08.01.魔弾のアイセ

48: 名無しさん :2017/01/29(日) 16:07:30 ID:UQL58AVg
【名前】アイセ
【特徴】24歳。肩まで届く茶髪セミロング。見た目は清楚なゆるふわ系女子だが、敬語が使えず口も悪い。
西部劇が好きなため、ガンマンのような服装をしている。
戦闘の際はホルスターに入った魔力を撃ち出す魔銃をメインに、グレネードや投げナイフなど多種多様な武器を使う戦闘のプロ。
今まで一度も負けたことがないため、戦いにおいてはプライドが高い。



トーメント王を倒すために活動しているレジスタンス達。アイセの率いる「紅蓮」もその一角を担っている。
彼女が居を構えるアレス・ガンダルドの街は、元は王都軍の管理する街だったが、アイセの活躍により王都軍を撤退させ、レジスタンスの拠点となった。
この地を占拠した理由は、豊富な資源。周辺で取れる武器の材料や魔力の触媒などは、紅蓮だけではなく他のレジスタンス達にとっても欠かせないものとなっていた。

「アイセッ!!!ルミナスが王都に戦争仕掛けたんだってよ!!!俺らも便乗して王都でドンパチやるかぁ!?」
2mほどの巨躯の男が、大量の武器を持ってドカドカとアイセの部屋へ乗り込んできた。
アイセと呼ばれた少女はだるそうに椅子に座りながら男を見上げる。
「んあー……今は無理っしょ?この前の戦闘で動ける奴も少ないし、武器もほとんどないんだから。」
そこまで言うと、アイセは入ってきた男をキッと睨みつけた。
「…てかさ、鍵がないんだからノックしてよ。何回言わせんの?あたしがもしここでイケメンの痴態を見ながら裸になってたらどうしてくれんのよ?ダズッ!?」
「あ……ご、ごめん!!!あ、アイセ、許してくれぇ!!」
「ふん……そのセリフも何度目だか。あんたの不細工な顔見たくないから消えて。ついでにカーチェス呼んできて。…駆け足!!!」
「は、はいぃ!!」
紅蓮には、ボスに対しての敬語は不要。なぜなら、ボスの彼女が敬語嫌いだからだ。だがアイセのことは名前で呼ばなければならない。「お前」などと言ってしまうと、プライドの高い彼女の鉄拳制裁が待っている。

「呼んだかアイセ。…相変わらず今日も可愛いな。食べちまいたくなるぜ。いい加減俺と付き合えよ。なぁ?」
「あんたは顔がいいだけで性格ゴミだから却下。…まぁ最近超頑張ってくれてるし、咥えるだけなら一回だけやってあげてもいいけどね。あんた性欲強いから、この環境じゃ溜まるでしょうし。」
「お?マジで?じゃあいつヤるよ。俺は今日の夜でも構わないぜ。へへっ。」
「今日はイヤ。あたしの気が向いたらってことで。…それより、例の情報は?」
アイセの言葉を聞き、軽薄に笑っていた男の表情が真剣に変わった。

「どうやらマジだ。十輝星の1人がアイセを狙ってる。舞やエミリア、アイセみたいな自分たちに刃向かう実力者を排除しておきたいんだろうな。」
「やっぱりマジだったのね……で、私を狙ってる馬鹿の潜伏際はわかってるの?」
「それが……どうも今日この街に入り込んだみてえだ。フードで顔を隠した怪しい奴の目撃情報がある。いつ襲われてもおかしくないぜ。」
カーチェスの言葉を聞き、アイセは右手で髪をいじりながら思案する。彼女がこの動きをしている時に、声をかけてはならない。もし声をかけてしまうと、思考を邪魔されて腹を立てた彼女の鉄拳制裁が待っている。

「こっちから呼びましょ。要は私の命を狙ってるんでしょ?なら私がタイマンはってブチのめせばいい。不意打ちされたくないし、十輝星を生け捕りにすれば王の弱点とか知ってるだろうしね。」
「アイセならそう言うと思ったぜ…だが俺は異を唱えよう。舞やエミリアを倒した十輝星が相手じゃ、さすがのアイセも1人じゃ危険だ。俺たちにも戦わせてくれ。」
「アンタを副ボスに指名した覚えはないし、私一人で充分よ。町中にビラを撒いてここに誘い出しなさい。わたしは逃げも隠れもしない…ってね。」
「だ、だが、アイセ。もし万が一お前がやられたら、俺たちは…!」
そこまで喋ったところで、カーチェスの体はアイセに投げ飛ばされ部屋の外まで吹き飛んだ。
「お前って呼ぶな。そして私に意見するな。お前みたいな雑魚がいたところで私の邪魔だ…」
「ぐ…わ、わかった…!わかったから…!」

