13.05.全員集合

140: 名無しさん :2017/03/09(木) 23:02:59 ID:???
「ノワールの時は顔の形相変わりすぎてて分かりませんでしたけど、よく見たら鏡花さんじゃないですか…」
「なに、このおっぱい姉ちゃんと知り合いだったのか?」
「まぁ、大して親しいわけでもなかったんですがね」
一応『元』仲間になるのだろうか。異世界人の彼女とは顔見知りではあるが、どちらかというと自分の知り合いというより姉―――フウコの友達という感覚が強い。

「あー、僕はルミナスを裏切った身なんで、この人が目を覚ますと色々面倒なことに……」
「まぁ、めんどくさいしとりあえず地下牢に放り込んでおこうぜ」
「そうですね」


「今度こそ油断せずにきっちり仕留めましたわ!綺麗な顔してますでしょう…ウソみたいでしょう…死んでるですよ、これで」
「死んでない死んでない、双子の兄にバトンタッチさせようとするな」
「やっぱりシアナのツッコミはキレがありますわね!流石たっちゃんとかっちゃんを超えるアイナのソウルブラザーですわ!」
(さぁシアナ!そこはたっちゃんと南ちゃんじゃないのか…みたいな感じでがっかりしてみなさいな!)

「さっきまでポロポロ泣いてた癖に調子良いなぁ…とにかく、もう一度牢屋に放り込んでおこう」
(すっかり調子が戻ったみたいだな…よかった)
「そ、そうですわね!」
(あれぇ?)


(ククク…エミリアはもう私の奴隷…捕虜だから表立って私の自由に使うことは難しいかもしれないけど、それに関しては舞を使えばいい。……こうなればアイセも手に入れたいくらいね)

地下牢に続く階段の前で悪い笑みを浮かべるサキ。その気になれば今すぐにでもエミリアにリザを襲わせることができる。
(ま、そんな短絡的なことはしないけどね…もっと効果的なタイミングで、あのクソリザをどん底に落としてやるわ)
そんなサキの前に……。


「お」
「あ」
「む」
「あら?」

市松鏡花の足をそれぞれの片手で片足ずつ持って引きずりながら運び、空いている手でコーラを飲んでいるアトラとフースーヤ。衛兵にアイセを運ばせながら、なんか心なしか距離が近い気がするシアナとアイナが現れた。

141: 名無しさん :2017/03/10(金) 02:37:30 ID:???
「あれ。アトラ、フースーヤ…今まで何してたんだ?ラインも未読だったし……もう、アイセ捕まえたぞ」
「あ、わりーわりー!色々あってすっかり忘れてたわ!つーかあのナントカ結界、電波も通じないんだな!」
「…ナントカ結界??…アトラたちが引きずってるのって……まさかノワールか?…一体何があったんだ?」
すっかりいつもの調子でアトラと会話を交わすシアナ。アイナは少し離れて、その様子を、遠巻きに眺めていた。
(今、みんなと話すのはちょっと気まずいですわね…透明化して、離れてましょう)

「そういえばサキさん、どうして地下牢から出て来たんですか?脱走者を追っかけてたんじゃ?」
「え、ええ。何か手掛かりが残ってないかと思って…でも、必要なかったみたいですね。シアナさん、流石です!」
かなりまずいタイミングで仲間と鉢合わせになったサキだが、フースーヤからのツッコミをとっさの機転で何とかやり過ごす。
「いや、途中ちょっとヒヤっとしたけど…まあ、こっちも色々あってさ」
(シアナは…アイナのこと、どう思ってるのかしら……あああ、なんか改めて意識しだすとモヤモヤが止まりませんわ…!)
のぼせすぎて会話の内容が耳に入って来ないアイナ。
…いや、アイナだけではない。誰もが気付かないうちに、この場には異常な現象が起こり始めていた。

(…ていうかシアナ、すっかりいつも通りですわね……もしかして、アイナが一人で空回りしてるだけですの…?
…ああもう、めっちゃ恥ずかしい…もういっそのこと、跡形もなく『消えて』しまいたいですわ……!!)
「サキもいなかったって事は…シアナ『一人で』魔弾のアイセを捕まえたのか。やるじゃん!…ま、俺には及ばないけど!」
「はいはい、そりゃどうも…(……ん?)」
「僕としては、普段アトラさんとコンビ組んでるだけでもソンケーものですよ…この人と一緒に居たら身が持たないんで、
最初の予定通り、明日からリザさんと組ませてもらえませんか?」
「…ああ、済まなかったフースーヤ。本当に苦労かけたな。(なんか、違和感が…)」
「おい!どーいう意味だそれ!?」

…アトラ達との会話を終え、捕らえた脱走者を衛兵に預けたシアンは……廊下で一人、頭を抱える。
(何だか……おかしいぞ。さっきは、ヨハンの部屋に、みんなでリザの様子を見に行って…
待て待て。みんなって、誰と誰だった?僕とアトラと、サキとフースーヤと…その後脱走者騒ぎが起きて、それから…)

「……ナ?……シアナ!?…ねえ、聞いてますの!?」
「え?……うわあ!?……あ、アイナ……アイナ、だよな?……い、今まで、どこに……」
「ずっとここにいましたわよ?…ちょっと『消えて』ましたけど。…まさかアイナの能力(こと)、忘れてたんですの?」
(…完全に、忘れてた。アイナの存在(こと)……)
今の今まで、アイナの存在が『記憶から』完全に消えていた。
自分だけではなく、アトラ達にも同じ現象が起こっていたに違いない。

(一体、何が起こったんだ?…)
考えられるのは…シアナの『穴を開ける』能力が空間や次元に穴を開けられるようになったのと同様に、
何らかのきっかけで、アイナの『消える』能力が成長したと言う事。
成長と言うより進化……あるいは変異、と言った方が適切かもしれない。

(…アイナは、自分で気付いてないのか…?)
…暗殺者の能力としては、これ程恐ろしい物はない。
なにしろ記憶から消えてしまえば、相手は見えない敵を警戒する事すらできないのだから。
だが、味方や仲間の記憶からも消えてしまうのは…あまりに危険すぎる。

「…シアナ?…どうして急に泣き出すんですの?……まさか、さっきのお返しなんて言うんじゃ…」
「え。あれ…ち、違うんだ。そうじゃなくて……」
そして…アイナの事を忘れていた間のあの空虚な気持ちが、シアナには何より恐ろしかった。
シアナの心の中で、アイナの存在はいつの間にか大きくなっていた。(それについては認めるしかない)
もしかすると、これから更に大きくなって…いつしか何物にも代えがたい存在になるのかもしれない。

だがその想いも記憶もある日いきなり失われ、永遠に心に『穴』が開いたままになってしまったら。
今回はアイナが姿を現すと同時に、シアナの記憶も戻った。だが今後更に成長したら、一体どうなる…?

142: 名無しさん :2017/03/10(金) 16:48:52 ID:???
(流石に考えすぎか…?元々の『消える』能力だって、アイナの意思で自由にオンオフできたんだし…でも、万が一ってこともある)
「アイナ」
シアナは真剣な瞳でアイナを見据える。

「な、なんですの?」
(ちょっとちょっとちょっと顔近いですわー!ていうかそんなに見つめられるとドチャクソ恥ずかしいですわー!)
「自分の力に、呑み込まれるなよ」
「…?はい?」
「僕は…君の存在そのものまで、消えて欲しくない」
「えーと?」

何を言っているのかよく分からなくて小首を傾げるアイナと、ちょっと臭い台詞だったかなと赤面するシアナ。青臭い青春モノみたいな空気が、2人を包む。



(これは面白いモノを見たわね…まさかあのクソレズのアイナがシアナとねぇ…)
そんな2人を物陰から見ているのはサキ。友情を破壊する離反工作を得意とする彼女は、人間の感情の機微に敏感だ。そんな彼女にしてみれば、シアナとアイナが互いを意識し始めているのは少し見ればわかる。

「舞さん、私の部屋掃除しといてください」
「サキ様…?それは一向に構いませんが、一体何を?」
「リザさんを、私の部屋に呼びます」


「ということで、見ちゃったんですよ!アイナさんとシアナさんがなんかイイ感じになってるのを!」
「……あのアイナとシアナが?」
「そう、あのアイナさんとシアナさんがです!」
ガールズトークに花を咲かせている…だけでは当然ない。これはリザを貶めようとするサキの卑劣な作戦だ。

「そこで相談なんですけど、アトラさんとフースーヤさん、シアナさんとアイナさんの臨時チームをしばらくそのままにしておいて、あの2人の仲が進展するか観察…もとい、見守りましょうよ!」
「…細かい人員配置はシアナに任されている。それを私に相談されても…」
「もうリザさんったら!シアナさん本人にアイナさんとの進展を見たいからチームそのままにしようなんて言えるわけないじゃないですか!フースーヤさんはツッコミ疲れるから私と組みたいみたいですし、アトラさんは当然リザさんと組みたがるでしょうから、あえて私とリザさんが組めばあの二人はコンビ継続するでしょうし、そうなったら必然的にアイナさんとシアナさんもコンビ継続じゃないですか!」
(…今日のサキはよく喋る)

ちなみに、サキはリザを貶めるの関係なしに本気でこの状況を楽しんでいる。他人の感情を弄ぶのが好きなサキの性格は恋愛面でも発揮される。カップルをくっつくように仕向けたり、逆に別れるように仕向けたりするのが大好きなのだ。青臭い2人の青臭い恋愛劇を見せられたら、ゲラゲラ笑い転げること間違いなし。

「でも、サキは戦闘向きじゃない。それに、さっきヨハンから聞いたけど、次の相手はドロシーがやられたあの邪術のライラ。私と組んで前線に行くのは…」
「確かに私は潜入工作員寄りで、リザさんについて行ったら足手まといになるかもしれません。でもそれなら、前線には私の指揮下の人間を送ればいいんですよ!」
「指揮下の人間?」
サキの指揮下の人間というと、今も部屋の外で待機している柳原舞であろうか。

「教授から預かったこのチョーカーを使えば、捕虜を逃げ出す心配なく使役できます。王様との交渉次第で、先ほどのアイセのような実力者をリザさんと同行させることも―――」
「…!なら、連れていく捕虜は、私が選んでも構わない?」
「もちろんですよ!あ、このチョーカーは付け外しが簡単で、こちらの指示に従うとはいえ別に意思のない人形になるわけでもないので、話し相手にもなりますよ!」
(かかった!リザは間違いなく、エミリアを選ぶ!)
(邪悪な邪術師の討伐なら、エミリアも嫌ではないはず…サキには悪いけど、戦闘中に壊れたという体でチョーカーを外して、エミリアをガラドまで逃がす!)

互いに相手には言えない事を考えてはいるが、その内容は、片方はどこまでも優しく、片方はどこまでもどす黒かった。


  • 最終更新:2018-01-21 23:16:38

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