06.01.下準備

207: 名無しさん :2016/12/23(金) 18:39:30 ID:???
【名前】エミリア・スカーレット
【特徴】高校1年生。のんびり屋で天然な性格。青の長い髪に白のロングコートが海と貝殻を連想させる。
極寒の地ガラドに住むエミリア。生まれつき強い魔力を持って産まれた彼女が魔法を唱えると、初級呪文は中級呪文になり、中級呪文は上級呪文になる。
上級呪文に至っては予想がつかない規模になるため、彼女が迂闊に唱える事は固く禁じられていた。
レジスタンスに高い金を提示されてホイホイ雇われた彼女は今、その暴力的なほどの魔力を振るい王の軍勢から町を守っている。

「さあ!リザちゃんとアイナの初仕事ですわよ!はりきっていきま…ふあぁあーーっくしょい!」
「・・・・・・・・・・・・」
大声でくしゃみを放つアイナを冷めた目で見つめるリザ。
ターゲット抹殺のため極寒の地に来た2人は、雪が降り積もるガラドの町の広場に到着していた。
「ズズズズ…クソ寒いですわね…さっさと終わらせてあったかいこたつの中に入りたいですわ…ねっリザ?」
「…うん。早く帰りたい…くしゅんっ!」
「キャーーーー!リザちゃんのくしゃみドチャクソ可愛すぎですわーーー!!動画に撮ってアップすればミリオン達成間違いなしですわよーーーーー!!」
「おいそこのピンクツインテ!うるせぇぞ!」
酒を手にした男が、アイナに向かって怒号を飛ばして来た。
「うっ…つい大きな声を出したせいで昼間っから酔いつぶれている社会のクズにキレられてしまいましたわ…反省反省。リザちゃん怒ってる…?」
「…私の方が年上だから、ちゃん付けはやめて。呼び捨てでいいから…」
「お、おぉう…承りましたわ…ふあぁっくしゅん!!」
「…とりあえず宿屋に行こう。今夜の作戦を考えないと。」

「リザ…前々から気になっていたのですけれど、どうしてあなたはそんなに無口なんですの?」
宿屋を探す道中で、アイナが尋ねる。リザは少し考えてから言った。
「喋るのは苦手…相手が何を考えているかわからないから。言葉ではなんとでも言えるでしょう…?」
「うーん…とりあえず現代社会の風潮に毒されすぎだと思いますわ。相手の考えてることなんて深く考える必要はありません!言いたいことをハッキリ言うことが大事…ひゃあぁっ!?」
ドテッ!!
話すことに熱が入ったアイナは、うっかり足を滑らせて盛大に転んだ。

208: 名無しさん :2016/12/23(金) 18:41:04 ID:???
「痛そう…大丈夫…?」
「いったあぁあーーーーい!!!あー!血が出てるうう!アイナの小さく整った美しい手に…汚い血が…醜い血が…!」
アイナの手にできた痛々しい傷からドクドクと血が流れている。
それを見て泣きそうになるアイナに向かって、とてとてと女性が近づいてきた。
「キミ大丈夫!?派手に転んでたけど…うわ!こんなに血が出てる!」
「うう…痛い…!」
「今治してあげるね…!はっ!」
女性がアイナの手に手をかざすと、眩しく輝く光が現れた。その光の下で、みるみるアイナの傷口が塞がっていく。
「これは…治癒魔法ですの?」
「…うん。ホントはお金をもらわないとこういうことしちゃいけないんだけど…誰にも言わないでね?」
「え…ええ…感謝いたしますわ。お礼になにか渡したいのだけれど…こ、こんなものしか…」
アイナが取り出したのはハバネロ味のチョコ。アイナのお気に入りお菓子の一つだが、常人には理解しがたい代物である。だが…
「あー!このハバネロチョコ、私も大好き!ホントにいいの!?」
「え…?あなたこのチョコの良さをわかっていらっしゃるの!?」
「うん!チョコのまろやかな風味の中に、ビリビリっていうハバネロの感覚がまさに青天の霹靂!こんなに楽しい味のお菓子ってなかなかないと思うよ!」
「あ…あなたとはいいいちごミルクが飲めそうですわ!!!よかったら今からコンビニのイートインスペースで店員の目も気にせず朝まで語り合いませんこと?もちろん飲み代はわたしが支払いますわ!」
「あ…ごめん!わたし今ちょっと用事があって急いでるの!わたしよくこの辺歩いてるから、また会えると思う!またね!」
「あぁ!せめてお名前だけでもーー!」
少女は、またとてとてと青い髪を振り乱しながら走って行ってしまった。

「うぅ…唯一ぬにの親友を作るチャンスをスティックにシェークしてしまいましたわ…リザ、待たせてすまぬ…」
がくりと肩を落とすアイナ。その姿を見たリザの表情は少し強張っているように見えた。
「リザ、どうしたんですの?…まさか、あの少女とアイナが仲良く話してるのを見て嫉妬してしまったとか?もー!可愛すぎてやっぱりリザちゃんはリザちゃんですわー!」
アイナが茶化しても、リザの表情は変わらない。朝から晩まで無表情なリザがなぜ今こんな表情をしているのか、アイナにはさっぱりわからなかった。
「リザ…?本当にどうしんですの?なんか怖いですわよ…?」
アイナの不安気な表情を見て、リザは重い口を開いた。

「今の女の子が、天才魔法少女、エミリア・スカーレット…今回のターゲットよ…」

209: 名無しさん :2016/12/23(金) 20:56:07 ID:???
「そんなことは知ってますわよ?だから人気のない場所に気軽に呼び出せるよう約束を取り付けようとしたのです。」
ケロッと言い放つアイナ。その目にはそれがどうしたという感情がありありと浮かんでいる。
「いや…知ってたならいいわ。なんでもない…」
「念のため言っておきますけど、アイナはこう見えて仕事人間ですのよ。与えられたタスクを完璧にこなしたあとのお菓子とジュースが生き甲斐なのですわ。…もし万が一あなたがわたしの足を引っ張っるようなことがあったら、絶対に承知しませんからね…?」
先ほどまでの賑やかな様子とは全く違う、恐ろしい表情と低い声音を発するアイナ。
リザは今、彼女の内に秘めたる恐ろしい一面を垣間見たのだった…

「さて、宿屋についたことですし、アイナとリザの能力をおさらいしますわよ!キャハハッ☆」
「了解。」
アイナの能力はステルス能力。姿はもちろん自身の発する匂いや足音すらも消し、完全に不可視の存在となることができる。透明になるわけではないので、対象者とは距離を取る必要がある。
リザの能力は驚異的な身体能力とテレポート。50メートルを5秒で走る走力とビルの5階まで飛べる跳躍力に加え、半径50メートル以内であれば瞬時にテレポートが可能。
まさに暗殺のスペシャリストと言える2人は今夜、祖国のために戦う心優しい少女を生け捕りにするべく恐ろしい計画を立て始めたのだった。

210: 名無しさん :2016/12/24(土) 15:15:57 ID:???
「暗殺ならともかく、生け捕りとなると難しいですわね。
 魔法を封じるには…アイナが後ろから近付いて、口を塞いでしまうとか?」
「…でも彼女、呪文の詠唱なしで魔法を使ってた」
呪文の詠唱や予備動作、杖や呪文書、魔法陣などによる補助。
普通、人間が魔法を行使するには様々な手順が必要になるが…
二人は昼間、エミリアが低位の治癒魔法を「はっ!」で使っているのを見ている。
同じように攻撃魔法も使えるとしたら、おそらく彼女は『見えない敵』に容赦なく魔法を撃ってくるだろう。
アイナの能力では、透明にはなれても無敵にはなれない。
至近距離まで近づくのはあまりにリスクが高いため、結局この案は却下された。

「…眠り薬なら、安全かも」
「なーるほど!さすがリザちゃん、マジ天才ですわ!…ああ、皆までおっしゃらずともわかっていますわ。
 問題は何に仕込むか、ですわね? 味が強烈でクスリが仕込まれている事に気付きにくい物。
それでいて、誤爆を避けるためにはあの娘の他に食べる人がほとんどいない事が望ましい…
…それなら大丈夫!アイナに心当たりがありますわ! まさに蛇の道はヘビ、ってやつですわね…!」
「……じゃあ、準備よろしく(…アレはやっぱり、蛇の道なんだ…)」

