12.01.リザとノワール1

103: 名無しさん :2017/02/26(日) 19:29:26 ID:???
「王様…王下十輝星に、推薦したい人がいます」
「…ほう?」
…そう申し出たのは、十輝星の一人、「スピカ」のリザだった。
普段無口な彼女が、何かを主張するのは極めて珍しい。しかも相手は、あの「王」である。
パートナーであるアイナを始め、他の十輝星達も興味本位で様子を見について来た。
やって来た場所は……

(アイナ…推薦したい人って誰だよ?お前は知ってるんじゃないのか?)
(さあ…リザちゃんの考えてる事って、時々アイナにも読めない事があるんですのよ。そこがまたカワイイんですけど!キャッ☆ミ)
(…あれ?舞ちゃんがいる。教授の実験台にされたんじゃなかったっけ?)
(ここって…地下牢ですよね。捕虜を捕らえておくための。過去に捕らえた人物ですか?)
(………。)

「……んで、ココにその人がいるって?」
「はい。…任務の都合上、一時的に行動を共にしましたが…実力は申し分ないかと」

強固な石壁と分厚い鉄扉による特殊牢。その内側は、魔力を遮る特殊合金で覆われている。
強力な魔法使いを閉じ込めておくための牢で、捕虜たちの苦痛の呻きが響き渡るこの地下牢においても、
一際物々しい雰囲気を醸し出していた。

閉じ込められているのは、極寒の地ガラド出身の魔法使い「エミリア・スカーレット」。
彼女を捕獲するための作戦中、同行した兵士たちが全員殺された事などから、
拷問吏や兵士達には決して立ち入らない様言い含めてあり、食事もリザ自身が自ら運んでいた。

(直接的な破壊工作は嫌がるだろうけど、エスカみたいに、みんなのサポート役なら…
それに、エミリアをこれ以上ここに閉じ込めておくわけにもいかない)
これまでにもできる限りの説得はし、今朝の食事を運んだ時、ここに王を呼ぶことは伝えてある。
事前にアイナに相談し、エミリアの名を出して
「誰リアでしたっけ?あ、カリスマガードの人?」
と言われた時には軽い眩暈を覚えたが…ともかく、後は交渉次第だ。

しかし。扉を開いてみると…中の様子がおかしい。人の気配が二人分いる。
話し声はほとんどないが、代わりに何かをしゃぶる様な水音と…二人の少女の、くぐもった呻き声が響いていた。

ちゅぷっ……くちゅっ……
「…………んっ…む、ぐっっ……あん……」
明かりを灯け、中に踏み込むリザ。そこに居たのは、エミリアと…彼女の唇を強引に奪い、貪るように魔力を啜るノワールだった。

「……っ…あ……っ、……り……ザ…」
「…エミリアっ!!?…しっかりして…貴様っ!!エミリアに何をっ!!」
「ククク…なんじゃ小娘、接吻も知らぬのか?…少し小腹が空いたものでな。なかなかの魔力の持ち主じゃったぞ」
直接見たことはないが、噂に聞いたことはあった。…対象から直接を魔力を吸引する、邪術の一つである。
吸われた者の身体には魔力の代わりに大量の快楽が流し込まれ、一度に大量に吸われれば廃人化する恐れもあると言う。

「おっと失礼、食事中だったか。…リザ、推薦したい人ってもしかしてノワールか?
 まあ実力はともかくとしてアレは無理だろ。なんせワタシの言う事聞かn」
呑気に笑う王の横を、黒い風が通り過ぎる。
…リザがナイフを抜き、ノワールの首めがけて斬りかかったのだ!

…ガキィィィン…!!
けたたましい金属音が地下牢内に響き渡る。
リザのナイフが閃光のごとく閃き、ノワールの首を瞬時に両断……する事はなかった。
(止められた!?……髪の毛、一本で…!?)

「…狂王よ、殺して構わぬか?」
「え~?…それは困るなぁ。リザにはこの後、仕事を頼むつもりだし。
 キミが代わりに十輝星として二人分働いてくれるんなら話は別だが」

「クックック…それは御免蒙る。では、壊れぬ程度に仕置きさせてもらうとしよう」
ノワールの瞳が妖しく輝くと、影がリザの足元へと伸び、影から現れた無数の黒い腕が、リザの脚を捕らえる。

「…闇に、沈め」
異様な感覚と共に、リザの周囲の時間の流れが鈍くなっていく。
アイナやアトラが何事か叫んでいるのが見えたが……気付いた時には、リザの視界は暗闇に包まれていた。

