11.03.居場所

102: 名無しさん :2017/02/26(日) 17:08:20 ID:???
「というわけで、ドロシーの後任のフースーヤだ。みんな、仲良くするんだぞ」
「…よろしくお願いします」

「俺はアトラよろしくな!なーんか暗い奴だな、あのフースーヤって奴。シアナは真面目で大人しいってだけで、あんなに暗い感じじゃないけどさ」
「僕はシアナ、よろしく。挨拶の場で本人の目の前で暗いとか言うなよ…」
「私はアイナですわ!新人!一つ言っておきますわ!!リザちゃんはアイナのものでありますから決して手は出さないように!はぅあ!こんな風に先輩っぽいこと言ったの初めてで気持ちいいですわー!」
「…私はリザ。アイナの言うことは真に受けなくていいよ」
「僕はヨハン。困ったことがあったら何でも言ってくれ」

色々と濃い自己紹介を受けて少し面食らったフースーヤ。

「みんな普段はこんなんだが、任務の時はとことん冷酷だ。お前が一方的に毒使おうが文句言うような奴はいないから安心しろ」
「王様…分かりました」

「フースーヤ君が入ってきたことで、危険を侵さずに相手に毒を浴びせられる。これは戦術上大きいぞ」
「毒矢は当たらなかったら意味ないけど、風なら避けようがないもんな!」
「僕の落とし穴に毒風を充満させたら、効率的に生け捕れるかもしれない」
「私とリザちゃんの暗殺コンビにとっても、フースーヤが援護してくれれば潜入しやすいかもしれませんわ!ってリザちゃん?どうしたんですの?ボーっとして?は!まさか私が新入りを評価したからって妬いてる!?」
「それはない」
(ドロシー…新しいデネブが入ってきても、私は貴女のことを忘れないからね)

「どうだフースーヤ?ルミナスとは何もかもが違うだろ?」
「ええ、そうですね…ここには、あの高潔と無駄の違いが分からない人たちがいない…」
「王様、またルミナスから引き抜いたんですか?」
「安心しろヨハン、こいつは洗脳したんじゃなくて自分から入ってきたようなもんだ」
「はぁ、それならいいんですが…」

「よし!今日は顔合わせもすんだし、城の修理には今しばらくかかる!今日はお前達城下町で羽を伸ばしてこい!新入りの歓迎会も兼ねてな!」
「よっしゃ!なぁフースーヤ、お前闘技場って興味ある?実は最近、俺が前に倒した人が闘奴になったらしくてさ」
「それを言うなら僕たちが、だろ。さりげなく手柄を独り占めするなよ…」
「ノン!そういうのはアトラが一人で行くべきですわ!それよりも、フースーヤには私の秘伝のお菓子の布教を…!」
「こらこらみんな、そんなに一遍に話しかけるなよ、フースーヤ君が困ってるだろ」
「…ふふ」
「?フースーヤ、笑ってるの?」

突然微笑んだフースーヤに、リザが尋ねる。

「ああ、とても清々しい気分だ…今まで自分を縛っていたものから解き放たれたような…それで、笑っちゃったんだ」
「…そう」
「やっと分かった…僕の居場所は、風が気ままにそよげる場所は…ここだったんだ」

□□□□


「ねぇカリンちゃん、たまに、ほんとにたまになんだけどね?フウヤは生きてるんじゃないかって感じることがあるの」
「…気持ちはわかるけど、あの王に捕まって連絡が取れないんじゃ、もう…」
「うん、頭では分かってるの。それでも、実感が沸かないんだ。弟がもういないっていう」
「フウコ…」
「ごめんね、今はそれよりも、考えなくちゃいけないことも、やらなくちゃいけないこともあるのに」
「…私らも体でも動かすか。あの2人に追い抜かされちゃ、かっこつかないしな」

