07.03.リコルヌ

9: 名無しさん :2017/01/01(日) 21:01:32 ID:???
「いやああああぁっ!!やめてっ!!来ないでっ!!痛っ…あああああ!!!」
魔喰蟲の群れに襲われ、激痛と恐怖に泣き叫ぶ、一人の少女がいた。
彼女の名は、園葉 華霧(そのば かぎり)。唯達と同じく地下闘技場に避難していた、14歳の少女である。
捕食・繁殖モードに入った魔蟲の群れは、彼女のような魔力のない一般市民にも、無差別に襲い掛かるのだ。

「ひ、腕がっ…あ、脚があぁああっ!!…いやあああ!!そこ、そこだけはだめええええ!!!!
魔蟲の群れは少女のなだらかな胸の上をカサコソと這い回り、わき腹や二の腕などの柔らかい場所を狙って無遠慮に牙を突き立てた。
そして太股を這い上り、デニム地のホットパンツの留め金をこじ開け、下着を易々と噛み千切り…
まだ成熟していない生殖器の入り口に、産卵管の先端を押し当てる!

(もうダメ…私はここで蟲に食べられて死ぬんだわ…死ぬまでに一度でいいから、イケメンとイイ感じになってみたかった…)
体が麻痺し始め、だんだん痛みも感じなくなってきていた。華霧は観念して目を閉じ、最後の時を待つ。だが、その時…

(ブオン…ザクザクザクッ!!)
突如、黒いドリル状の剣先が空間から無数に現れて、華霧にまとわりついた蟲達を刺し貫く!

「えっ……な、なにが起きたの…?…あっ……!…」
…倒れかけた華霧を抱きとめたのは、黒い剣を持ち、限りなく黒に近い深紫の服を纏った美青年だった。

「大丈夫ですか、お嬢さん…こんな時に申し訳ありませんが、一つお願いしたいことが…」
「はいっ!何でもします!(ヤバいヤバいヤバい!イケメンさんに助けられて人生大逆転キましたよこれ!)」
恋に堕ちる事、即堕ち2コマより早く。瞳にハートを浮かべながら即答した華霧は、
言われるままに青年が差し出した赤いペンダントに手をかざす。が…特に何ごとも起こらない。

「…またハズレですか。今日この場所に私の探す人物が現れる、という情報だったんですが…
あ、お騒がせしました。もう行っていいですよ」
「え?」
端正ながら表情の乏しい顔に僅かな落胆の色を浮かべ、青年は華霧から手を放した。

「ちょ、ちょっと待ってください。あの、その」
「おや、あれは……急ぐので失礼」
青年は何かを見つけると、華霧にはそれ以上目もくれずに歩き去ってしまった。
手にした剣で蟲を無造作に斬り払い、さながら無人の野を行くが如く…

(ぶぅぅぅん…)(ぶぅぅぅん…)
「い、いや…蟲がっ…待って、助けて…おねが…ひぎあああああ!!!」
望み通り、死ぬ前に一度だけイケメンとイイ感じになれた園葉華霧。
彼女が悔いなく人生を終えることが出来たかどうかは、誰も知らない。

10: 名無しさん :2017/01/01(日) 21:11:17 ID:???
食料を調達しに行った酒場主人を待つ間、気絶した瑠奈を介抱するアリサと唯。
そこに現れたのは……
「アルフレッド…なぜ貴方がここに…!…唯、瑠奈を連れて今すぐ逃げなさい……!!」
アリサの養家であるアングレーム家に執事として仕えていた男。
そして主人である夫妻と師を殺害し、アリサから全てを奪った…魔剣の使い手、アルフレッド。
「…………。」
だが唯は、まるで抜け殻の様に、切羽詰まったアリサの声にも無反応だった。

「やはり貴女方でしたか…お嬢様。今は、あなた方と争うつもりはありません」
「よくもぬけぬけと……気安く、お嬢様などと呼ばないでくださるかしら!」
殺気の籠った視線を飛ばすアリサだが、アルフレッドは涼しい表情を崩さないまま…赤い宝石のペンダントを懐から取り出した。

「お願いしたい事があるのです。このペンダントで…『アングレームの遺産』を手に入れてもらいたい」
アリサにとってそれは、絶対に忘れようのない…あの夜奪われた、育ての両親の形見だった。

「どういう…事ですの…!?」
「遺産が隠されている、おおよその場所は掴みましたが…最後のカギを開くことが出来るのは、ペンダントに選ばれし者」
ペンダントから赤い光が放たれ、アリサと唯、そして瑠奈に向かって伸びる。
「すなわち……あなた方全員です。できれば5人全員が揃うのを待つべきなのかも知れませんが」