「なんかよくわからんが…勧誘は失敗、って事でいいのかな?
…アイナ、リザが『戻ったら』伝えておいてくれ。お前たちの次のターゲットは…『邪術のライラ』だ」

105: 名無しさん :2017/02/26(日) 21:24:40 ID:???
「くっ……ここは……!」
リザの視界に広がったのは城のホールのような空間。周りの壁はすべて異空間らしく闇に覆われている。
「王下十輝星、スピカの星位のリザか……王から聞いておるぞ。十輝星の中でもズバ抜けた暗殺術を誇る実力者だとな…」
ノワールの声が空間に響く。姿は見えないが、こちらの様子はどこからか見ていいるようだ。
「だが妙じゃな。争いは好まない性格と聞いているが……なぜあの王に仕えている?なにか弱みでも握られておるのか?それとも…あの狂王に生き返らせてほしい者でもおるのか?」
「……あなたと話をするつもりはないわ。わたしと戦うつもりなら、早く姿を見せなさい。」
ナイフを構え直し、全方位に気を配るリザ。暗殺者の気配察知能力は、ノワールがどこから襲いかかってきてもおかしくないと判断した。
「クックック……せっかちな奴じゃ。殺さぬ程度に痛めつけたあと、その小さな唇に接吻でもしながらゆっくり聞かせてもらうとするか……!」
ノワールの言葉が終わった瞬間、ホールの地面から小さな水溜りほどの闇が2つ広がった。

「キシャアアアアアア!!!」
「ガルルルル……!!」
闇溜まりから現れたのは、1つ目に唾の生えた魔物と双頭の狼だった。
「ただの魔物じゃなさそうね……」
「察しが良いな。こやつらはわらわの闇魔法で凶暴化した闇獣じゃ。困ったことには、とかく人間の女の肉が好きな奴らでな……!」
リザを見て夥しい量のヨダレをだらだらと垂らす闇獣たち。その姿を見れば、ノワールの言葉がなくとも理解することは容易だった。
(趣味の悪い……こんな奴らに、わたしは負けない!)

恐ろしい魔物に臆することなく、リザはその碧眼に2体の獣を見据えて走り出した!

106: 名無しさん :2017/02/27(月) 01:12:13 ID:AoyyPPAw
「キシャアアアアアアッ!」
翼の生えた魔物が空高く舞い上がり、リザから距離を取った。
「ガルルルルアアァァ!」
もう1人の闇獣──狼の顔が2つ付いている双頭の獣は、まっすぐ向かってくるリザに負けじと向かってくる。
「さぁ、闇獣の中でもトップクラスの凶暴さを誇るこの2匹相手にどう闘……」
ノワールの言葉は、血を吹き出して倒れている闇獣たちを見て止まってしまった。

「トップクラスが、この程度……?」
神速で狼の目を潰し、ナイフに仕込んだ弾丸で1つ目を落としたリザ。
暗殺術を極めた彼女にとって、この程度の相手であれば切り札のテレポートを使うまでもなかった。
「もうこの空間から解放してくれないかしら。わたしはあなたと遊びたくないの。……またエミリアに変なことするっていうなら、別だけど。」
「くっ……このままでは返さんぞ。わらわが直々に相手をしてやろう!」
リザの前にまたも闇溜まりが現れ、そこから出て着たのは……
長い黒髪と服の上からでもわかる大きな乳房が特徴的な、鏡花の体を乗っ取っているノワールだった。



「きゃあああああああ!!!アイナのリザちゃんがああああ!!!」
「王様っ!リザが、リザがノワールにお持ち帰りされちまったよぉっ!」
リザが闇に落とされたのを見て騒ぎ始めた2人を、王はめんどくさそうに見た。
「しょうがないだろ。先に喧嘩売ったのはリザの方なんだし。それに殺しはしないから安心しろ。」
「うぅ……ホントですの……?アイナのリザちゃんに変な傷がついたら困りますわよ……」
「まぁ傷がついたら教授に直して貰えばいいさ。それに……ノワールにコテンパンにされてボロボロなリザも見てみたいじゃないか!ヒヒヒ!」
意地悪く笑う王の言葉に、アイナの顔はさらに青くなったが……アトラの顔はそれとは逆にぱあっと明るくなった。
「あ、お、王様。もしかしてだけど~もしかしてだけど~、リザのふ、服も破けたりするのか!?」
「あぁ……ノワールは百合っ気があるから、リザみたいな美少女は裸にひん剥かれちゃうかもなぁ……」
「うおおおおおおお!!!ノワールがんばれえぇっ!!」

「アトラ……僕は友人として恥ずかしいぞ……」
「ほんと…アトラはもうケーベツですわ。リザちゃんがここに戻ってくる前に、アイナがこの変態を隔離してやりますわっ!」
「うーん、男として気持ちはわかるんだけどねぇ……」

(こ、この人たち色々とフリーダムだなぁ……なんか楽しい……!)
退屈だったルミナスの日々とは真逆のトーメント王国。
フースーヤは自分がこの国に強く魅かれていくのを、肌で感じていた。

  • 最終更新:2018-01-26 01:17:11

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