10.02.二人の騎士

71: 名無しさん :2017/02/11(土) 21:59:36 ID:???

所変わって、ここはアリサの目指すアルガスに至る平原。
異世界人が集まると聞いて、彩芽、サラ、桜子、スバルの4人も、アリサと同じくこの地を目指して旅をしていた。
「さぁみんな。もうすぐアルガスに到着するわよ。夜になる前に急ぎましょう。」
「はぁはぁ…まだ着かないのぉ?ボクもう疲れたよ…」
「わたしも疲れたよ桜子おねえちゃん。休みたいよぉ…」
弱気な声を出す2人。狭く暗く魔物だらけのレミア洞窟を探索したせいで、2人とも体力は限界だった。
「…サラ。2人もこう言ってるし、今日はここでキャンプにしないか?街まではまだかなり歩くんだろう?」
「あと5時間も歩けば着くわ。深夜には到着するんだから、頑張って欲しいんだけれど…無理かしら?」
「5時間なんて無理無理!!1番動いてるのに1番疲れてないサラさんはすごいけど、ちょっと前まで引きこもりだったボクはもう限界だよぉ!」
「スバルももう疲れたぁ!彩芽おねえちゃんと一緒に休みたいぃい!!」
「…はぁ。仕方ないわね。サクラコ。私は危険なものがないか見てくるから、アヤメたちのためにテントを張って待っていて。」
「あ、あぁ……」
いつも危険な役回りを引き受け、魔物との戦いも最前線で立ち回るサラ。
そんな彼女に桜子は心の底から感謝しつつも、ほとんど頼りにされていない自分に対し腹立たしさを感じていた。

「なぁ…彩芽。私たち、サラに色々と任せすぎじゃないか?」
テントを張った途端すぐに寝袋で寝てしまったスバルの隣で、桜子は彩芽に話しかけた。
「だってボクたちには力がないもん。サラさんが強すぎるんだよ。元ヒッキーのボクにあのレベルと同じになれって言われても無理だよ。」
「ま、まぁそうなんだが…もしサラがやられたら、私たち2人でスバルを守れるか不安なんだ。そろそろなにか考えた方がいい気がして…」
「大丈夫だって。ここまでだってあの人が無双してきたんだし。もうちょっとで安全なアルガスに着くんだし、それまでは考えなくていいよ。なんか案があるわけでもないんでしょ?」
「あぁ…でもアルガスに着いたら、一緒に考えよう。私たちだけでスバルを守る方法を。」
「はいはい。桜子さんは真面目だなぁ…」
そこまで話したところで彩芽は、サラが未だ戻らないことに気がついた。いつもは20分ほどで帰ってくるのに、もう1時間も経っている。
「サラさん…遅いね。何やってるのかな?」
「…私が様子を見てこよう。彩芽はスバルを頼むよ。」

72: 名無しさん :2017/02/12(日) 22:56:29 ID:???
女時空刑事サラ。
幼少の頃とある事件に巻き込まれて天涯孤独の身となった彼女は、
時空を超越して犯罪者と戦う組織「時空警察」に引き取られ、
厳しい訓練の末にコンバットアーマーを纏って悪と戦う「白銀の騎士」となった…

「…うーん。ちょっと焦り過ぎてたかしら…あの二人もだいぶ疲れてたみたいだし、悪い事したわね」
…職業柄、単独で行動する事が多かったせいもあったからか。
同行者への配慮が足りなかった事に遅まきながら気付き、サラは密かに反省していた。
(…こういう旅とか初めてだったんで、ついテンション上がっちゃって…とは、流石に言えない)
ともかくも、周辺の探索を一通り終えたサラは、仲間の元へ引き返そうと踵を返す。
その時。

街道の先から、一人の少女が歩いて来るのが見えた。
長い黒髪、黒のセーラー服、チョーカー、そして黒いストッキングにブーツ…服装から高校生と思われるが、
凛とした雰囲気を持つ美貌に、サラと同じくらいの長身。そして、すらりと伸びる長い脚が印象的だった。

「…貴女…何者?」
だが…こんな人里離れた場所を、しかもたった一人でうろついているのは、明らかに不自然。
「サラ・クルーエル・アモット……『白銀の騎士』。貴女を、破壊する」
サラの名を知る黒ずくめの少女は、殺気を漲らせながら襲い掛かってきた!


「……はあああぁっ!!」
「くっ!…………信じられない!…なんて強さなの…」
黒い少女の繰り出す蹴りの速度に翻弄されるサラ。しかも、一撃一撃がガードの上からでも身体の芯に響く程に重い。

ビシッ!
「っぐ…」
鞭のようなローキックが、サラの太股を打ち抜き……
どすっ!どすっ!どすっ!
「あぐっ!!…が………はっ…!!」
体勢が崩れたサラの上半身を、黒い少女が抱え込んで…膝蹴りを連続で叩き込む!

