10.04.再会

84: 名無しさん :2017/02/19(日) 23:50:18 ID:???
「ほらほらどうしたの?ご自慢のロボットからどんどん煙が出てきてるわよ?」
飛べなくなったアヤメックに対し、舞の鎖鎌を使った斬撃と魔法ブーツの蹴り技が容赦なく襲いかかる。
「ぐっ…早すぎて攻撃が全然当たらないっ!くそおっ、このままじゃっ…!」
「早くその中から出てきなさいッ!デビルサマーソルトッ!」
「え……うあああああーーーッ!!!」

ドガァンッ!
舞の強烈な足の振り上げで、高空に吹き飛ばされたアヤメックはそのまま地面に叩きつけられた。
「そ、そんな……彩芽おねえちゃーーーん!?」
「彩芽ーーーーーッ!!!」
スバルと桜子がすぐにアヤメックに駆け寄って、コクピットの中を確認すると……
「ぐ……ぁ……」
コクピットに映っていたのは、頭から血を流したままぐったりと項垂れている……痛々しい彩芽の姿だった。
「そんな……彩芽!起きろっ!こんなところで死ぬなっ!!!」
「うわああああああああん!!彩芽おねえちゃんがああああぁぁぁあーーーーーーー!!」
「フン。なかなか面白いオモチャだったけど、どうやらここまでのようね……」

「おねえちゃん!!!彩芽おねえちゃああぁぁぁあぁぁぁぁん!!」
「ん……うぅ……?」
「…あっ!?彩芽おねえちゃん!?気がついた!?」
「ん、あぁ……いやぁいいお昼寝だったよ……」
スバルの声でゆっくりと意識を取り戻し、冗談を言い放ちながら目を開く彩芽。死んだと思ったがどうやら自分はまだまだ生きているらしかった。
「あ……アイツは……?」
「桜子おねえちゃんが闘ってるよ!でも……苦戦してて……!」
「なんだって!?すぐに、助けなきゃ…あ゛い゛だぁッ!?」
体を動かしてメックから脱出しようとしたが、体を強く打った影響で動くたびに足に激痛が走った。
「ぐああぁぁあぁぁあぁぁぁっ……!痛い、痛すぎるよぉっ……!」
「だ、だいじょうぶ?彩芽おねえちゃん……?」
「くそっ、痛くてもいいから、動け……!……動けよ、ボクの体……!このままじゃ、桜子さんが……!」

85: 名無しさん :2017/02/21(火) 00:30:33 ID:???
「彩芽を連れては行かせない!」
(ここは防御に徹して時間を稼ぐ…!サラか彩芽が目を覚ましてくれれば、まだ勝機はある!もしそれが望めないようであれば…刺し違えてでも仲間を守る!)
桜子はただ一人、剣を振るって舞と戦っていた。かなりのダメージを受けていたサラが起きてくる可能性は低く、彩芽も命に別状はなさそうだったとはいえかなりの大怪我を負っていた。2人のどちらかが戦線に復帰する望みは薄い。
それでも、彼女は諦めない。桜子にはサラのような強さはない。彩芽のように便利な道具を作ることもできない。しかし、闘奴時代からどれだけ絶望的でも闘い続けてきた、この不屈の闘志だけは誰にも負けない。

「まったく…!貴女には用はないっていうのに…!しつっこいわね!」
「ぐ…!が…!」
舞の流れるような右回し蹴りからの左後ろ回し蹴りを、一本目は受け流し、二本目は正面から受け止める。
腕がジンジンと痺れるが、歯を食いしばって剣だけは離すまいと耐える。
この痺れた腕で追撃を凌ぐのは不可能だろう。ならば、防御のために敢えてこちらから攻める!
腕が痺れていようと、身一つあれば攻撃手段には十二分!

「ふん!」
「っ!?」

これまで防御一辺倒だった桜子の放つ、唐突な体当たり。意表を突かれた舞は、僅かにバランスを崩す。
その隙を見逃さず、全力で剣を振るう。だが、舞はバランスを崩したのを利用してバックステップ。腕の痺れが取れていないこともあり、舞に攻撃は当たらなかった。しかし、舞のバックステップに取り残される形になった鎖鎌の鎖と剣が絡まってしまう。

