13.01.アイセ脱走

121: アイセの入ってた樽に入りたいマン :2017/03/05(日) 17:52:23 ID:???
「はぁ、はぁ……衛兵がバカな男で助かったわ。こんなところ早く出ないと!」
24歳の色気と巧みな舌技で牢屋を脱獄したアイセ。だが奪われた服や装備は見つからず、武器は所持していない。
肩まで届くセミロングをふわふわと揺らしながら走っていると、すぐそこで衛兵の声が聞こえた。
「ま、まずい…!」
衛兵が角を曲がればこちらの道に入ってしまう。アイセはすぐさま近くにあったあった樽の中へと身を潜めた。

「ちくしょう。ライトのやつが逃がしたせいで、俺らがこんな脱獄犯探しに駆り出されちまったぜ。」
「まあ、気持ちはわからんでもないがな……あの子、アイセだっけ?めちゃくちゃ可愛かったぜ。髪の長い清楚な美少女って感じで。」
「マジ?完全にあいつのタイプの女の子だったわけか……ちくしょう、少し羨ましくなってきたぜ!」
「ま、いい気持ちになったとはいえ、あいつは王様か十輝星に殺されることになるだろうよ。」

(ふぅ……この容姿で助かったわ……)
見た目とは裏腹に、実際はかなり性欲の強い彼女。だがそのギャップに男は弱いらしい。
「ところで、包囲網ってどうなってるんだ?」
「あぁ、それがよぉ……今ルミナスに壊されたところの改修中だろ?指揮系統も混乱してて、ぶっちゃけザルなんだよ。正直今アイセがどこにいるのか、検討もつかねえみたいだ。」
「なるほど……俺らの担当のここは牢から近いから、もういねえんだろうな……」
(嘘……あたしまさか迷い迷って戻ってきちゃったの……?)

樽を少し開けて様子を伺うと、衛兵たちが地図を持って話し合っていた。
(あれは……この城の地図?よし、奪い取ってやる!)
バコン!
「な、なんだ!?樽から美少女が!!」
「ええっ!?ま、まさかこれはモニ◯リングかぁ!?」



「ふう。これで道はわかったわ。」
戦闘のプロである彼女にとって、雑魚2人など不意打ちすれば余裕だった。
「ぐが……強い……」
「ほ、骨がぁ……!動けねえ……!」
「お、この扉の先は倉庫なのね。よし、あんたらはこの樽に入れて、倉庫で大人しくしてもらうわ。殺されたくなかったら抵抗するんじゃないわよ……!」
「ひ、ひぃ……!」
アイセは男2人を自分の入っていた樽に押し込むと、衛兵の持っていた鍵で倉庫を開けた。
(お、ここには武器もいっぱいあるわ。なにを持って行こうかしら……?)

122: 名無しさん :2017/03/05(日) 18:30:38 ID:???
「ま、魔弾のアイセって、確かヨハン様が捕えた…」
(無能が!せっかくヨハン様が捕えた反乱分子を逃がすなんて、この無能がぁああ!!)
そんな生々しい話目の前でされちゃイヤン……な感じで顔を赤らめながらサキが呟く。顔が赤い本当の理由は無能な衛兵に怒っているからだが。

「…でも、武装解除はしてあったんですよね?」
(馬鹿な衛兵だなぁ…でも、自分の欲望に忠実なのは好きだけどね。堅苦しいルミナスと違って)
「は!魔弾のアイセが元々所持していた魔銃等の武装は武器庫に保管されております!仮に武装していても精々、色香に惑わされて男根を噛みちぎられた衛兵の装備を奪った程度かと思われます!」
「なるほど!馬鹿な衛兵が地図を奪われて倉庫の武器を取られでもしない限り、相手は雑魚ってことだな!」
「だから一々そんな生々しい報告しなくていいって…そしてアトラはなんでそんなピンポイントなボケをするんだよ」
「そうですわね!不意打ちされでもしない限り衛兵が丸腰の女に負けるなんてあり得ないですわよね!」
「だからなんでそんな不穏なボケをするんだよ!ああもう、ツッコミが追いつかない…フースーヤ、君もツッコミ役に回らない?」
「……キャラ被るんで嫌です」


「選り取り見取りで迷っちゃうわね、とりあえず銃は欲しいところだけど…」
アイセは倉庫の武器をルンルン気分で物色していた。流石は王城の倉庫だけあって、武器だけでなく食料や貴金属もあったが、最優先は脱走するための武器だ。