再び椅子に座るとホルスターの銃を抜き、クルクルとガンプレイを始めるアイセ。その表情には笑みが浮かんでいる。
「王下十輝星…一度戦ってみたかったのよねー。どれくらいの時間遊べるおもちゃなのか、とっても楽しみだわ…フフフッ♪」
アイセの屈託のない笑顔。破天荒すぎる彼女だが、その笑顔は年相応の爽やかな笑顔だった。

49: 名無しさん :2017/01/29(日) 16:11:10 ID:???
ばら撒いたビラを眺めながら、アイセは右手で髪をクルクルといじくり回している。
(ま、準備万端のこっちにわざわざ向かってこないと思うけど……来たらラッキー程度に思っておいた方がいいわね。)

左手でチョコを掴んだ時、アイセの部屋の扉が勢いよく開かれた。
「あ、アイセェッ!!き、来やがったぞ!フードの野郎が!!」
(チッ…こいつまたノックもせずに…あとでシメてやらなきゃね。)
「い、言われた通り奥の広間に通したぜ…なぁ、アイセ1人じゃなくて、俺ら全員でやっちまおうぜ!?」
「わたしが1人でやる。トーメント王に家族を殺された恨み、少しは晴らしたいの。万が一わたしが負けても、あんたらは助けなくていいから逃げなさい。わたしが負けた奴にあんたらが勝てるわけないしね…」
ゆっくりと立ち上がり、ダズを睨みつけながら無言で部屋を出るアイセ。その恐ろしい視線に、ダズは何も言えなくなってしまったのであった。

レジスタンス本部奥の広間はもともと王国軍が利用していた施設のため、ダンスホールのような広さを誇っていた。要するに、アイセが暴れるにはうってつけの場所なのだ。
広間に入ったアイセの視線の先に、黒づくめのフードを被った人物がいた。体のラインがまったくわからないコートを羽織っており、男なのか女なのかも不明だった。
「あなたが十輝星の1人なのね。私はアイセ。レジスタンスグループ『紅蓮』のボスをやっているわ。」
「…………………」
アイセの穏やかな声での挨拶に答えず、フードの人物はゆっくりと右手を懐に忍ばせる。
「フン…顔も見せたくなければ声も聞かせたくないってわけね。いいわ。始めましょうか…!」
ホルスターから銃を抜くアイセ。その瞬間、フードの人物は全速力で襲いかかった。

(な…!早いわね…)
銃を抜くことすら間に合わず、アイセは格闘での対応を余儀なくされた。
フードの人物が右手に持ったナイフに刺されないよう、最新の注意を払いながら敵の猛攻を捌いていく。
「動きが雑よ。そんなんじゃ…私には勝てないわッ!」
一瞬の隙をつき、敵の腹にカウンターを決め込むアイセ。我ながら改心の一撃だったが、敵は少し身じろいだのみで吹き飛ばなかった。
(籠手の衝撃からすると、コートの中に何か入れているようね…でもここからは私のターン!)
パンッ!パンッ!
体勢を崩した敵の虚を突いて早く銃を抜き、敵の足へと発泡したアイセ。しかし…

(馬鹿な…この距離で私が外した!?)

いつもの彼女なら考えられないミスだった。敵は足を抑えることもなく再びこちらへと走り出している。
(き、きっとあのコートの中に秘密があるんだわ…剥がしてやる!)
頭を切り替え、敵のコートを剥がそうとするアイセ。百戦錬磨の彼女はもう敵の癖を見抜いていた。
(…ここだ!)
素早く足払いを繰り出し敵の体勢を崩すとすかさず地面に叩きつけ、マウントポジションを取った。
「さぁ、お顔拝見といきますか!」
アイセが無理やりフードを脱がすと……
そこには、優しそうな顔をした黒髪黒目の青年の顔があった。

