていたシアナも思わず耳を疑った。
…が、教授なら実際その位は言いかねないので黙って成り行きを見守る。。

「………ど、…どうしたの…早く、い…言う通りにして…」
…この時点で既にリザは、先程以上に真っ赤になって俯き、全身を羞恥に震わせていた。何故なら……
「そっ……そんな事、言われても……昨日、リザちゃんにお風呂に入れてもらったから、まだ1日目です…
その時にリザちゃんに借りた、黒いレースのパンツで……あ、ブラジャーはサイズが合わなかったので…付けてません」
……その答えが、エミリアだけでなくリザにも極大のダメージを与える地雷だったからである。

リザとサキ、そしてシアナまでが見ている前で、エミリアはロングスカートの中にを入れて…
…黒いレースの真新しい下着を、おずおずとリザに差し出した。
「返さなくていいって言ったのに……」
「いやでも、差し出せって命令だし……」
「……あの、エミリアさん。…よかったら、サイズ合うのお貸ししますよ?」
「…………お願いします」
必至に笑いを堪えながら、エミリアを連れ出すサキ。素直に従ってしまうエミリア。止めようという気力すら沸かないリザ。

(……下着も…黒だったのか)
それは意外だったのか。予想通りだったのか。女子ってパンツの貸し借りとか普通にするものなのか。 
奴隷関係なのに一緒にお風呂入ったりするのは怪しくないか。

シアナには…解らなかった……

152: 名無しさん :2017/03/12(日) 17:06:06 ID:???
「さて、いい?アンタはリザに解放されそうになったら『そんな危険な人の所に、リザちゃん一人で行かせるわけにはいかない!』みたいなこと言って同行しなさい。そしてライラとの戦闘中、ここぞというタイミングで裏切ってリザを敗北に導くのよ」
「……はい……サキ様……」
エミリアを自分の部屋に連れ込んだ後、サキはサイズの合う下着を適当に見繕ってから隷属の刻印を発動させた。エミリアは虚ろな目でサキの命令に頷いている。

「……ぷ。ねぇ、せっかくだから、さっきリザに言ってたこと、私にも言って?」
「はい……私は美しきサキ様の奴隷……!強い心を持つサキ様に仕え、抜群のプロポーションを誇るサキ様に奉仕し…完璧美少女すぎる工作員のサキ様に忠誠を誓っています……!」
「っぷ、くくく……お腹痛い……!じゃあ、一旦『戻って』いいわよ」
サキのその言葉と同時に、エミリアの瞳に生気が戻る。

「それじゃあリザさんたちの所に戻りましょうか、エミリアさん」
「あ、はい!」
(このサキって人もいい人だなぁ……こんなんじゃ私、トーメント王国と戦いたくなくなっちゃうよ……)

???

とある怪しげな掲示板のログ……

【アホ女が首輪も付けずに捕虜連れ出してヤバい邪術師の住家に向かったったwww】

1 : 以下、名無しにかわりまして邪2オタがお送りしますID:kusabi
マジウケルwww

2 : 以下、名無しにかわりまして邪2オタがお送りしますID:rairarai
kwsk

3 : 以下、名無しにかわりまして邪2オタがお送りしますID:kusabi
あー、名前は伏せとくけど、金髪碧眼の暗殺者が有名なガチレズ邪術師の所へ攻め込んだの

4 :以下、名無しにかわりまして邪2オタがお送りしますID:Mobu
ちょwwそれこの掲示板にいる人間に対しては伏せる意味ないじゃないですかwww

5 : 以下、名無しにかわりまして邪2オタがお送りしますID:rairarai
スマソ、用事できた(*'▽')

6 : 以下、名無しにかわりまして邪2オタがお送りしますID:Mobu
>>5特定した

7 : 以下、名無しにかわりまして邪2オタがお送りしますID:kusabi
しかもその女、連れ出した捕虜がウチに操られてることに気づいてないwwwばくわらwww

8 : 以下、名無しにかわりまして邪2オタがお送りしますID:Mobu
有志の方(特定してないとは言ってない)の動画投稿、期待して待ってます!こないだの風の美少女ちゃんの動画最高でした!