「勝手なことを…今さら貴方の頼みなど聞くものですか!剣さえあれば、この場で父様達の仇を討って差し上げますのに…!」
「戦うつもりはないと言った筈ですが…仕方ありません。これをお使いください」
…アルフレッドがアリサに寄越したのは、装飾の施された銀色のレイピア。

「これは…アングレーム家に伝わる宝剣『リコルヌ』…」
アリサが以前使っていた練習用のレプリカとは違う、正真正銘の本物だ。よく手入れが行き届いており、刀身は眩い光を放っている。

「…私が勝ったら、言う事を聞いていただく。それで宜しいですか?」
対するアルフレッドは、黒い木刀を手に取った。
この後アリサに「頼み事」をする以上、怪我を負わせる事は避けたいと考えているのだろう。

(遺産の眠る地は、王下十輝星の一人『カペラ』の支配域でもある…
果たして遺産を手にするだけの力を持っているかどうか。見極めさせていただきますよ…)

11: あらすじと登場人物紹介乙です :2017/01/01(日) 23:16:09 ID:???
「アルフレッド…あなたはお父様とお母様の仇ですわ!いくらあなたが丸腰同然の装備でも、わたくしの剣先は迷うことなくあなたの心臓を狙いますわよ!」
「構いません。ただし私があなたに勝ったら…そこのご友人と共に私と来ていただきます。それで構いませんね?」
「…いいでしょう。あのときと同じようにわたくしに勝てると思っているのなら…大間違いですわッ!!」
叫ぶと同時に、アリサはリコルヌを構えてアルフレッドに走り出した!

キン!ガッ…シュバッ!ビュン!
一度戦った時とは別人のような激しい動きで長い金髪を振り乱し、アリサは怒涛の攻撃を仕掛ける。
リコルヌでの攻撃と舞うような体術で戦うアリサの美しい姿は、さながら演舞のようだった。
「流石ですねお嬢様…あのときとは違い、剣に迷いがない。気を抜けば本当に殺されてしまいそうです…」
「黙りなさいこの外道…!お父様とお母様のために、ここでわたくしがあなたを地獄へと葬って差し上げますわッ!」
キンキンキンッ!
「おっと…!」
アリサは目にも留まらぬ3連突きを繰り出し、アルフレッドの体勢を崩した。
「そこっ!」
僅かにできた隙を狙い、アリサは思い切り前に踏み込み、アルフレッドの左胸に宝剣を突き出す!!!

ガキィンッ!!!
「なっ!?剣がっ…!?」
渾身の突きを繰り出したアリサだったが、すぐさま体勢を立て直したアルフレッドのカウンターによりリコルヌを弾き飛ばされてしまった。
「惜しかったですねお嬢様…剣に迷いがないとはいえ、基本の太刀筋はまだまだです。私の誘い受けにまんまと乗ってしまうようでは…ね。」
「ぐっ…!くそぉっ…!」
「それでは、私について来てもら…ッ!!!」
尋常ではない殺気を感じ、アルフレッドはすぐさま後方に飛んだ。

「貴様ァ…!何モンだ!?俺の客に何をしてやがる!?」
「貴方は…竜殺しのダン?どうしてこんなところに…?」
「うるせえぇ!どこにいようと俺の勝手だろうがッ!さっさと消えねえとテメェのかわいいケツを4つに割るぞ!」
「はぁ…これは少々面倒ですね。…お嬢様、その宝剣は差し上げますので、日を改めて伺います。またお会いしましょう…」
そう言って深く一礼すると、アルフレッドは素早い身のこなしで地下水道の奥へと消えた。

「あのスカし野郎…俺の殺気を食らっても平然としてやがったぞ。いったい何者だ…?」
「それはわたくしのセリフですわ。あなたはただの宿屋の主人ではないようですけれど…?」
「いやぁ俺のことはいい。ただちぃっとばかしその辺のやつより強えってだけだ。…そっちも色々と事情がありそうだな。深くは聞かんが…」
「…今は力及ばないけれど、いつかわたくしが必ず殺すべき男ですわ。たとえ刺し違えてでも…!」
強い口調だが、アリサの目は泳いでいた。その目には葛藤、後悔、怒り、悲しみといった様々な感情が渦巻いているように見える。
「おい金髪ロング…あんま1人で抱えんなよ。困ってるんならこいつらにでも話して楽になるこった。」
「…ええ。そのうちゆっくり話せる時が来たら、2人には話すつもりですわ…」

(それにしてもアルフレッド…あの男の目的は一体なんなんですの…?)

  • 最終更新:2018-01-25 23:36:44

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