身体を動かしているうちは、嫌なことも考えないですむ。鬼コーチに見つからないよう、そそくさと場所を変えてから、カリンとフウコはしばしの間、訓練中励んだ。

104: 名無しさん :2017/02/26(日) 20:10:39 ID:???
時刻は夜8時。ルミナス城の食堂にはリムリット、ウィチル、エスカ、唯、瑠奈が一堂に会して食事をしていた。
献立はルミナスの魔法農園で採れた野菜と肉のフルコース。ルミナスの魔法農薬を100%使っているらしい。
農薬と聞くと体に悪そうだが、ウィチル曰く魔法農薬は体に悪いどころか体内細胞活動を活性化する効果があり、修行で鍛えた筋肉をさらに増強する効果があるという。

「はー美味しい!このお肉はなんのお肉なんですか?」
「ルミナス魔法牧場のマジックピッグです。魔法農薬と魔法虫をたくさん食べたマジックピッグは、どの部位も柔らかくて栄養たっぷりなんですよ。」
瑠奈の問いに答えたのはルミナス軍副将のウィチル。ルミナスの政策や軍事を全て統括している、リムリットの腹心だ。
まだ8歳であるリムリットの世話係も兼任しており、実質彼女がルミナスを動かしていると言っても過言ではない。
「わらわもこれは好きじゃぞ。ヒカリお姉様はどうじゃ?美味しいかのう?」
「………あ、わたしのことか!えっと、美味しいよ。クオリティ的にはイータブリックスの料理の方が上なのに、なんか懐かしい味するんだよね……」
「な、なんじゃと…!我が国の魔法料理があの国に劣っているじゃと…!」

エスカは結局この城に居ついている。
記憶は戻らない上に、占いの力もイータ・ブリックスから離れたため使うことはできないが、幼い自分が赤ん坊だったリムリットと一緒に移る写真を見て、全てを受け入れた。
今はルミナス軍のリムリット補佐官として、ルミナスの活動に貢献している。
イータブリックスから離れてクリスタルの魔力を浴びなくなったたためか、不安定だった情緒も安定してきていた。

「…………」
「ん?唯さん、元気がないですね。どうかしましたか?」
あまり食事に手をつけていない唯の姿を確認し、ウィチルが声をかける。
「あぁ……唯はちょっと今日ライカさんに絞られすぎて、ブルーになってるっていうか……」
「ライカの奴め……あいつはいつもやりすぎなのじゃ。唯、安心してよいぞ。あいつにはわらわがしっかりとお灸を据えておく。二度と唯にそんな顔はさせないからな。」
「あ、だ、大丈夫です!ライカさんは私たちにとっても良くしてくれてるんです!わたしが……未熟なだけなんです……」
「んあっ?そ、そうなのか?……じゃが、辛い時は無理をせずわらわに言うんじゃぞ。ライカは色々と危ないやつじゃからな。」

リムリットを説き伏せると、唯はまた元気をなくしてしまった。
「……唯。無理しなくていいわよ。ライカさんのスパルタはあんたにはキツイでしょ……?」
「……………」
瑠奈の耳打ちに唯は顔を伏せる。
ライカに評価されるのは瑠奈の方ばかりで、唯には気合が足りないだのその反抗的な顔はなんだと何かしら理由をつけられて、いつも鉄拳制裁されている。
最初の頃は瑠奈と違って自分には根性がないから、それを奮い立たせてくれていると考えていたが……
何日も続くライカのスパルタ教育に、唯は最近塞ぎがちになっていた。
「だ、大丈夫だよ瑠奈……!わたしは瑠奈と違って弱いから、ライカさんはあえて厳しくしてくれてるんだと思う。」
「……唯は弱くないよ。地下闘技場で唯が戦ってくれなかったら、わたしは未だにあの王に洗脳されてただろうし……ライカさんには伝わってなくても、わたしなんかより唯の方が強いから。もっと自分に自信を持ってね。」
「瑠奈……!うん、ありがとう。わたし、瑠奈と一緒に元の世界に帰るためなら、なんでも頑張るっ!」

親友の励ましに元気を取り戻した唯の姿を、リムリットたちは温かい目で見守っていた。

  • 最終更新:2018-01-26 00:56:17

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