09.01.回想1

54: 名無しさん :2017/02/01(水) 02:56:19 ID:???
【名前】ドロシー
【特徴】王下十輝星の1人だった15歳の少女。星位はデネブ。
風を操る能力を使い身の丈よりも大きな鎌を振り回して戦う生粋の戦闘タイプ。
性格は真面目で曲がった事を極端に嫌う。実力で王下十輝星になったことを何よりも誇りに思っており、王への忠誠心は誰よりも高い。



「じゃあアトラくんたちはこれ。リザちゃんたちはこれ。ご査収してよくよく確認するんだよ~」
「ふむふむ…ありがとうエスカ。おかげで合理的な作戦が立てられそうだよ。」
「ほんと、エスカのおかげで毎日がノー残業デーですわ!圧倒的感謝…ですわ!」
「いやいや。私の占いは3割だから!それを忘れないでね!あんまりあてにしないでね!」

…3割とか言って、外れたことがないじゃないか。
このエスカが来てから、みんながおかしくなってしまった。
私たちは王様の直属の部下で精鋭中の精鋭なのに、やることといえば未来を先読みして卑怯な作戦を立てて危なげなく完遂するのみ。
…正直この占いがあれば私たちじゃなくても任務完遂は出来ると思う。それほどまでにエスカの占いは当たりすぎてつまらない。
それに…その占いを全員分やるエスカが1人でどれだけの労力を使っているかも、私は知っている。

昔はみんなで能力者を倒すために血反吐吐きながら共闘したり、規格外の巨大な魔物を王下十輝星全員での華麗なチームワークで倒したりした。
あの頃は良かった。毎日が刺激の連続で、本当に本当に楽しかった。

でも…今の生活にそんな刺激はない。だって未来がわかるから。何が起こるか全部分かるから。それに合わせてやれることをやれば任務は終わる。
「あれ、ドロシーどうしたんだよ?難しい顔して。……あ!生理か!?」
「うわ……アイナの中でアトラ株がすごい勢いで売却されていきますわ……!本当サイテー!」
「え、これって言っちゃダメだった?悪い悪い!」
「もー。アトラくんは女心をもっと勉強したほうがいいよ。……はい、ドロシーちゃん。あなたの分だよ。」

…つまらない。ツマラナイ。つまんない…!!

ザシュンっ!
「きゃっ!?……え、なに?どうしたのドロシーちゃん?」
気づいたら、エスカの占いが書かれた紙を風で切り刻んでしまっていた。

「…みんな!!エスカに頼るのはもうやめようよ!エスカは全員分の占いをするに寝る時間も削ってるんだよ!?」
「ち、ちょっとドロシーちゃん…!そういうことは言わなくてもいいから…!」
「いや、言う!毎日夜から占い初めて、朝までかかってフラフラになってるところを、私は見たんだから!」
「え……?エスカの占いってそんなに時間がかかるの……?」
「え、あ、いや、まぁ……」

「って言ってもよー、エスカの占いがないとなにが起こるかわかんねーだろ?安全策があんだからそれでいいじゃんか!」
「このバカアトラ!先がわかってる人生なんか面白くないでしょ!?」
「いや、俺は任務のことを言っただけだって…!な、なぁシアナ!?」
「…うん。正直任務を安全に遂行するためには、今はエスカの力が必要だよ。寝る時間を惜しんででも、僕たちに協力してほしい。」
嘘……シアナまでそんなことを言うなんて……!
「あ、アイナも同意見ですわ!というかエスカの占いがないと怖くて能力者となんか戦えませんわよ!」
アイナ……昔はもっと勇気のある子だったのに……!
「…エスカには悪いけど、私も今のままがいい。誰も死なないことが1番大切だと思うから…」
そ、そんな……!他の誰が否定してもリザだけはわかってくれると思ってた……!