桜子はすぐに鎖と絡まった剣を捨て、懐に忍ばせていた短刀を身体に垂直に構えて舞に突進する。
それに対し鎖を引っ張って力勝負に持ち込むか、鎖鎌を放棄して肉弾戦に移行するか一瞬迷ってから鎖鎌を捨てた舞は後手に回る。
ここで実戦経験の差が出た。レジスタンスとして戦っていた舞も中々の場数を踏んでいるが、闘奴として一日に何度も不利な相手と闘っていた桜子には及ばない。
実戦経験の差がそのまま咄嗟の判断の差となった。だが…

「な!?」
「やるじゃない、生身だったら危なかったかもね」

漆黒のメタルスーツに阻まれて、短刀は舞の身体には突き刺さらなかった。
実戦経験の差は、単純なスペックの差を埋めるほどではなかった

「く…!だがこの密着した距離ならご自慢の足は使いにくいだろう!」
「なら手を使うだけよ」
「望むところ!腕の方は足ほどの技のキレはないと見た!」
「それは…どうかしらね!」
「なに!?ぐ!ごぁあああああああああ!!!」

舞の光の如き左ジャブを顔面に喰らい、無意識のうちに意識が顔に集中して防御が乱れる。その隙を見逃がさず、強烈な右ストレートが桜子の腹部を捉えた。
いつかの殺戮妖精と戦った時のように吹き飛ばされる桜子。

「前に、足が使えない状況で手にブーツをはめて攻撃したことがあってね。あれ以来パンチも鍛えることにしたのよ。残念だったわね」
「く…!」
「まぁ、思ったよりは楽しめたわ。でも、もう消えなさい」
舞は自らの手に黒いエネルギーを溜め、今にも桜子に放とうとする。



「さ、桜子さん!やめろぉ!桜子さんをそれ以上傷つけるな!もし桜子さんを殺したら、ボクはあの変態のところに連れてかれる前に舌を?んで死ぬぞ!」
「彩芽お姉ちゃん!?」
桜子のピンチを見て、自分の身柄という捨て身のカードを切る彩芽。あの黒いのは自分を連れ去ることが目的だと言っていた。つまり、ここで自分が自殺でもしたら、あの黒いのも困るということだ。

「貴女、大事なことを忘れてないかしら?王は死者を蘇らせることができるのよ?貴女が自殺しても、私には何の問題もないの」
「あ…!」
「結局、もう貴女は私に連れて行かれるしかないってことよ」

サラは気絶し、桜子はもう戦える状態になく、彩芽はアヤメックの中から脱出できない。スバルを戦わせるなど論外だ。絶望がその場を支配し、舞が嗜虐的な笑みを浮かべたその瞬間――


「いいえ、その必要はありませんわ」

唐突に、声が響く。
桜子とスバルにとっては舞が現れた時と同じく聞き慣れない声であったが、彩芽にとってはその声は、とても聞き慣れたものであった。

86: 名無しさん :2017/02/21(火) 21:12:48 ID:???
「この声……まさか……!」
メックの中からではよく見えないが…あの長い金髪と凜とした声に合致する人物を、彩芽は1人知っている。
「すごくキレイな人……!彩芽おねえちゃんの友達なの?」
スバルが首をかしげる。その問いに、彩芽は即答できなかった。

「くっ……誰だ……?」
「わたくしはアリサ・アングレーム…ご心配なく。あなたたちの敵ではありませんわ。」
長い金髪と輝く白いドレスを風にはためかせ、颯爽と現れた美少女は、メタルスーツを纏う舞の前にゆっくりと歩み寄った。
「貴女は……王都の地下に幽閉されていた異世界人ね。こんなところを妙なコスプレしながら歩いていたなんて。王様へのお土産が1つ増えたわ。」
「妙なコスプレをしているのはそちらの方ではなくって?わたくしはアングレーム家の娘ですのよ。ドレスを着て外出することなど、日常茶飯事でしたわ。」
「フン……貴女のその鼻に付くお嬢様言葉、嫌いだわ。さっさと始めましょう……!」
「まぁ怖い。どうかお許し遊ばして。お詫びに……このわたくしが貴女と踊って差し上げますわ。」

アリサの言葉が終わらないうちに、舞はとてつもないスピードでアリサへと走り出す!
「一瞬で終わらせてあげるわ!」
「まぁ、せっかちですこと……」
そんな舞とは対照的に、優雅な動作で剣を抜くアリサ。そうしている間にも舞は一気にアリサの眼前に迫り、渾身の蹴りを放とうとする。
「あ、危ないっ!伏せろっ!!!」
桜子が叫ぶも、アリサの動きは変わらない。鬼の形相で迫る敵を相手に落ち着き払っている。
そんなアリサが剣を抜くのと、舞が蹴りを放ったのは全くの同時。
舞は、勝ったと思った。
「遅すぎるッ!もらったああああぁっ!!!」



