05.01.舞

199: 名無しさん :2016/12/22(木) 03:11:18 ID:???
【名前】柳原 舞(やなぎはら まい)
【特徴】高校2年生。黒髪ロングのクールビューティ。
学校の制服に、黒ストッキングと編み上げブーツを装備。すらりと長い脚で魔物をも蹴り倒す。
ブーツはこの世界で手に入れたマジックアイテムで、反射神経・瞬発力・キック力が大幅に強化される。

…月明かりの下、ゴーストタウンとなった高層ビル街を駆ける少女の姿があった。
彼女の名は柳原 舞(やなぎはら まい)高校2年生。凛とした美貌を持ち、年齢以上に大人びて見える。
長く艶のある黒髪に黒いセーラー服、黒の編み上げロングブーツ。黒のストッキングに包まれた脚はすらりと長く、
野生の黒豹のような強靭さとしなやかさ、美しさを併せ持っている。

「エスカの占いによると、あの娘がターゲットらしいけど…」
屋上から、その姿を遠巻きに眺めるアトラとシアナ。
占い師エスカの情報によれば、彼女の美脚は魔物をも蹴り倒すほどの恐るべき威力を秘めた凶器でもあるという。
その実力の一端は、ビルの壁を次々と蹴りながら高所を飛び移るという、人間離れした脚力からも垣間見えた。

…しかし今、彼女は追われているらしい。追手は巨大な半人半蛇の魔物、ラミア。
廃ビルに囲まれた公園跡で、両者は対峙する…
「シャァァア…ふふふ。ようやく追い詰めたわぁ…覚悟なさい、お嬢ちゃん」
「追い詰めた?……違うわ。私が誘い込んだのよ」

ラミアの体長は平均で約7m、抱き枕にすれば10万円にも達し、
大型の個体になると15mを超える例も報告されている。
その強靭な蛇の下半身に捕まれば、通常の人間の力では脱出は不可能。
全身の骨を砕かれ、生きたまま丸呑みにされてしまうという…

「…単独でラミア相手って、結構キツくね?」
「いや。情報によれば、彼女はあれと同ランクの魔物を何体も狩ってる…この場所で」
…シアナの言葉通り、舞は地形を巧みに利用しながら、戦いを優位に進めていた。
周囲のビルや石壁を跳び回りながら、強力な蹴りを次々とラミアに叩き込んでいく。

「シャアアァァ…クソっ…この小娘がっ…!!」
「さっきまでの威勢はどうしたのかしら?……次で終わりにするわ」
「なるほど。ここが舞ちゃんのホームグラウンドってわけだ…てことは」
「…この場所に罠が仕掛けられているなんて、夢にも思わない」

舞はバックフリップを織り交ぜながら連続で後方に跳び、ラミアから距離を取る。
大技を繰り出すための予備動作であったが…その着地地点の地面が、突然消失した。

「…えっ……!」
突然現れた『落とし穴』に脚を取られ、バランスを崩した舞。間髪入れず、物陰から飛んできた矢が肩口に突き刺さる。
「…痛っ…!?」
舞はすぐさま肩に刺さった矢を引き抜き、落とし穴から飛び出すが…
立ち上がろうとした時、不意に眩暈に襲われ、足元をふらつかせた。
(まさか今の矢に、毒が…?…でも、どうして…)

動きが止まったのはほんの一瞬。だが今は、その一瞬が致命的となる。
「シャアアアァァッ!!」
(ドゴッ!!)
「っあぐうっ!?」
蛇女の丸太のような尻尾による薙ぎ払い!…横からの衝撃に、舞の身体は大きく吹き飛ばされた!!

200: 名無しさん :2016/12/22(木) 03:13:14 ID:???
(…ガシャアアン!!)
ビルの谷間を放物線を描きながら飛んだ後、舞の身体は廃ビルの4階の窓へと叩き込まれた。
割れた窓ガラスの破片と共にフロアをゴロゴロと転がり…コンクリート剥きだしのフロアで仰向けに倒れる。

「っ…か……はっ…一体、何が起こっ…」
痛みと混乱、そして毒矢による眩暈で立ち上がれない舞。更にそこへ追い打ちをかけるように…
(…ガシャン!!)
「きゃああああぁぁあああっ!!!」
金属のぶつかり合うような音…と同時に、右足首に凄まじい激痛が襲い掛かった!