50: 名無しさん :2017/01/29(日) 16:12:36 ID:???
「あらら…見られちゃいました。あなたすごく強いんですねぇ。」
アイセと同じ年くらいの青年は、穏やかな声でアイセに語りかけた。
「ふ、ふん…なかなかのイケメンじゃない。顔を傷つけるのはやめてあげるわ。大人しく捕まりなさい!」
「いや、そうはいかないんですよ。僕の任務はあなたを捕まえることですから。」
「そう…わたしは短気だから、早く観念した方が身のためよ。」
そう言い、アイセは銃を心臓に突きつける。念のためジッパーを下げて見たが、そこには白いYシャツがあるのみで防弾チョッキなどはなかった。
「雷弾を心臓にぶち込まれたくなかったら、さっさと降参しなさい!」
「い、や、で、す。僕の任務は、あなたを捕まえることですから。」
「この…!!なら、わたしの魔弾で痺れるがいいわッ!」
おうむ返しを続ける十輝星の腹に向けて、アイセは電撃魔法を込めた銃弾を打ち込んだ。

ガィィンッ!
「えっ…!?う゛あ゛っ!?あ゛ぎああ゛かあ゛がぐがあががあああああぁあぁあぁああッッ!?」

予想もしていなかった痛み。それは皮肉にも彼女自身の手で行われた。
ゼロ距離で放った銃弾が弾き返され、身体中に走る電撃と激しい痛みに、アイセは声にならない悲鳴を上げながらびくびくと体を痙攣させる。
術に込められた術式により、感電はしないようになっていた。自分の腰の上で激しく悲鳴を上げ続ける美少女を、青年は優しい眼差しで見つめている。
電撃が止み、10秒ほど天を仰ぎながら口をパクパクとさせた後、アイセはマウントポジジョンの下にいる十輝星の体に倒れこんだ。

「ぐふっ……あ……が……!」
「僕の力だけでもあなたに勝てますけど、やっばりあなたの凄まじい魔力で自滅してもらう方が楽ですからね…なんかごめんなさいね。」
青年の語りかけにも反応できず、アイセは十輝星の体の上でピクピクと体を震わせる。何も知らない人が見るとかなり怪しい光景だった。
「あの…僕に体を預けられても困りますよ。僕は敵なんですから。…まぁ、別にしばらくこのままでもいいんですけど…」
美女と密着しているためか、素っ頓狂なことを言う青年。まあ普通の男なら美女と密着しているだけでも幸せなので、無理もない。
だが彼には任務を終えた後すぐに来いと、王からの呼び出しがかかっている。このままアイセと体を重ねて長居するつもりはなかった。

(それにしても1発でここまでの威力なんて…王都軍が撤退させられたわけだ。この子は危険すぎる。早く連れて帰ろう…)

十輝星が彼女を抱えたとき、広間の扉が勢いよく開け放たれた。
「ア…アイセエェェッ!!!」
「き……貴様あああぁっ!!!アイセを離しやがれぇぇぇえっ!!」
レジスタンスたちがドカドカと入り込み、あっという間に広間は屈強な男たちで埋め尽くされてしまった。

「ちょっと!約束が違いますよっ!1対1って言ったじゃないですか!?」
「うるせえええっ!!このトーメント王の手先がっ!全員で畳んじまえーーー!!!」
掛け声とともに、男祭りのように一斉に雪崩れ込んでくる男たち。十輝星はやれやれと首を振った。
「結局、僕の力を最大限使うしかなさそうですね…やれやれ…」



10分後、広間は男たちの死体と血で凄惨な状況と化していた。
レジスタンスグループ「紅蓮」は、1人の青年によってあっけなく畳まれてしまったのであった……



【十輝星:アルタイル】
本名はヨハン。自分の体に襲いかかる物理攻撃や魔法を弾くことができる。
それだけではなく、吸収、貫通も可能。そして同じことができる結界を、15メートルほどの近距離にも張ることができる。
また、自身の腕を刃物に変えることも可能。まさに矛と盾の能力を併せ持った能力者である。
これらは全て彼の持つ異質な魔力のため、魔力が尽きるとすべての能力が使えなくなってしまう。常軌を逸した魔力量を持つ彼にしかできない恐ろしい能力なのである。

53: 名無しさん :2017/01/31(火) 21:54:18 ID:???
「わあぁ……!なんだよこれ……!」
王都に到着したヨハンは絶句した。久しぶりの故郷はスライムと魔物化した兵に満ち溢れ、好きだった城下町の景観はそこにはなかった。
「ヨハン様!お待ちしておりました。…ん?その大きな籠は…?」
「あ、あぁ…これね。とっても可愛いけど、すっごく凶暴な猫ちゃんが入ってるんだ。開かないでね。フリじゃないから。本当に危険だから。」
「は、はぁ…今はルミナスとの戦争直後でして、通れない道が多数あります。私たちが整備した道がありますので、ご案内致します。こちらへどうぞ。他の十輝星の方々もすでに集まっております。」