さっそく睡眠薬入りハバネロを始め、アイナのチョイスで様々なチョコを準備してエミリアへの接触を図る。
アイナは自信満々な様子だが、リザは一抹の不安を覚えていて……
(エスカの占いによると…眠らせられない可能性もある。別プランも用意しておいた方が……)

211: 名無しさん :2016/12/24(土) 17:13:58 ID:???
「ん~…今夜のいちごミルクは格別ですわ!…まさかこんな場所で、わたくしの趣味を分かち合える親友に出会えるなんて!」
偶然を装ってエミリアと再会したアイナ達は、エミリアの部屋でお菓子パーティを開くことになった。

アイナ持参の眠り薬入りハバネロチョコには、あらかじめ印がつけてある。
強力な眠り薬ではあるが、天才魔法使いを相手にどれだけ効果を及ぼすかは未知数。
エミリアが眠ったら、周囲に待機していた兵士たちがすぐさま身柄を確保する手はずになっていたのだが…

「私もビックリだよー!なかなか周りに趣味が合う人いなくて……あ、リザちゃんは食べないの?」
「わ、私は…お茶で、いい…」
(…それにしてもこの子、なかなか『薬入り』を引きませんわね…)
(アイナがこんなにたくさん用意するから…)

「あ、そうだ!ねえねえ、アイナちゃん。私、一度やってみたかったことがあるんだけど…」
エミリアは、そう言って印付きのハバネロチョコを手に取ると…
(…キマシタワー!)

「二人で食べさせあいっこしようよ!ほら、アーンして……」
「……は、い…?」
…違う意味でキマシタワー!なことを要求してきた。

(どどどど、どうすればいいんですの、コレ…!)
(プランBに変更する……とりあえず、大人しく食べて)

「私はー…ワサビチョコがいいかな。アイナちゃんも持って!ほらほら」
「え…ええ……おいしそう、ですわね…」(こうなったら…どうにでもなれ!ですわ!)
意を決し、ハバネロチョコを口に入れるアイナ。途端に、視界が暗転し…糸が切れた人形のように、その場に倒れ込んだ。

ガシャアアン!!
…そして次の瞬間。部屋の窓ガラスが派手にぶち破られ、武装した数人の兵士たちが3人に襲い掛かる!

「この女だ!確保しろ!」
「なっ…何なの、あなた達!…アイナから、手を放し…」
「…待って!あの子に当たる!」
魔法を撃とうとしたエミリアを、リザが制止する。その間に、兵士達はアイナを担いで窓から逃げていった。

…アイナをさらった兵士達は、リザが密かに用意した「プランB」の仕込みである。
エミリアが睡眠薬を飲まなかった、又は効かなかった場合、アイナを人質に取ってエミリアを誘い出す作戦だ。
(流石にアイナが薬入りチョコを食べてしまうのは想定外だったが…)
兵士達を追う振りをして外に飛び出したリザは、連絡員の兵士と路地裏で落ち合い……

「では、ターゲットBを例のポイントに運びます…」
「…ええ、よろしく…念のため言っておくけど…寝てる間にアイナに変な事したら…殺すから」
「…!!…へいへい…(クソガキが…十輝星だか何だか知らんが、いい気になりやがって…)」
「それから…私が無傷で戻ると怪しまれる。2~3発、思いっきり殴って」
「…了解……思いっきり、ね…へっへっへ…」

「…あぐっ……!?」
頬を差し出したリザに対して、兵士はボディブローをみぞおちに捻じ込む。

「……っく!!」
続いて、リザの髪を掴み、下腹に強烈な膝蹴り。

「…っ!!!」
…更に、横の石壁に思い切り顔面を叩き付けた。
ずるずるとその場に崩れ落ちるリザに、兵士は脚を振り上げて……思い切り踏みつける!

「……こんなもんで宜しいですかね、十輝星どの。…では、また…へへっ」
「…………」

リザは何も言わず、痛みを堪えていた。
その気になれば兵士ごとき一瞬で殺せるが、今、作戦を台無しにするわけにはいかない…


  • 最終更新:2018-01-21 23:00:20

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