「一丁上がりー!これで俺は2ポイント目だな!」
いつの間にか仕掛けられていたベアトラップが、舞の右足首に深々と喰い込んでいる。
…舞の履いているブーツは、瞬発力、反射神経を大幅に引き上げるマジックアイテム。
強力な反動から脚を守るため、物理攻撃に対する耐性も極めて高いはずなのだが…
金属製の牙はそれを容易く貫通し、コンクリートの床を鮮血で染め上げた。

「僕は、落とし穴1回で1ポイント…まだ、油断しない方がいいよ。もう片方の足は無傷だし……」
(子供が…2人…?…どうしてこんな所に…)

見知らぬ少年の一人は、傷だらけの自分を見下ろして無邪気に笑っている。
そしてもう一人は…さしたる興味もない、と言わんばかりに、ただ冷たい視線を投げかけるのみ。

「あ、あなた達…一体、何者なの……!」
舞は少年達の底知れない悪意を感じ取り、一連の異変がこの二人の仕業だと即座に理解する。

「俺はアトラ、こっちはシアナ。『王下十輝星』って聞いたことある?
まあ話すと長いんだけど…要するに舞ちゃんを『狩り』に来たんだよ」
「…っ……狩り、ですって……!?」
「…面倒だから、僕としては手っ取り早く終わらせたいんだけど…まず、左から脱がそう。アトラ、この辺に頼む」
「はいはい、了解…シアナも真面目だよなー。もうちょっとノンビリやればいいのに…」
どうやら二人は、舞のブーツを脱がそうとしているようだ。
つまりそれは、舞の常人離れした脚力の源がブーツにある事を、彼らが把握している、という事。

「何なの、あなた達…一体、どこまで知って……」
更に言うなら、今夜この場所に自分が現れる事すら予め知っていて、罠を張っていた…
敵の恐るべき周到さを感じ取り、舞は背筋に冷たい物を感じる。

(…バチン!!)
無邪気な少年が、舞の左脚に手をかざすと、右足首の物より一回り大きいベアトラップが出現し、
獲物の太股を噛み千切らんばかりに、深々と食い込んだ!
「うあ"ああ"あ"あ"ぁあああっ!?」

「どこまで知ってるかって? そうだなあ…
 …舞ちゃんはこの後、3割くらいの確率で確実に死ぬ、ってこと位かな」

201: 名無しさん :2016/12/22(木) 23:15:52 ID:???
「…3…割…?…意味わからないこと言ってないで…これを、外しなさいっ…っぐ…!」
「はいはい、今外しますよ…靴ヒモほどくの意外と面倒くさいな……っと、これでよし」
陽気な少年が、舞の左足から魔法のブーツが脱がせた。続いてもう一人の少年が右足のブーツを脱がしに掛かる。
「…紐は解いたけど、ベアトラップが邪魔で脱げないな…アトラ、これ外してくれる?」
言いながら、右足首の罠をコンコンと叩く。その度に、舞の右足に骨まで響くような激痛が走った。

「っあ…!…く…!」
(このままじゃ、本当に殺される…反撃、しないと…!)
相手が子供だからといって、迷っていられる状況では既にない。
幸い敵はまだ油断しているらしく、右足の罠を外そうとしているようだ…
(外れた瞬間、蹴りを叩き込む…!)
両足の激痛に耐えながら隙を伺う舞。
だが…右足の罠が消えたのと同時に、舞の背中から床の感触が消えうせた。

「…なっ!?」
床に突然、巨大な穴が開く。舞は為す術なくその穴に落ちていく。
…その寸前、冷たい目をした少年が彼女の右のブーツを掴んだ。

「ひっ…!?」
少年は見た目によらない握力で、舞の右足首をしっかり掴んでいる。
傷口から流れだす血が、靴紐の緩んだブーツの中に溜まり、脚を滑らせる…
このままでは、ブーツが脱げて穴の下へ転落するのは時間の問題だ。

「貰った予言には、幾つかバリエーションがあるんですが…
まず最初に、ここから落ちて死ぬケース。多分これが一番楽だと思います」
「っ…もう…やめ、て…!…おかしいわ、あなた達…!」
少年は舞に向けて淡々と語りかけながら、果実でも絞るように手に力を込めていく。
舞の右足は更に強い力で締め付けられ、ブーツの内側でぐじゅり…と湿った音を奏でた。

「あ、ところで…お姉さん」
「……?……」
その時。それまで無表情だった少年が、ふいに何かを思い出したように呟く。

「パンツみえてますよ」
「…………!!!!」
反射的に放った、負傷した左脚での回し蹴りが少年の側頭部にクリーンヒット。
少年はたまらず手を放し、舞はそのまま階下へと落ちていった。

202: 名無しさん :2016/12/22(木) 23:30:41 ID:???
「……きゃあああああぁあああっ!!」

(ずどんっ…!!)
下階の床にも、四階と同様穴が開いていた。その下の階は吹き抜けになっていて、
舞の身体は一階まで一気に落とされた。当たり所が悪ければ即死もあり得る高さだ。
「…っ!!……………はあ……はぁ…っく…」
舞は空中でどうにか身体を制御し、なんとか動ける程度にはダメージを抑えた。だが…

<まず最初に、ここから落ちて死ぬケース。多分これが一番楽だと思います>

…第一の修羅場を生き延びた舞には、ここから更なる苦難が襲い掛かる事になる。

「ここから逃げないと…あいつらが来る前に」
右肩に受けた矢傷、窓ガラスを割った際に負った全身の切り傷、そして何より両足の負傷が酷い。
左脚の太股はストッキングがボロボロに破け、巨大な獣の歯型のような痕から血が止めどなく流れ出ている。
右足も、一歩歩くごとにブーツに開いた穴から血があふれ出した。

そんな満身創痍の舞の背後に、黒い影が迫り……鋭い爪を振り下ろす!

「………っ…!!」
舞も「その存在」を忘れていたわけではない。警戒してはいたのだが、負傷した脚では完全にかわす事はできなかった。
黒いセーラー服が斜めに切り裂かれ、背中に新たな傷を負う。

「シャァァア…あら、お嬢ちゃん。少し見ない間に随分と美味しそうな格好になったわねぇ。ククク…」
(まずい…こんな時に…)

長大な身体を持つラミアだが、上半身は人間よりやや大柄な程度。
そして下半身は蛇であるため、這うように進めば狭い場所へも容易に入り込める。
ビルの中に入った舞が出てくる様子がないのを不審に思い、廃ビルの中に入って来たのだ。

「じゃ、第二ラウンドと行きましょうか。さっきまでのお礼に、全身の骨バキバキ言わせてから…
ゴックン♪してあげるわ。ふふふふ…」
「……3割どころの確率じゃなさそうね…」

勝てる要素は万に一つもない。逃げ切れる可能性もない。
それでも敵に弱みだけは見せまいと、舞は傷だらけの脚で、再び宙を舞う。


「シアナ…大丈夫かよ」
「ああ…ストッキング越しだから断言できないけど、多分グレーかな」
負傷した左脚、魔法のブーツを脱いだ状態での蹴りではあるが、
しばらくの間シアナを時間昏倒させるには十分な威力を持っていた。

「いや、そういう事じゃなくて…お前ホント、性格変わったよな」
「エスカに貰った2番目の予言によると、彼女はラミアに殺される…この可能性が一番高い。
 その場合、すぐに止めは刺されないだろうし、最後は……」
「…だな。んじゃ、ちょっと休んでから行こうぜ!たしかどっかにお菓子が…あ、これは…」
……しかしカバンの底から出てきたのは、アイナに貰った安納芋チョコ。
「…いr「いらない」
即答だった。

203: 名無しさん :2016/12/23(金) 02:59:31 ID:???
激痛に耐えながら跳躍し、舞はラミアに渾身の蹴りを試みるも、するりと躱されてしまう。
「くっ…痛…!」
「ヒヒヒ…動きが鈍すぎるわ。かなり打ち所が悪かったようね。もうボロボロじゃない…!」
(あ…足が使い物にならない…!こんなんじゃまともに飛べやしないわ…なんとかして逃げないと、本当に殺される…!)
勝機は万に一つも無いと判断した舞は、視線を動かし逃げ道を探す。
ここは建物の一階。走るしか無いが、出入り口は玄関しか見当たらない。
ただ闇雲に走っても、今の足の状態ではすぐに捕まってしまうだろう…
だがそれ以外、逃げ道になりそうな道は見当たらなかった。

(くそ…一体どうすれば…!)
舞が思考している間に、ラミアは恐ろしい形相でゆっくりと近づいてくる。
「万策尽きたなら…さっさと殺して食べてあげるわ!」
「ひっ…!?いや…いやああぁっ!」
舞が悲鳴をあげるのと同時に、ラミアの尻尾は舞の体を捉えて締め上げる!

「ぁ…ぐ…ぐぅうう…!」
(やばい…このままじゃ…!だ…誰か…!)
「可愛いお嬢ちゃん、やっと捕まえたわ♪いい音色を聴かせてね…ンフフフフフ…!」
バキバキバキバキ…!
「あぁああああぁあぁあぁああーーーーーッ!!!」
あまりの激痛に発した舞の凄まじい悲鳴が無人のビルに高らかに響いた。その声を聞いてラミアはにんまりと悦に入り、舞の苦悶の表情を眺める。
「あぁ…!あなたみたいな美少女の悲鳴って最高だわぁ。もっと聞きたいけど…そろそろお腹の虫が耐えられなくなってきたのよねぇ…」
そう言うと、ラミアはゆっくりと大きな口を開けた。口裂け女のような大きな口が舞の視界に広がっていき、吐息が舞の鼻を掠めるほどに接近していく…!

「この口はねぇ…あなたみたいな女の子を丸呑みにするためにこんなに開くのよぉ…ンフフフフ…!」
「や、だぁっ…まだ死にたくないっ…!やめて…離してえっ…!」
舞の命乞いもどこ吹く風と言わんばかりに、ラミアは締め上げている舞の体を口元にゆっくりと近づけていく…!
その様子は、小さな子どもが大好物の最後の一口を、口内へゆっくりと運ぶ様子によく似ていた。
「黒髪ロングでクール美少女の柔らかそうなふわふわお肉…いただきま~す♪」
「い…いやああああああああああああああぁあぁあぁあぁあぁぁあーーーーーーーッ!」

夜の帳が落ちた廃墟から、月まで届いてしまいそうな少女の絶叫が響き渡った。

204: 名無しさん :2016/12/23(金) 12:31:35 ID:???
「んんん…だいぶいい声で鳴くようになってきたわねぇ…さっきまでの威勢はどうしたのかしら?」
舞の頬を伝う涙とこびり付いた血を舐め取りながら、ラミアは最初に受けたセリフをそのまま舞に投げ返す。
たかが人間に翻弄されていたことが、よほどプライドに障ったのだろう。…それも、ある意味では当然。
いかに強力な力を手に入れたと言っても、舞は元々ただの人間の少女でしかない。
本来ならラミアの方こそが狩猟者(ハンター)であり捕食者(プレデター)なのだ。
獲物を捕らえる技も、それを殺さず生かさず弄び、長く楽しむ手管も…
「ククク……次で、終わりにしてあげる」
そして、止めを刺すのにベストな瞬間を見極める目も、ラミアは生まれながらにして持ち合わせていた。

「いやっ…来ないでっ…!」
今や完全に冷静さを失い、闇雲に蹴りを繰り出す舞。
だが、まだブーツを履いていた右脚での蹴りさえも、ラミアに簡単に受け止められてしまう。
「本当はもっと遊んであげたいけど…イキの良いうちに丸呑みするのが、一番おいしいものねぇ?」

「い、やっ……あああああああああぁあぁぁあ!!!」
鋭い爪が右の太股にずぶずぶと喰い込み、左脚以上に深い傷を刻み付けていく。
長い舌がねっとりと絡みつくと、ブーツを剥ぎ取り…中に溜まった血とともに呑み込んだ。
抵抗する術を完全に失い、完全に戦意を失った舞。ラミアはその瞬間を逃さず…

「お、お願い、死にたくない…助けて…何でもす」
(ごっ……くんっ………!!)
頭から一気に、呑み込んだ。

…………

「うーんこの状況」
休憩を終え、戦いが終わった頃合いを見計らって階下に降りてきたアトラとシアナ。そこで彼らが見た物は……
血を吐いて横たわるラミアの死体だった。

「あの状況から生き延びたって事かよ?…どう思う、ワトソン君」
茶化しながらシアナに問いかけるアトラ。
周囲に舞の姿はない。逃げたとしてもそう遠くへはいけないはず…

「ラミアに外傷はない…血の吐き方から見て、体の内側から攻撃された、って所かな」
「…でも、ラミアに呑み込まれたら蹴りなんて出せないだろ。それにあの脚だし…」
ラミアの体内は長いが狭く、蹴り技を出すスペースは皆無。
だが内臓が近くにある分、蹴り以外でもそれなりの威力の打撃が加えられれば、あるいは…

「(ペロッ…)つまりこれは…密室殺人!」
「それは違うよ(論破)…まあ、なんとなく予想はついた。答え合わせに行こうか」

205: 名無しさん :2016/12/23(金) 12:43:06 ID:???
「そもそも、僕があの時反撃された事自体、エスカの予言にはなかった…」
「まあ、エスカの能力でも、完全な予知はできないらしいからな…異世界人の運命は、読みづらいのかも」
…アトラとシアナは、現場に残されていた血の跡を辿っていく。

「そうだね。『運命を変える力』…中でも特にそれを強く持つ、5人の戦士…」
「月瀬瑠奈や唯ちゃんも、その一人ってわけか…」
アトラは闘技場で見た唯たちの試合を思い出す。
あの二人も、服の力がなければ普通の少女に過ぎないが、王の元から見事に逃げおおせてしまった。
まるで目に見えない何らかの力に、守られているかのように。
しかし、その運命の加護も…柳原舞には、もたらされなかったようだ。

「…なるほど。負傷の少ない腕にブーツをはめて攻撃したわけか」
「先にブーツだけ呑まれて、そのあと本人は頭から呑まれた。そして胃の中で、たまたま手元にあったブーツを探り当て…」
だがエスカの占いには、その可能性さえも記されていた。
彼女の言う「的中率3割」は、実際の所かなり謙遜…あるいは別の理由で、かなり低めに提示した数字かも知れない。

「…ところでポイントってどうなってたっけ?」
「アトラは2ポイント。僕の落とし穴は最初の1回と、その後2フロア落として3ポイント。」
数十メートル先に、二人は舞の後ろ姿を見つけた。
先ほど以上に傷だらけで、唾液にまみれ、芋虫のように這い進む無様な姿を…

「え、俺は毒矢とトラバサミ2回で3ポイントじゃないの?」
「右足のは後で外しただろ」
「だって、あれはシアナが外せって言ったから…!」
「じゃあ、左足のトラバサミは僕が仕掛けろって言ったんだから、僕のポイントだな」
「ぐぬぬぬぬぬ…お前、本当に…変わったというか、いい性格になったな、マジで…」
聞こえよがしに言い争う二人。
獲物を追い詰める『狩猟者』達の声が、少しずつ舞に近づいていく…

…………

「っ…やだっ……ひ、痛っ…やめ、て…っぐ、あああぁ…!!」

獲物を輸送するための大型ヘリが、朝焼けに染まる廃墟の上空をホバリングしていた。
ヘリから垂らされた鎖を舞の脚に巻き付け、先端のフックを肩に突き刺す。
シアナとアトラが合図すると、ヘリはそのまま首都イータブリックスへ向けて飛び去って行った。
エスカが占えた限界時間は過ぎているため、輸送中の衰弱死や転落死の可能性も否定はできないが…
この世界では、王の手にかかれば死すら捻じ曲げられてしまう。
王の玩具か、地下闘奴か、はたまた狂科学者の実験材料か…舞に待ち受ける次なる運命を知る者は、今は誰もいない。

「あ、もしもしシアナです。いいブーツが手に入ったんですが…ええ。元の持ち主は女子高生で…」

「くさそう」
「言い値で買うって」
「っしゃ!俺、PSVR買お!」


  • 最終更新:2018-01-21 22:59:53

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