「…『閃甲』は、しないのかしら?」
…黒髪の少女はサラの鳩尾に二十発以上の膝蹴りを叩き込んだ。
脱出不能の「膝地獄」に悶絶するサラが抵抗しなくなったのを見て取ると、
サラの金色の前髪を掴みながら問いかける。
「…はぁっ……はぁっ……しない、わ…アナタみたいな可愛らしいお嬢さんに、そんなオトナゲない真似…」

喉の奥に血の味を感じながらも、不敵にほほ笑むサラ。
自分の名前だけでなく、『閃甲』の事まで知っている事を考えると、トーメント王国の追手である可能性は極めて高かった。
だがそれでも、正体がわからない、普通の人間かも知れない少女に、時空刑事の力を使うわけにはいかない。

「…なるほど。それなら……」
少女はサラを突き飛ばすと、黒いセーラー服のスカートを少しだけ持ち上げ…

「『葬黒』…!」
太股に巻かれた、金属製のバンドに触れ、コマンドワードを唱える。
すると、闇色のオーラが少女を包み込み………
次の瞬間、少女は漆黒のメタルスーツに身を包んでいた。その姿はまるで…

「…黒い、クレラッパー…!?…一体、どうして…」
「……これで本気を出してくれるかしら」

黒衣の少女の名は、柳原舞。
トーメント王下十輝星に捕らえられたレジスタンスの一人で、今は『教授』と呼ばれる狂科学者の意のままに操られていた。
彼女の任務は、『閃甲』した貴女を徹底的に破壊し、このスーツの性能を実証する事。
そして…サラと同行している少女「古垣彩芽」の身柄の確保。

「どうやら、やるしかないみたいね……『閃甲』!!」
光に包まれ、変身するサラ。
夕闇迫る荒野にて。二人の騎士が、今まさに激突しようとしていた…

73: 名無しさん :2017/02/14(火) 23:34:24 ID:69y0LTg6
「ライトニングシューター!」
サラは腰のビームガンを抜き、舞に向けて雷弾を素早く3発撃ち込んだ。
「ダークバレット!」
応戦する舞の手から発射された暗黒の弾丸は、空中で巨大化し、サラの放った雷弾をすべて吸収した。
(魔法かしら…やはり普通の女子高生ではないわね。それなら…!)

「シルバー・プラズマソード!純粋起動!」
手に持った大剣にプラズマエネルギーが流し込まれると、シルバー・プラズマソードの刀身が眩い光に包まれる。
すぐにその光が収束すると、シルバー・プラズマソードは刀身を大きく伸ばした真の姿を現した。
「それがネペンテスを倒した、貴女の自慢の武器ね。…凄まじいエネルギーだわ。」
「ネペンテスですって…?やはりアナタはあの王の手先ね!」
「さぁ…?どうせここで貴女は死ぬんだから、私が何者かなんて関係ないでしょ?」

舞の手に大きな闇のオーラが現れ、その中から禍々しい鎖鎌が現れる。
「サラ・クルーエル・アモット…このダーク・チェインサイズで、貴女を絶望のどん底に落としてあげるわ…!」
「随分と自信があるようだけど、私は強いわよ。そんな妙ちくりんな武器で勝てるのかしらね…?」
「そんな口を叩けるのも今のうちよ…はあぁっ!」
雄叫びとともに、舞は鎖をサラの頭に向け思い切り投擲した。

「はあぁっ!」
サラは向かってきた鎖を切り払う。普通の鎖であれば、彼女のシルバー・プラズマソードであっさりと切れるはずだったが……!

ガチィン!
「な、なんですってッ!?」

……勢いよく弾かれた鎖は傷1つつかない。それどころか、最初の勢いを殺さないままに再度、サラの体に襲いかかった。

ガチィンッ!ガイイィィンッ!!
「ふん…なかなか面白いオモチャじゃない。あなたみたいな女の子が持つには危なすぎるけどね…!」
臆したら負け。それがサラのモットーだ。どんな敵にも余裕を見せれば、相手に焦りを与えるきっかけになる。
(この動き…魔法で操っているのかしら…!ただの鎖鎌じゃないわね…)
「ククク…硬い鎖と踊るのだけで精一杯かしら?私とも遊びましょう?」
舞がそう言った瞬間、サラの視界から舞の姿が消えた。

ヒュンッ!
「なっ!?速ッ…ぐあっ!?」
高速でサラの懐に潜り込んだ舞は、履いているブーツで腹を蹴りあげサラの体を宙に浮かせた。
「さぁ…強がりでプライドの高い貴女の悲鳴を聞かせて?」
「えっ…?」
「秘奥義…連牙百烈蹴!!!」
「あがっ!?ぐあああああああああぁぁあぁぁぁああぁぁッ!!!」

空中で無防備なサラの体に向け、舞の高速連続蹴りが炸裂する。
「いい声ね…貴女も王様のおもちゃにしてもらうといいわ…!」
「ぐううああぁっ!!ぐっあっあっあぅっ!あ゛っあ゛っあ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
(か……体が……浮き上がっていく……!)
その凄まじい蹴りはサラの体を地面に落とさず、空中で固定してしまっていた。