ガキィンッ!
「なっ!?」
「貴女……酷い顔ですわよ。淑女ならもっと慎ましくなさい。」
舞の回し蹴りは、アリサの持つ宝剣リコルヌの刀身でしっかりとガードされた。
「ば…馬鹿な。眼前で剣を抜いてからわたしの蹴りの軌道を見切ったというの…!?」
「心を落ち着けていれば、野蛮な猪突猛進をいなすことなんて簡単ですわ。欠伸が出るほど……ね。」
言った通り、敵の前で優雅に欠伸をして見せるアリサ。突如現れた金髪美少女に、舞は完全に馬鹿にされていた。

「ふん…そんな挑発には乗らないわ。一回防いだくらいで調子に乗るんじゃないわよっ!」
舞はすぐさまバックステップをして距離を離しつつ、指先から黒いエネルギー弾を2発打ち込む。
「甘いですわっ!!」
リコルヌを踊るように横に払って弾を弾くアリサ。不意打ちを狙ったつもりだったが、これも見切られてしまった。
そのまま長い金髪を鮮やかに躍らせながら、宝剣リコルヌの刃先が舞に迫る!
(この金髪……強いっ!)



「嘘だろ……本当に亜理紗なのか……?」
美しく舞いながら剣を振るうアリサ。その姿は彩芽が知っている亜理紗とは別人だった。
そのアリサは、なんと剣一本であの恐ろしい敵と互角……否。互角以上に渡り合っている。
「彩芽おねえちゃんの友達、キレイで強くてすごいねっ!かっこいいー!」
「や、やめてくれ。あの人は……ボクの友達なんかじゃないんだ……!」
「え?そうなの?」
忘れもしないあの事件。親友だと思っていた亜理紗に裏切られたショックは、今も彩芽の心に影を落としていた。
(あいつのせいで、僕は荒れに荒れて人生台無しにされたんだ……簡単に許せるもんか……!)

87: 名無しさん :2017/02/22(水) 23:09:41 ID:???
「くっ…!」
アリサの軽やかなステップから繰り出される活殺自在の剣術を相手に、必死で応戦する舞。
(ま、全く動きが読めない……!アングレーム流剣術……噂には聞いていたけど、ここまでとはっ……!)
実際、剣を回したり放り投げたりと、アリサの動きはまるで演舞だった。だがどんな扱いをしてもリコルヌはアリサの手元に戻ってくる。
アレイ草原、ゼルタ山地、レミア洞窟という魔境を1人で潜り抜けてきたアリサは、アングレーム流のほとんどの剣技を扱えるようになっていたのだ!

「ヴァイスシュラーク!」
「ああああぁッ!」
白い雷の名を冠するリコルヌの振り下ろし。光のような早業を舞は止めることかなわず、頭を強く強打されて足をフラつかせた。
「ぐっ……あっ……!」
敵が目の前にいるというのに舞の意識は遠くなり、目の前のアリサの姿がぼやけて見える。軽い脳震盪を起こしているような感覚だった。
「ヴァイスシュラークはリコルヌの魔力を込めた振り下ろしですわ。神経回路を破壊された今の状態では、自分の体も動かせないのではなくって?」
「くっ……くそっ……!」
アリサの言う通り、足を動かしているのに手が動き、肩を動かすと首が動く。身体中のパーツがバラバラに繋がれてしまったようだった。
(まずい……まずい……!このままじゃ……!)

「さぁ、フィナーレですわッ!」
言って、アリサは剣をゆっくりと構える。今から行う技は、義理の父に教えてもらったアングレーム流奥義の1つ……
「シュヴェーアトリヒト・エアーストッ!」
「ぐあああッ!」
神速で繰り出されるリコルヌの斬り払いにより舞のアーマーが一部剥がれ落ち、その端正な顔が再び白日の元に晒された。
「シュヴェーアトリヒト・ツヴァイト!」
「や、やめっ…!ああああッ!」
魔力を帯びたリコルヌによる強烈な突きで、舞の体は大きく吹き飛ばされながら地面に何度も叩きつけられた。
「ぐっ!ぐうっ!…ああ゛あ゛あ゛ッ!」
強い衝撃を感じるたび苦しそうに声を漏らす舞。最後には大きな岩に全身を強く打って動かなくなった。

「リコルヌ、トラークヴァイテ……!」
舞に剣を向け力を溜めるアリサ。そんなアリサを朦朧とした意識の中で見据える舞。
もう舞の体は動かないが、攻撃してくるアリサの姿からは目を離せなかった。

88: 名無しさん :2017/02/23(木) 01:49:47 ID:???
「な、なんなんだこの女の子は……!」
桜子は驚愕した。突如現れたお嬢様風の美少女はあの恐ろしい黒騎士を完封し、今まさにトドメを刺そうとしているのだ。
「はああああっ…!」
少女の持つ豪奢な剣にみるみる光が集まると、その刀身は輝きを増しながら元のサイズの3倍ほどに巨大化していった。

「一子相伝のアングレーム流奥義、その身に刻みなさいッ!!!!!」
アリサが凛とした声で叫ぶ。リコルヌに集まった光の勢いは凄まじく、舞含め皆その刀身を直視することすらできなかった。
(な、なんなのよ……!あのアリサとかいう女のどこから、こんな力が溢れてくるのよ……!)
彼女は気付いていないが、この大きな力こそ、唯や瑠奈たち5人の異世界人が持つ運命を変える力なのだ。

「ギガンティッシュ・シュトラールッッッ!!!」
「ひ……!い、いやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

光の力を込めた巨大剣による渾身の斬りはらいは、悲鳴をも飲み込んで舞の小さな体へと振り下ろされた。
「すごい、すごい、すごーい!アリサおねえちゃんが悪いのをやっつけたーーー!!!」
「ふ、普通あそこまでするか……?相変わらず加減を知らない奴だなぁ……明らかにオーバーキルだろ……」
彩芽の言う通り、9999の文字が出るような一撃を食らった舞。
攻撃の成果を確かめるために、アリサが大きな岩へと近づくと……

「……ぐ………ぁ………」
光の斬撃でできた大きな穴。その穴の中で苦しそうに呻き声を上げているのは、ボロボロになったセーラー服を着ている美少女だった。
美しかった長い黒髪は無造作に焼かれてしまっており、破れた上着からは白いブラジャーが、スカートからは白い下着がそれぞれくっきりハッキリと見えてしまっている。
「う……ごめんなさい。少しやりすぎましたわ……」
申し訳なさそうに謝罪するアリサだが、その言葉が舞の耳に入ることはなかった。



柳原舞は、旅を経て強くなったアリサを相手に、為すすべもなく完全敗北したのであった。

89: 名無しさん :2017/02/25(土) 10:31:55 ID:niZ/K8iM
「サラ・クルーエル・アモット様ですね。わたくしはアリサ・アングレームと申しますわ。」
舞を倒したアリサは、意識を取り戻したサラに改めて自己紹介をしていた。
「アリサ……本当にありがとう。アナタが来なかったら私たちは今頃トーメント王に拘束されて、理不尽な暴力と女としての恥辱を同時に受ける生き地獄で絶望しているところだわ。」
「ちじょく…?桜子おねえちゃん!ちじょくってなーに?」
「あ…す、スバルにはまだ早い!サラッ!変な言葉使わないでくれ!!」
「早いってなんで?ねえちじょくってなーに?おいしいものなのー?」

その後もちじょくについて詳しく聞いてくるスバルを、桜子は無理やりテントに押し込んだ。
「ふぅ……まあとにかく、君のおかげで本当に助かった。君は私たちの命の恩人だ。」
「い、いえ……こちらこそ、友人の彩芽がお世話になりましたわ。わたくしもお2人には本当に感謝致します。」
(……この子、やっぱり普通の女の子じゃないな。もしかしてどこかのお姫様なのか…?)
そんなことを思う桜子。立ち振る舞いも言葉遣いも完璧なうえに、その美しすぎる容姿はどこぞの国のお姫様言われても違和感がない。
胸元にリボンのついた綺麗なホワイトドレスを身に纏う少女は、本当に漫画の世界から飛び出してきたかのような美しさだった。

「あれ?サクラコ。そのアヤメはどこに行ったの?」
「あ…拘束した奴の見張りをしてるって言って、向こうにいるよ。」
「どうして友達がここにいるのに、わざわざそんなことをしているのかしら。私が呼んでくるわ。」
「あっ、お待ちになって!」
不思議そうに言いながら彩芽の方へと歩き出そうとするサラ。その後ろ姿にアリサは制止の声をかけた。
「ん?どうしたの?」
「わ、わたくしが1人で行きますわ。色々と2人で話したいことがありますから……」
「そう。ならいってらっしゃい。私たちはご飯を作って待っているわ。」

  • 最終更新:2018-01-26 00:34:18

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