王城、謁見の間……はリムリットに破壊されたため、十輝星たちは城の中庭に集まっていた。
「ヨハンーーーー!!!久しぶりですわーーー!!!アイナのこと覚えてますの?忘れてたらその綺麗な顔にヤスリで赤のアクセントを加えてやりますわよーーー!!!」
「お、覚えているよ。ベガのアイナちゃんだよね?まだ小さいのに僕より頑張ってるらしいじゃないか。すごいよ。偉い偉い。」
アイナの頭をポンポンと叩くヨハン。その途端アイナは耳まで赤くなった。
「はうあっ!24のイケメンに見初められてしまいましたわー!でもでもでもでも!アイナにはリザちゃんがいますから、ヨハンとは付き合えませんのであしからず!あしからずっ!」
「はいはい…アトラもシアナもリザも久しぶりだね。元気してた?」
「おー!成長期だからめっちゃ元気だぜ!牛丼も特盛食えるようになったんだ!あとラーメン三郎も野菜マシマシ余裕で食えるし、とつぜんステーキも450ぐらい食えるぜ!めちゃくちゃすげえだろ!」
「それがすごいなら世の中の中年男性みんなすごいことになるぞ。てかなんで食事量の自慢しかないんだよ!もっとマシな自慢しろよ!」
ボケとツッコミは変わってないな、と確認したところで、王が姿を現した。

「よく戻ったなヨハン。西の方ではいろいろとご苦労だった。その籠に入っているのが、魔弾のアイセか?」
「はい。かなりお転婆な子でしたが、なんとか無事に捕まえられました。…ところで王様。エスカの姿が見えませんが…」
ヨハンの言葉に、アトラたちも辺りを見回したが姿はなかった。
「どうせまた遅刻ですわ!あの人は王都に暮らしているのにいつも遅刻していますからね!ぷんぷん!」
「いや…エスカは寝返ったよ。ルミナスにな。」

王の言葉に、皆開いた口が塞がらなかった。
「もしかして、洗脳が解けたんですか…?」
「まー解けてはいないが、好奇心旺盛なあいつのことだ。実の妹やら親友やらの言葉に刺激されたんだろう。残念だがもうここにはいないよ。」
「……じゃあ、未来予知はもう使えない……?」
「うおおお!?リザちゃんがようやく喋りましたわーー!!もう声が可愛いすぎてアイナおかしくなっちゃいそう!心臓が破裂しそう!」
「黙ってろアイナ!これはまずいぞ……エスカの力がないと僕たちの行動もかなり制限されてしまう。今までみたいに全て順風満帆とはいかなくなりそうだ…」
口に手を当てて思案するシアナ。今までの計画は全てエスカの予言ありきだった。それが使えないとなると安全ははなくなり、自分たちの力だけで計画を進めることになる。
「じゃあさ、さっさとエスカの首根っこ掴んで連れ戻せばいーじゃん!」
「馬鹿…ルミナスの王城にいるんだぞ。護衛もたくさんいるだろうし、簡単にいくもんか。」
「じ、じゃあもう先読みチート戦略は使えませんの!?それは流石に困りましたわ…」
十輝星の子供達はざわつき始めた。特異な能力を持っている彼らといえど、エスカの占いがなければより強い能力者にあっさりと負けてしまう可能性も十分あるのだ。
(みんな焦り始めたな…ここは大人の僕がなんとかしなきゃ!)

「みんな落ち着いて。エスカが来る前だって、みんなで上手くやってきただろ?予言なんかなくても君たちなら大丈夫だよ。」
「よく言ったヨハン。そもそも十輝星ならあんな占いなどなくても上手くやるだろう?君たちは精鋭部隊なんだからな…」
「だ…だって…ドロシーは…!」
リザが恐る恐る口を開いた。
「あぁ…あいつは自分の実力に胡座をかいていたからやられたんだ。復活させる価値もない。そもそもどうでもいいところで死ぬような雑魚は十輝星を名乗る資格はないからな…ヒヒヒ!」

アトラたちはなんとなく察していたが、王の復活の力は自分たちに使われることはない。彼らにはリトライはない。王下十輝星である彼らに失敗は許されないのだった。

「ドロシーのことなんて忙しくて忘れていたよ。エスカのフォーマルハウトとドロシーのデネブの星位に、新しい十輝星を入れてやらないとな…!」


  • 最終更新:2018-01-21 23:08:43

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