「流石に私が元々持ってた魔銃はないか…」
結局、特に魔法がかかっているわけでもない普通の銃と、煙幕系や閃光系を中心に手榴弾を複数、それにサバイバルナイフを選ぶ。
バックパックに最低限の食料や替えの衣服を詰め込み、準備は完了だ。欲を言えばもっと色々物色してたくさん貴重な物を持って行きたかったが、流石にこの状況で欲をかけば自分に待つのは破滅のみだ。
自分の実力に自信があるのも相まって、必要以上の重装備を避ける。

これは意味のないIFの話だが、もし彼女に五人の戦士程の運命の加護があれば、彼女が元々持っていた魔銃や柳原舞の魔法のブーツ、またはそれに準ずるような魔法の装備を手に入れらたかもしれない――――

123: 名無しさん :2017/03/05(日) 21:55:32 ID:???
「にしても、こんな時に脱走者なんて面倒だなぁ。全員で追跡して、さっさと捕まえようぜ!」
「そうだな…アイナ、とりあえず今はフースーヤとコンビを組んでくれ」
王から十輝星に対して下される指令は絶対。だが、十輝星の間での細かい人員調整は、シアナが一任されていた。
では、シアナが十輝星のリーダーなのだろうか?…否。
曲者揃い、というより曲者を集めて作ったこのチームには、王以外にリーダーと呼べる者は存在しない。
…単に、そういった細かい調整ができる者がシアナ以外に居ないから、という理由である。

「え~?愛しのリザちゃん以外に、アイナのパートナーが務まるとは思えないですけど…仕方ないですわね」
「…本当にすまない。我慢してくれ、フースーヤ」
「は、はあ…僕は構いませんけど」
「ちょっと!?それ、どーいう意味ですの!?」
「…さっきのリザの様子だと刻印を消すにはまだ時間がかかりそうだし、すぐ戦線に復帰できるかどうかわからない。
 だからその間、フースーヤにアイナのサポートを頼もうと思ったんだ…」
「…なるほど。今アイナと組めば自動的に、邪術のライラとも戦う事になりますものね。
そういう事なら仕方ありませんわ!この超絶美少女アサシンアイナちゃんのサポート、よろしく頼みますわよ!」
…アイナとの相性を考えると、アトラを組ませるのは色々不安が残るし、サキには教授の依頼がある。
これはいわゆる消去法、そしてフースーヤの未知の可能性と胃腸の強さに賭けた、苦渋の選択であった。

「ちょぉ~っと待った!。フースーヤは、魔法少女の国から脱走してきて、もう女にはウンザリしてるんだろ?
それなのにまた女と組まされるのは嫌なんじゃないか?…しかも、サキならまだしもアイナと!」
……ところがそこへ、アトラが唐突に口を挟んできた。
「いや、わかってるよ。だからフースーヤには本当に済まないって…」
「え!?だからそれ、どーいう意味ですの!?」
「ていうか脱走はしてないですよ!?捕らえられたんですからね、トーメント王国に!」
…今はその事を感謝こそすれ恨んではいないのだが、だからと言って事実をすり替えるのはどうなのか。

「そうだっけ?…まあそれよりフースーヤ。どうせなら俺と組もうぜ!…んで、アイナとシアナが組めばいいじゃん」
「えっ……う~ん。確かにそれは盲点だったかもしれないけど…」
今のアイナに何らかのフォローが必要なのは事実だが、その為にアトラとシアナのコンビを崩すのは…
と言うより、アトラが自分以外の誰かと組んで、果たしてやっていけるのか。
シアナはしばし考えて……

「……わかった、今回はそれで行ってみよう」
…フースーヤの未知の可能性と胃腸の強さ。そしてアトラと組む事による、ツッコミスキルの成長に賭ける事にした。

「あの。ところで、私なんですが…」
話がほぼまとまった所で、今度はサキが口を開いた。新人のお守りから解放された事を内心喜びつつ。
そして、リザがいない間の配置転換という絶好のチャンスを最大限生かすために。
「…ああ、サキの方は…ごめん、もうしばらく一人で頼むしかないな。何にせよ、人手不足なんだよなぁ…」
「ええ、その事なんですが……実は一人、追加の人員に心当たりが…」

…かくして、王下十輝星の中で大幅な配置転換が行われることとなった。
シアナとしては、脱走者アイセの追跡と言う臨時ミッションのための一時的な組み分けのつもりだったが…
様々な誤算が積み重なり、彼ら自身の運命が大きく動くこととなる…

  • 最終更新:2018-01-26 01:07:52

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード