06.03.突入

220: 名無しさん :2016/12/25(日) 16:32:45 ID:???
「ところで、エミリア……この服、貸してくれたのはありがたいけど…」
連絡兵にボコられて泥だらけにされた服の代わりに、リザはエミリアから「あったかそうな服」を借りたのだが……
「…ちょっと派手すぎない?」

それはコートもミニスカートも帽子もことごとく赤くて、袖や裾や帽子の縁はもれなく白いファーで飾られていて、
確かにあったかい事はあったかいのだが、胸元や太股周辺は不自然に開いていて…という、いわゆる間違ったサンタ服であった。
「ちょうど今、それしかなくて…でも可愛いよ?」
「…さすがに目立ちすぎだと思う…(…ちょっと、はずかしい)」

「来たぞー!エミリアだー!」「なんかもう一人変なのがいるぞ!ヤっちまえー!!」
「……来るよ…とりあえず、リザは下がってて」
目立つ服のせいかどうかはさておき、二人は洞窟に突入して早々に警備兵達の襲撃を受けた。

「いけっ!ファイアボルト!!」「ぐおおおっ!?」「ぎゃああああ!」
…エミリアを捕獲する場所としてこの洞窟を選んだのは、
まず第一に、崩れやすい岩の特性から、上級レベル以上の攻撃魔法が使用不可能になる事である。
だが、エミリアは隙の少ない初級~中級の魔法を巧みに使いこなして順調に敵を倒していった。
(エミリア、かなり戦い慣れしてる…少し彼女を甘く見てたかも)
そしてもう一つの理由。視界が悪く、岩陰など遮蔽物の多い洞窟では……

「「ヒャーッハハハハハーッ!!メーリークリスマーース!!」」
「リザちゃん、後ろっ…きゃああ!?!!」「…エミリア!?……っ!…(…酒臭っ…!)」

…陰に隠れて、不意打ちを仕掛けるのが容易なことである。

………

「騒がしくなってきたな…上の兵士連中にも、俺からサービスで「酒とご馳走」を振る舞ってある。
喰えば元気百倍、飲めば痛みを忘れて狂戦士化…まあ、もうしばらくは足止めできるだろう。ククク…」

「…ふ…ふざけるんじゃありませんわ…雑兵ごときが王下十輝星『ベガ』のアイナをここまでコケにして、タダですむとっ…!」
お菓子袋から、キャンディステッキ型の仕込み銃を取り出したアイナ。
能力で気配を消し、近くにいたジョンに攻撃しようとするが…

「おーっと、そこまでだぜ!クソ生意気なお嬢ちゃん!」
トナカイ型マシンの角が伸び、縛った荒縄を引っ掛けてアイナを吊り上げた。

「きゃああっ!?…そんな、どうして…アイナのいる位置が…!」
「お前の能力は既に対策済みだ…発動すれば確かに姿は見えない、体温も臭いもしない。
 だが、この『シルバスター』が降らせる白い粘液雪の中で、足跡までは消すことができまい!」

「おーい。C、ジョン。お前らも早くマシンに乗れよ。こいつ、マジですっげえぜ!」

………

物陰からリザとエミリアに襲いかかってきた兵士達は、酒臭い息を吐きながら二人を押し倒し、
人間とは思えない怪力で首や手足を押さえつけて動きを封じてしまう。

「っ……どう、いう事……どうして、私にまで攻撃を……アイナ、は…」
「…あぁ~~?何のことだかわからねえなぁ?ぎひひひ……
お前らは全員ここでファックされて、レジスタンスだか王都だかに売っ払ってやるんだよぉォ…!!」

「ぐひっ…エミリアちゃぁ~ん…細身なのに意外とおっぱいあるねぇ。やっぱ寒いから脂肪貯め込み体質になるのかな?ぐへへ…」
「ひゃんっ……は、放して…っああっ!!…(…この人、魔法が直撃したのに、倒せないっ……!)」

頭にかぶったサンタ帽、懐から取り出しては食べ続けるローストチキン。
エスカの占いのどのパターンにもなかった、明らかに異常な状況だ。
…何が起こっているのかわからないが、ただ一つ言える事は…アイナの身にも、とんでもない危険が迫っている!

「っく…!…そういう、ことなら……、私も……もう、遠慮はしないっ……はああああぁっ!!」
リザの能力の一つ、近距離の瞬間移動を発動した。
瞬時に兵士の背後を取り…手首に仕込んだブレードで、兵士二人の首を、瞬く間に切断する!