153: 名無しさん :2017/03/12(日) 18:21:15 ID:???
「え。ええと……リザ。その…ドンマイ……」
「……………。」
エミリアがサキに連れていかれた後、リザと共に取り残されたシアナ。
(…ううん…この空気の中で『あの話』するのは、なんかイヤだけど…仕方ない)
…ここまで状況がひどい事になる前に、彼がさっさと立ち去らなかったのは単なるスケベ心からだけではない。

「…ところで、アイナの事なんだけど……」
「うん…今回は、シアナと組むんでしょ……頑張ってね。私にはよくわからないけど、影ながら応援してる」
(いやいや、そういう話じゃないんだ。ていうか『頑張って』って何だ!?『応援』ってどういう意味だ!?)
シアナがリザにしておきたかった話とは…もちろん、アイナの消える能力の事だ。
脱走したアイセを追跡した時。能力を使って『消えて』いる間……アイナは周りにいた者の記憶からも消えてしまった。
本人にも自覚は無いらしく、その現象に気付いているのはシアナただ一人。
アイナの能力が今後どうなるのかは予測不能だが、本来のパートナーであるリザには早い内に話しておくべきだろう。

「…アイナ……え?…誰の話だって?」
「え………誰って、それは………いつも、リザとコンビを組んでる……」
……だが、この時。
間の悪い事に、アイナはシアナとリザが二人っきりでいる所を目撃してしまい……姿を『消して』二人に接近していたのだ。
(あれはシアナと、リザちゃん…盗み聞きなんてはしたない真似、乙女のする事ではありませんけど…
…気になって仕方ありませんわ…一体何を話してるのかしら?)

「私とコンビって…一体、誰の話?…私、ずっと一人で戦ってたはずだけど」
「え!?…あれ?……いや、…あの。だって…」
(えええ!?…り、リザちゃん…何を言ってるんですの!?)
「おかしいな……何か、大事な……言わなきゃいけない事が、あったような……」
「……用事は、それだけ?…エミリアと私の『アレ』を見てもまだ帰らないくらいだから、よっぽどの用かと思ったのに」
(あっさり言いくるめられてるシアナもシアナですけど…リザちゃん、一体どうしちゃったんですの…!?)
なお、アイナは残念ながらその『アレ』は見ていない。
首を傾げながら立ち去るシアナを見送り、リザは今までの戦いを思い出していた。

「エミリアを捕らえた時も……私は、一人で…戦った…」
…リザの記憶では、そのはずだった。しかし……細かい部分の記憶は、まるで霧がかかったようにはっきりしない。
兵士たちが裏切って兵器工場に立てこもり、エミリアと一緒に、助けに…『誰』を助けに?
そもそも、何がきっかけでエミリアと知り合ったのか…どうしても、思い出せない。

「だから…エミリア抜きでライラと戦う事になっても…いつも通り、一人に戻る、だけ……」
…それなのに、どうしてこんなに心細く感じてしまうのか。
今までどのように戦い、危険を乗り越え、辛い時にどうやって立ち直って来たのかが…思い出せない。
ノワールの邪術の前に手も足も出ず、いいようにいたぶられた時も…
(二人で戦ってれば、負けなかったのにって………でも…二人って、一体、誰と…)

「リザちゃん…?…ねえ…リザちゃん……」
…突然背後から声が聞こえ、その途端リザは全てを思い出した。そして、振り返ると……
「…さっきの話…一体、どういう意味ですの?」
浮かんでいるのは怒りか、哀しみか…
今までに見たことがない程冷たい表情を浮かべたアイナが、そこに居た。

「…アイナ…!?……えっと、あの…ごめん…忘れて、た…」
「いっ…いくらなんでもひど過ぎますわ!そりゃ、リザちゃんに比べればアイナなんて弱っちいかもしれませんけど…
それでもアイナは、ずっとアイナは…リザちゃんと……それなのに、リザちゃんは…」
「ご…ごめん、私…どうかしてた…」
…どうしてリザはアイナの存在を忘れてしまっていたのか…もちろん普通ならあり得ない。
だが、それが他ならぬアイナの能力のせいである事を、リザも、そして当のアイナ本人も知らない。

「…陰では、私なんて足手まといだから、いてもいなくても同じだって…そう思ってたんですのね。
…もう知りませんわ!エミリアでもサキでも、誰とでも好きにすればいいですわっ!!」