どうやら、私はアウェイで異分子だった。全員腐ったミカンでも見るような目で私を見ている。気分が悪い。
「もういい!私だけでもエスカには頼らないことにするわ!この腰抜けども!それでも本当に王下十輝星かっ!」
「な、なんだとっ!?」
「自分の力でなんにもできないあんたらなんか、その辺の赤ちゃんと同じよッ!!バーーーーーーーカッ!!!」
腑抜けた腰抜けどもと同じ空気を吸いたくなくて、適当な捨て台詞を吐きながら私はその場を全速力で走り去った。
「あ、ドロシーちゃん待って!今日の任務は本当に危険だからっ……」



エスカたちがドロシーの姿を見たのは、これが最後だった。
この後彼女は、未来予知の大切さを皆に思い知らせるほどの凄惨な最期を迎えることになる…

55: 名無しさん :2017/02/03(金) 20:48:10 ID:???
「なんだアイツ!俺らのことバカにしやがって!プラチナむかつくぜ!」
「ドロシーは真面目だから……エスカが1人だけ辛い目に合ってるのを見過ごせなかったんじゃないかな……?」
「…それもあるかもしれないけど、なによりあいつは戦闘狂だから、未来予知して作戦を立てるのが気に入らなかったんだろ。結構前からそんな感じだったし。」
「自分より強者に興奮する孫悟空タイプの変態ドロシーならありえますわね…要はヒリつくような戦闘がしたいっていう自分のオナニー欲求を満たしたいだけなんですわ!!!」
「そ、それより…エスカはエスカはドロシーちゃんが心配だよ。早く誰か助けに行ってあげたほうがいいかもカモネギ…」
そう言いながら敵の詳細をまとめた紙をテーブルに出すエスカ。その紙に書かれていたのはある少女の情報だった。



(まったく…人間は楽することを覚えるとすぐに堕落するっていうのはホントね。あそこにいた全員見損なったわ。)
風魔法の威力を高める露出度の高い妖精の服を見に纏い、小さな身体に不釣り合いすぎる巨大な鎌を背中に抱えて、ドロシーはターゲットの元へと向かう。
天候は快晴。クリーム色の髪が森の中の優しい風でふわりと浮かぶと同時に、ドロシーは捲れあがったスカートを手で抑えた。
(キャッ…!危ない危ない。もし誰かに見られたら恥ずかしくて死んじゃう…もう!なんで教授はこんな露出度の高い服装にしたのかしら!…こんなの、別の意味で動きづらいわよぉ……)
そもそもその別の意味を強く反映させたデザインなのだが、純粋なドロシーがその悪意に気付くことはなかった。

(今回のターゲットは…はぁ、弱そうな女の子。詳細なんか見なくても余裕ね。エスカの力がなくても任務遂行できるってことを、先輩としてあいつらにしっかり教えこんでやらなきゃ…!)



「こ、こいつは……!邪術のライラ……!」
エスカの出した資料。そこに映っていた漆黒のローブを纏う紫眼の少女を見るや否や、シアナの表情はたちまち恐怖一色に染まった。
「ジャジュツノライラ?なんか高級ブランドみたいな名前だな…」
「あ、ちなみにアイナの大好きなブランドはジャミュールのゴシックシリーズですわ!今着てる服はシリーズ最新作のゴスロリチックな黒に、大人アクセントの赤を加えたファン垂涎のアウターですのよ?」
「へー!さっきからアイナの顔をブン殴りたくなってたのはそれが原因か!なぁなぁ、1発だけ本気でブン殴ってもいいか!?」
「んなっ……!?ななななんて爽やかなドSですの…!?たまに出てくるアトラの狂気は恐ろしすぎて涙腺にクリティカルヒットしてきますわ….…!」

「……で、邪術のライラってどんな力を持った女の子なの?」
「あ、あぁ……」
騒ぎ始めたアトラとアイナを放置して、リザが話を進め始めた。
「邪術…魔法の一種ではあるけど、あまりに非道徳的な効果を持つことから、ほとんどの国では禁止されている魔術なんだ。故にそのやり方も全くと言っていいほど出回っていない。…世界の均衡と、人間としての尊厳を守るためにね。」
トーメント王国やルミナス王国もそれは例外ではない。邪術の使用方法は国家機密として管理されており、使った者は故意であれ過失であれ例外なく極刑である。
「邪術についてはわたしも少し聞いたことがある。人造人間を生み出したり、恐ろしい魔物を作り出すこともできるって……」
「ライラは、邪術の力に溺れたある科学者の1人娘なんだ。そんなライラがいつからか、狂った父親に教わった邪術を使って殺し屋をするようになった。…これは僕の推測だけど、おそらく彼女は父親の研究のために自分を犠牲にしているんだと思う。」
「わー父親思いだなぁー。エスカにはできないわ。まぁエスカは親の顔も覚えてないんだけどね……」