(もうすぐ行くから…アイナ、無事でいて…!!)

………

「メリークリスマス!王下十輝星『ベガ』のアイナちゃ~ん♪
雑兵ごときにここまでコケにされて…ねえ、どんな気持ち?ねぇねぇ今どんな気持ち~~??」
赤熱するトナカイの鼻が、屈辱の刻印を焼きつけようと、アイナの身体に近づいていく……!!

「ひっ……い、いやあ……こ、来ないで…ゆるし…ひ、いぎ、ああああああああ!!!」

221: 名無しさん :2016/12/25(日) 18:54:28 ID:???
巨大兵器工場を進むエミリアとリザ。ジョンの呼び出した兵隊たちをリザが破竹の勢いでなぎ倒していく。
「リ、リザちゃん…こんなに強かったの…?わたしなにもしなくても良さそうな気がしてきちゃったよ…」
(…今は、アイナを助けることが先…!邪魔する奴は全員倒す!)

「ひえええええええーーー!やっぱリザはめちゃめちゃ鬼強ええーーーーー!に、逃げないと殺されるぞおおおおおおおおーーーー!」
「し、しかもあんな胸出してミニスカ履いて…!いつも黒しか着てないクールな碧眼金髪ショートの美少女が上も下もそんなことになったら…どうしてもそっちを見ちゃうだろおおおお!!!なんて卑怯なヤツなんだああー!」
兵隊たちの何人かは、酔った勢いでリザの体に飛びかかっている。が、そんな単純な動きで捕まえられるわけもなく、首を切られ、頭を刺され、ことごとく撃退されていくのであった。
「まったく、15歳の小娘のミニスカと胸なんぞに惑わされおって!お前ら!これは俺たちにとって千載一遇のチャンスなんだぞ!死んででもあいつら2人を止めるんだああッ!」
「で、ですが隊長ぉ…やつはテレポートするんですよ!?どうやって倒せっていうんです!?」
「…そんなの知るか!とにかく立ち向かええええ!」
「えええええええええええ!?そんな無茶なーーーーーー!!!!」

「名もなき兵たちよ。リザとエミリアがそろそろ来るようだ…準備はできているな?」
「イエス!全員乗り込んだぜえ!合体準備完了だ!」
「よし!では合体を始めるぞ!総員、合体ボタンを押下するのだ!」

ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!
説明しよう!
リザとエミリアを迎え撃つのは、『シルバスター』『アカバーナー』『ミドリラー』を合体させた、巨大ロボ『メリクリツリーエクセキューショナー』!!
シルバスターの粘膜で敵を捕縛し、アカバーナーの枝と焼印で獲物を仕留める!ミドリラーの装甲で魔法も完全に無効化可能!
まさに無敵!まさに最強!
完全無欠の超巨大ロボットなのだ!

「ぁ…ぅ…」
赤っ鼻で焼印を押され、アイナは立ち上がることもできずにぐったりしている。
「い…今頃はジンギスカンチョコを食べながらこたつでのんびり録画したベイ◯ックスでも見る予定でしたのに…最悪のクリスマスですわ…」
「テメェも乗れ。あいつらの泣きわめく姿を特等席で見せてやるよ…」
「ああぁっ!」
ジョンはアイナのツインテを強引に掴み、ズルズルと引きずって無理やりロボの内部に連れ込んだ。

A「よ、よし…このロボットを全員で息を合わせて操作して、リザともう1人をブッ殺してやるぞお!」
B「大丈夫だ…俺らならやれる。今までだって俺ら全員で修羅場を乗り越えてきたじゃないか!今回も上手くいくさ!」
C「難しく考えなくても、美少女2人を捕まえるだけだ…!捕まえた後のことを考えれば、やる気も出るってもんだ!絶対成功させるぞ!!!みんな!!!」
「「「「「おう!!!!」」」」」

222: 名無しさん :2016/12/25(日) 23:45:56 ID:???
狂戦士化した兵隊をあらかたなぎ倒したリザとエミリア。
日付は、もうすぐ25日に変わろうという所。工場の最深部で二人が見た物は……

「な……何ですか、アレ…」

「「「「行くぞ!メリクリ(中略)ロボ!」」」」
星形の頭部、胸にトナカイ、股間にドリル…と、異様な姿の巨大ロボだった。

………
「リザちゃんとアイナちゃんの占いは、と…うん、正面から戦わなきゃ9割9分大丈夫っぽいね。
1個だけ、日付またいじゃって結末を読めない占いがあるけど…アイナをさらった兵士が、地下工場に立てこもって…」
「兵士?…どういう状況だか知りませんが、ノープロブレム!雑魚が何をした所で、アイナとリザちゃんの敵じゃありませんわ!」
「うん…それに、日付が変わる前にケリをつければいい」
「そう?…ま、キミらなら大抵の事は何とかなるだろうし…んじゃ頑張ってね~」
………

(……あ、あれは……そりゃあ、読めないわ…)
予想外すぎる敵を目の当たりにし、呆然とするリザ。

「と、とにかくアイツを倒せばいいんですね!…サンダーブラスト!!」
いち早く我に返ったエミリアが、中級クラスの雷撃魔法で攻撃を仕掛けた。
中級と言っても、エミリアの手にかかればその威力は一流魔導士の上級魔法並。
機械タイプの敵なら、これ一発で大抵の相手は撃破できるはずだが……

「ガオオオン!!」
「そ、そんな……!」
股間のドリルから緑色の光の壁が現れ、魔法が無効化されてしまった!
怯んだエミリアめがけ、今度は巨大ロボがドリルを回転させながら突進してきた!

「速いっ…!…プロテクトシールドっ!!」
エミリアは両手を前方にかざし、防御魔法を展開。
これもまた、ミサイルの直撃すら耐える強固な防御力を持っているはずだが…

(ぴしっ…バキバキッ…ガシャアン!!)
「きゃあああぁぁっ!!」
ロボのドリルによって、いとも簡単に打ち砕かれてしまう!!

223: 名無しさん :2016/12/26(月) 00:29:10 ID:???
ロボが合体してからリザ達が来るまでの間。 巨大ロボ『メリクリツリーエクスキューショナー』の内部にて

「おごッ!?ひいっ…ぎぃッ、 あぁああッ! あ"……あ"…… っく、おぐッ!…も、もうやめ…やめ、て……っあああぁあ!!」

アイナは縛られたまま逆さに吊るされ、兵士達のサンドバッグにされていた。

「あいつらが来るまでの暇潰しだ…おらぁっ!」
「 いッああああ!!!」
兵士に殴られ、蹴られる度に、地面に垂れたツインテールが体を追うように力なく動く。

「すげぇ楽しいわ……!」
「 はぐッ!!…あぁ……助け…て… ぐすッ……」
リザには及ばないとはいえ整っていた顔は痛々しく腫れ上がり、逆向きに流れた涙の痕が残っている。

「逆さまで動けない気分はどうだい?気持ちいい?」
「…あ…ぁっ……」
床にはアイナの流した涙や汗、そして血が飛散し、体の真下には小さな赤い水溜まりができている。
既に傷がない場所は見つからないほどぼろぼろにされ、幾度となく意識が飛びそうになるが、その度に外からの痛みで強制的に覚醒させられるためそれも叶わない。
「新しい刺激が欲しいんじゃないかい?これはどうかなぁ!?」
そういって兵士は、間を開けるようにして両足を縛られたためにノーガードになっている、アイナの股間に踵落としを叩き込んだ。
「ぎッぃやあああああああぁぁあーーーーッ!!」
自分の意思とは関係なしに涙が溢れてきて視界が歪むほどの衝撃。
虚ろになっていた目が大きく見開かれ、直後、あまりの激痛に顔が歪む。
「ハハハハっ!いい反応じゃねえか!次は金属バットで粉々にしてやろうか?」
「…ぅ…や……やだ…やめて……ッ…!」

(リザ…早く……助けてッ……お願い…!)
自分の置かれたどうすることもできない絶望的な状況に、涙を流すしかないアイナだった…



「にしてもあいつら遅くないか…?」
3人にリンチされているアイナを横目で見ながら、Cとサンタが話している。
「まあこんなものだろうさ。暗殺者が最速で殺しても魔法使いの走行速度に併せてるんだ。駆け抜けるようには来れない。」
「あるいは疲労がピークに達して動けなくなったかもしれない…?」
「その可能性もあるな。魔法使いの方はわからんが、暗殺者のリザの方はそこまで体力があるわけでは無かろう。たとえどんなに超人的な動きができたとしても、それがいつまでも続けられるかというのはまた、別の話だからな。もっとも、それじゃあせっかくのロボがほぼ無駄になっちゃうから、是非とも元気な状態で来て欲しいものだがね。」
「ま、いずれにせよ急がないと友人が完全に壊されちまうから、はやくした方がいいねぇ。」

「あ"あ"あ あ"ぁああ"あぁあ"あ"あぁぁあ"ーーーーッ!!!」
金属バットが、アイナの股間を直撃していた。

224: 名無しさん :2016/12/26(月) 01:47:06 ID:???
エミリアの魔法が破壊され、目の前に巨大ロボのドリルが目前に迫る!
「くっ!エミリア、捕まって!」
「は、はい!」
リザはとっさにテレポートし、エミリアを抱えて跳躍した。

「くっそー!早速1人粉々にできると思ったのによー!」
「リザはいろんな理由で生け捕りにしたいが、レジスタンス側に寝返るに当たってあのエミリアって女には死んでもらわなきゃならないからな…!」
「まあ気を落とすな。美少女2人が必死に戦うところをゆっくり見物するとしようぜ…!」

「リ、リザちゃんありがとう…!リザちゃんが助けてくれなかったら、わたし…!」
「…それより、アレをどうやって倒すかよ。ここにきて巨大ロボが出てくるなんて、思ってもみなかった…」
「さっきの緑色の壁…きっとあれは魔法に対してかなりの強度を持っているみたい…ごめんなさい。今のわたしじゃ、リザちゃんの足手まといになっちゃう…!」
「…そんなことないわ。あなたの魔法を私の武器に注ぎ込んで攻撃すれば…勝機はある。」
「リ、リザちゃん…!1人であんなのと戦うの…?危ないよ!」
「…あの中にはきっとアイナがいる。私はアイナを助けに来たの。自分の身なんかどうでもいい…」
「リザちゃん…!」
リザの表情はいつもと同じように無表情のまま。だが言葉から感じる友を助けたいという強い思いに、エミリアは心を打たれた。
「…エミリアは怖いなら、このまま帰って…」
「に、逃げたりしないよ!!!怖いし…あんまり役に立たないかもしれないけど、わたしもリザちゃんと一緒に戦う!アイナちゃんを絶対助ける!!!」
「…ありがとう。エミリア…」

「ん?あいつら、リザのナイフに魔法を流し込んでるぞ?魔法のナイフで攻撃しようってのか?」
「おそらく、魔法の盾以外の場所をあのナイフで攻撃しようっていう腹積りだろうな…」
「このロボの強度を考えれば、魔法が乗ってようとあんな小ちゃいナイフの一撃問題ねえよ!」
「Cの言う通りだ。あんな小さい女にこのロボが負けることはない。B!長靴ミサイルをお見舞いしてやれ!」
「イエッサ!」

ドゴーン!ドゴーン!
ロボの背中から長靴型のミサイルが発射され、リザの元へとホーミングして接近する!
「エミリア!下がってて!」
「うん!」
リザはホーミングするミサイルを跳躍して飛び越え、ナイフのグリップに仕込んだ銃弾をミサイルに打ち出した!
「なに!?あのナイフには銃弾も入ってるのか!」
「リザの武器には様々な仕掛けが施されていると聞く…銃弾ぐらい仕込んでたって不思議じゃねえよ。」

ドカーーーーーン!!!
長靴ミサイルはリザの銃弾により爆発し2つとも霧散した。
その爆発の衝撃でリザはさらに高く舞い上がり──空中で魔法を帯びたナイフを構えて急降下する!

「奥義!連斬断空刃!!!」

凄まじいスピードで繰り出されたリザの攻撃が、ロボの頭部と胴体を切り刻んだ!
リザのナイフはいつのまにかエミリアの魔法でリーチが伸びており、その斬撃はロボの内部まで及ぶ!

ガシャン!ガガガガガガガガ!
「動力部にダメージ。駆動機関損傷。全体損傷率、38パーセント。」
「う、嘘だろ!?なんだ今の攻撃は!?全然見えなかったぞ!?」
「あのスピードでここまでの斬撃…!やっぱり『スピカ』のリザは化け物だ…!」
「お…俺ら…勝てんのか…?」

  • 最終更新:2018-01-21 23:01:37

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