154: 名無しさん :2017/03/12(日) 19:48:08 ID:???
「そんな危険な人の所に、リザちゃん一人で行かせるわけにはいかない!」

城下町を離れ、人の目につかなくなった所で、リザはエミリアを解放する。
そこでエミリアは、一言一句違わずサキの命令通り、リザに協力を申し出た。

「駄目よ。危険すぎる……それに、この戦いはエミリアには関係ない」
「そ、そんな……私、リザちゃんの事、助けたくて……このチョーカーがあれば。
…ううん、それさえ必要ない。リザちゃんが一言『来て』って言ってくれれば…!」

エミリアの首には、教授の作ったチョーカーが巻かれている。
スイッチを入れれば、命令に絶対服従するようプログラミングされているのだ。
アイナをひどく傷つけてしまい、精神面でボロボロになっていたリザは、思わず心が揺らぎかけたが…
リザは首を横に振ると、なおも食い下がるエミリアを優しく抱きしめた。

「エミリア…ありがとう。でも…こんな事に、貴女はこれ以上関わっちゃいけない……元気でね」
今のリザにとって、エミリアの存在は最後の心の拠り所でもある。
そんな彼女を危険な目に遭わせる事は、絶対に出来なかった。

…だが。
「…ああもう。ホンット、めんどくさいわねぇ…いいからさっさと私を連れて行きなさいよ。」
サイッコーのタイミングで背中刺してあげるから」
「……え」
…エミリアは首のチョーカーを外すと、リザの首に巻き付け…スイッチを入れた。

「…ほら。言ってごらんなさい?」
「そ、それは……それだけ、は……っあ、…いぎ、ぅ…!!」
「……無駄よ。そのチョーカーには逆らえない。極上の苦痛と快楽の電撃を、脳内に直接送り込む…らしいわよ。それ」
「エ、ミリア………一緒に……きて…」
「一緒に来て?…ご一緒させてください、でしょ?…それに呼び捨てじゃなくて、エミリア様…いいえ、どうせなら」

「…は、はい。私は美しきエミリア様の奴隷……!強い心を持つエミリア様に仕え、
抜群のプロポーションを誇るエミリア様に奉仕し…完璧美少女すぎる大魔術士のエミリア様に忠誠を誓っています…
…どうか、この私をエミリア様の行く所にお供させてください…」

「はい、よく出来ました…」
ぱん、とエミリアが手を一つ叩くと、二人の記憶は戻り……
リザはエミリアの人格が変わっていた事も忘れ、自分がチョーカーを付けている事も気付かなかった。
エミリアも、隷属の刻印によって植えつけられた闇の人格の事を覚えていない。
二人が一緒にライラの住む森へ向かう、という結論だけが残った。


【本人】アホ女が首輪も付けずに捕虜連れ出してヤバい邪術師の住家に向かったったwwwその14【降臨】

285 : 以下、名無しにかわりまして邪2オタがお送りしますID:rairarai
楽しみ過ぎて魔物100体作ったwwwww
材料足りないwww

347 : 以下、名無しにかわりまして邪2オタがお送りしますID:kusabi
某所の森の近くに魔物の材料になりそうな死体1000体捨ててきた

412 : 以下、名無しにかわりまして邪2オタがお送りしますID:noir
もうコテハン付けろお前ら


「ちなみに到着予定は12時間後、東側入り口A-3地点となっております…と」(カタカタ)
…そこまで書き込んだところで、サキの携帯に着信が入った。
「もうめんどいから電話でよくない?www」という、ライラからのメッセージ。至極もっともである。
邪術のライラが裏でトーメント王国と繋がっている事は、リザ達十輝星クラスにも殆ど知らされていないが…
サキがその連絡員だったのだ。

「いやー、ライライ…一年越しのリクエストが実ってよかったねぇ。刻印つけたら、私にも弄らせてね」
「ふふふ…ありがとう、クッシー。やっぱり持つべきものは…」
「「友達よねぇ~~♪」」

リザとアイナ、そしてエミリア達とは全く違う形の…
どす黒い何かでつながった絆が、そこには確かにあった。


  • 最終更新:2018-01-21 23:19:41

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