「ほらほら、さっきまでの威勢はどうしたの?セクシーお姉さん。」
「ぐっがはっ!あぐっ!うあああああああ!!!」
太い杭を連続で打ち込まれるような激しい痛みに、たまらずサラは言葉にならない大声をあげて痛みを堪える。
そして、それはまだまだ終わらない。

「フフフ…このまま貴女の鎧をすべて剥がしてあげる…!」
「がっ……?ああぁっ……!?」
強化されたブーツによる連続蹴りにアーマーが耐えられず、身体中からギシギシと不穏な音が響き始める。
バキィンッ!!!
「うぐっ……?ぐっああああぁああぁっ!!!」
ひび割れたアーマーの隙間に舞の蹴りがクリーンヒット。サラは空中で身を大きく捩った。
「これ、本当に貴女の防具なの…?もうボロボロじゃない。そろそろ全部剥がれそうよ?」
バキ!バキバキバキバキ!!!
「ぐああーーーーーーーッ!!!あ゛がああーーーーッ!!ぐううううっあああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

アーマーが剥がれたむき出しの場所を狙って、舞の蹴りが次々と炸裂してゆく。
脱出しようにも凄まじい蹴りとそれによる痛みが酷く、全く身動きが取れない。
常人であれば失神するような激しい痛みの連続に、サラは目を白黒させながらけたたましい悲鳴を上げ続けていた…

74: 名無しさん :2017/02/15(水) 11:30:10 ID:???
「ふふ、いい顔になってきたじゃない。白銀の騎士…苦しんでる顔も素敵だわ。」
「ふぐっ……!がふっ!」
舞の連続蹴りの勢いはとどまることを知らず、サラは込み上げてきたものを口から吐き出した。
「ぐ……あぁ……!」
「酷い顔…声もあんまり出なくなってきたし、そろそろ死んじゃいそうね。…じゃあこれで、トドメっ!」

舞のトドメは足を上に大きく開き、思い切りパンツを見せる格好からのかかと落とし。
サラの視界には舞の純白の薄布が映った瞬間、頭の上にかかとが押し付けられ地面に叩きつけられた。
「ぐはぅんッ!……ぁ……うぅ……」
「ネペンテスを倒したと聞いたから少し期待してたけど…まさかこの程度とはね。すっかり拍子抜けよッ!」
「がはッ…!げほっ…!」
頭上からの圧力に衰弱した体で抵抗する術はなく、されるがまま足で顔を地面に押し付けられる。
「フフフ……無様に土を舐めさせられて、弱者にお似合いの格好ね。完全敗北した気分はどう?」
(な……なんなの……何が起こって…… )
圧倒的な舞の力の前に、サラはまだ思考が追いついていなかった。

「さて、貴女は拘束させてもらうわ。鎖で巻くけど抵抗はしない方が身のためよ…」
顔も体もボロボロの状態では抵抗などしたくてもできず、サラは舞の鎖によってみっちりと拘束された。
「あ……貴女の狙いはなんなの……?」
「まだそんなことを喋る元気があるのね。…悪いけど、少し気絶してもらおうかしら。」
舞が手をかざすと、先ほどサラの銃弾を吸収した闇の球体が現れた。
「さっきもらったもの、ちゃんと返すことにしたわ。はい、どうぞ。」

ドンドン!
「うぅう゛!?あ゛ぐあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…!」
先ほどサラの放った雷弾が球体から飛び出し、サラの腹へと命中した。

バリバリバリバリバリバリバリィッ!!
「ひゃんっ!があ゛っあ゛っあ゛っあ゛っ!ひあああああああああっ!!」

体中に凄まじい電圧が駆け巡り、大きな胸を前に何度も突き出しながらビクンビクンと喘ぐサラ。その痛ましい姿はどこか官能的だった。
「あんっ!あ゛っ!ひあっ!あひっ!あああああああっ!!」
「もはやエロゲーね。この後は、くっ、殺せ……とでも言うのかしら?」
サラの強靭な身体ももう限界だった。電圧に全ての体力を奪われ、サラの美しい目から光がなくなっていく…
「あ゛あ゛……ぐ……ぁ……」
「無様な姿…しばらく気絶してなさい。白銀の騎士…」



「あ、桜子さんおかえりー……あれ、サラさんは?」
「戻ってないのか……サラがどこを探してもいないから、一旦戻ってみたんだ。」
「帰ってきてないよ?……うわ、なんか急に嫌な予感がしてきたっ……!」
アヤメは大慌てでアヤメカ袋をチェックし、戦闘の準備に入る。サラがいない今、自分の身を守れるのは自分だけなのだ。
「と、とりあえずわたしはもう一回外を回って、」
「その必要はないわ。」

唐突に響いた聞きなれない声に、2人はテントの外を見つめる。
そこには鎖で縛られたままぐったりしているサラと、端正な顔でこちらを見つめる黒い少女の姿があった。

  • 最終更新:2018-01-26 00:41:43

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