「……とにかく、ヤバい奴なんでしょ?なら私がドロシーを助けに行く。みんなはここで待ってて。」
「あ!なら俺も行く!!!」
先に名乗りを上げたリザに反応して、アトラも素早く反応した。
「邪術の使い手相手じゃ、アトラの罠もあんまり機能しないと思う。……私一人で行くよ。」
「リザ、俺がトラップ仕掛けるしか能が無い猿だと思ってんだろ?なぁに心配すんな。お前は絶対に俺が守ってみせる…」
「は……はぁ……」
(バカアトラ……格好つけるならもうちょっとタイミング考えろよ……)
渋い声を出しながら赤い髪を掻き上げてキメ顔を向けるアトラに、リザはどう反応していいかわからなかった。

56: 名無しさん :2017/02/04(土) 01:13:03 ID:???
「…ちょっと待った。ドロシーを心配するのは良いけど、僕らだってこれから『仕事』だろ?」
ドロシーを助けに行こうとするリザを、シアナが止めに入る。
「そうですわ!大体、アイナは2分の1回リザちゃん成分を補充しないとあたまがおかしくなってしぬ身体ですのよ!?」
そこにアイナが口を挟む。
「それはほんとうにあたまがおかしい ふつうになぐりたい」
更にアトラが突っ込みを入れる。…アイナは「ぐぬぬ」と唸った。
「…それにリザ達の次の相手だって、アイナ一人じゃ相当キツイはずだ。ま、僕はアトラが居なくても問題ないけど…」
「アトラは半分サボりたいだけでしょう?…で、後の半分はリザにいい所見せたい、と。こちとらまるっとお見通しですわよ?」
「う、うるさいな…(そうだけど)」
「…それなら、アトラはアイナと一緒に行って。私はドロシーを追いかける」
「えっ」「えっ」「えっ」
リザは言い争うシアナ達にきっぱり言い放つと、皆の返事を待たずにテレポートで部屋を出ていった。

(なんだかすごく…嫌な予感がする。お願い、間に合って……!)

………それから約一時間後。

「今回のターゲット…邪術のライラ、って言ったっけ。こんな辺鄙な所に、よく住む気になるもんだわ」
ドロシーは、王都からはるか西に位置する広大な森の中にいた。
風を操る能力を持つドロシーであればこそ短時間で行き来できるが、自動車で丸一日、馬車なら軽く1週間はかかる距離だ。

反乱分子、と大層なレッテルを貼られてはいるが、実際の所こんな所で引きこもっている相手が王国の脅威になるはずもない。
そんな相手にわざわざ王が討伐令を出した理由は明白…この森が、南の大国アルガスへの近道となるからだ。

アルガス帝国へ陸路で行くには、アレイ草原を南へ下り、東西に横たわるゼルタ山地を超え、
山深くにあるというレミア洞窟を潜り抜け…と、遠く険しい道のりを通らねばならない。

だがこの森を抜けられれば、ゼルダ山地を西側から回って、平易なルートを開拓できる。
そうなればアルガス帝国とトーメント王国は目と鼻の先。お互い、即座に大群を送り込むことも可能となり…
一触即発状態となった両国が、大掛かりな戦いに発展することは時間の問題。
強者との戦いを望むドロシーにとっても、願ってもない展開であった。

だがそんな彼女の行く手を阻むかのように、森に棲む魔物が次々と襲い掛かる。
巨大吸血アリの大群や、それを食べる巨大アリクイ、毒の花粉を撒き散らす巨大な花に、果ては人間の雌に発情する触手など…
「ああ、もう……ウザいウザいウザいウザいっ!!!」
大鎌が唸りを上げ、周囲の風が衝撃波となって次々と敵を切り刻む。
魔物の返り血や体液が跳ねるのも気にせず、ドロシーは並み居る魔物を薙ぎ払いながら森の奥へ奥へと分け入っていった…

  • 最終更新:2018-01-25 23:08:22

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