01.04.彩芽

93: 名無しさん :2016/11/08(火) 02:01:42 ID:???
「『白銀の戦士、街中で乱闘』… 王都警備隊に盾突くなんて、身の程知らずな奴もいるもんだなー…」
ニュースサイトの記事を斜め読みしながら、古垣 彩芽(ふるがき あやめ)は呟く。
この何かと物騒な謎の世界に落とされて一か月。彩芽は相変わらず引きこもってネットやらアニメやらに没頭していた。
(正義の味方か…身の丈に合わない事しても、痛い目に合うだけなのに。ま、ボクには関係ないけどね…)
彼女はまだ知らない…自分自身が、この絶望の世界の片隅に残された最後の希望である事を。

「情報にあった住所…ここだな」「ふひーひひひ!ボクっ子!メガネっ子!黒タイツ!」「くさそう」
「おい何人か裏回れよ」「ただのヒキコモリJKだろ?2~3発ボコればヨユーだってw」
…そして、この世界に安全な場所など、どこにもない事を…

94: 名無しさん :2016/11/09(水) 00:56:36 ID:???
(ガシャン!バリーン!ドカッバキッガンッ!…バチン!)
「…ひっ…!!?」
最初は何かの爆発か、雷でも落ちたのかと思った。突然金属の棒か何かで窓ガラスが割られ、ドアが蹴破られる。
続いて、十人近くの黒づくめの服に仮面を被った怪しい男達(だと思う、たぶん全員)が土足で部屋になだれ込んできた!
「ヒャッハーーー!!トリック!アンド!トリーート!」「ヘイカノジョー!殺りサーの姫になってくんない!?」
「ふぃひひー!!ひんにう!タンクトップ!パーカー!!」「くさそう」

95: 名無しさん :2016/11/09(水) 00:59:01 ID:???
驚きの余り椅子から転げ落ち…腰が抜けていてすぐには立ち上がれない。。
背後の本棚に寄りかかるようにして体を起こし…身長も横幅も自分の倍はありそうな男達を見上げる。
(何者だお前ら。どうしてボクの隠れ家を知ってる。どうやってセキュリティを突破して…)
言いたいことは山ほどあるのに、混乱と恐怖で一言も喋れなかった。
(い、いや大丈夫だ落ち着けボク。この世界に来てから賊の侵入ぐらい想定してたし、
戦い方だって何度も脳内でシミュレーションしてる。
まずは金的に蹴りを一発。それから本棚の陰にしまったスタンガンで…)
油断しきった様子で無造作に近づいてきた賊の一人にダッシュで近づき、必殺のキックを放つ!

96: 名無しさん :2016/11/09(水) 03:11:16 ID:lCsgSu6E
「うわあぁあっ!」
引きこもり生活が長すぎた。
彩芽は勢い余って足を滑らせ目の前の男に激突しもみくちゃになってしまう。
組んず解れつを繰り返しながら2人はゴロゴロと階段を下り、玄関から家の外に飛び出した。
「があぁ…!いってぇ…!おいクソガキ!この俺になにしやがる!ただじゃ済まさねえぞ!」
男は体のあちこちから血を流しているが、重症ではない。一方彩芽は奇跡的にも無傷だった。
家の中からは笑い声とともにドタドタと玄関へ駆け下りる足音が聞こえる。
「この状況なら、これを使うしか…!」
彩芽はすばやく身を起こし、男の首筋に小さな端末を取り付ける。
「あ?なんだこりゃ…ってうおおお!?体が勝手に動くぞ!?なんじゃこりゃああ!?」
「アヤメカNo.08『懐柔ブレインコントロール』の効果だよ。操縦桿も不要で脳内制御できるところがアピールポイント!」
男から逃げながらも彩芽は自信作を自慢せずにはいられなかった。
「クソがああ!まったく言うこと聞かねえぞ!」
男が装備しているグレネードを手に取り彩芽はピンを抜かせる。と同時に男たちが玄関から現れた。
「ヒャッハーーー!大丈夫っすカ!?スボスボスボススボスボスボス!?」
「ふぃっひひ!!ひんぬう!?ボクっ娘と!?もうすぐ!?お楽しみぃ!!!」
「捕まえちゃえ~!みんなでおしくらまんじゅうだぁ~!」
「くさそう」
「おいバカ共!!!こっちに来るなああああああああああああああああああ!!」

97: 名無しさん :2016/11/10(木) 04:42:49 ID:???
「…それ使い捨てで1個しかないし、効果時間も短いのが欠点だけど…バカばっかで助かった」
男がピンを抜いたのはスタングレネード(閃光弾…殺傷力はないが激しい爆音と閃光を出す)だったらしい。
結果的に全員を巻き込むことが出来たのはラッキーだった。短時間なら逃げる時間を稼げるだろう。

「何にしても、ここは引き払うしかないか…くそっ」
(にしても、仕掛けておいたトラップが全部無効化されてるなんて…)
あの頭の悪そうな賊どもにそんなことが出来るとは思えないが…今は考えている暇はない。

たまたま身に着けていたメガネ型端末以外はほとんど着の身着のままで隠れ家を飛び出した彩芽。
ネット上で拾った設計図を元に、ジャンク品を集めて作った『アヤメカ』シリーズも、ほとんど持ち出す余裕はなかった。
だが、門を出たところで…不意にぞくり、と悪寒を感じた。姿は見えないが、確実に、近くに…
(…誰か、いや…何かが…いる…!!)

「んん~…素晴らしい。私の見せた設計図を元に、改良・小型化・独自アレンジまで施して実戦活用するとは。
やはりキミは天才だ。私の花嫁にふさわしい…」
…生暖かい吐息とともに頭上から降り注ぐ、妙に甲高い男声。
声の主を確かめようと振り向く暇もなく…ガチャリ。という金属音とともに、首に何かを取り付けられた。

98: 名無しさん :2016/11/10(木) 04:44:40 ID:???
「だが、キミの作品にはいささか遊びが足りないなァ。開発において最も大切な物が欠けている。
私の技術を持ってすれば、キミが家で観ていたゲームやアニメ映像の中に命令を紛れ込ませて意のままに…
例えばセキュリティ設備を無効化させ、その記憶を消去するような事も容易いのだが…」

声が耳元にまで近づくと全身を悪寒が駆け抜け、彩芽は思わずよろけながら前に出て、振り向く。
「うわぁぁぁっ!…はぁっ!はぁっ…な、なんなんだ、お前…!!」
長身長髪で骸骨のように痩せ細った、白衣の男。面識はもちろんあるはずもなく、花嫁扱いされる筋合いは断じてない。
「…だが、あえての音声認識!あえてのそのデザイン!そう、発明に必要なのは…ロマンだよ。ンン~…」
彩芽の首に取り付けられたのは…大型犬が付けるような、丈夫な革製の首輪のようだった。

「では、彩芽くん。キミの現在穿いている下着の色と種類…そして経過日数を報告したまえ。そして、それを私に差し出すのだ」
「…はぁ!?いきなり何言いだすんだこの変態!ボクの下着とか…白だよ白!ウニトロで買った、3枚1000円の!
一昨日の夜からだから、今3日目くらいだけど…ちょっとゲームしててシャワーするの忘れただけだから!
ほら、今脱ぐから…見るなよ!絶対見るなよ!!……って、あ、え…!?…!!」
デニムスカートの中に両手を入れ、おもむろに白い布を下ろし…男に差し出した所で、ようやく彩芽は我に返り…絶句した。
「わかるかね…これが『ロマン』だ」

99: 名無しさん :2016/11/11(金) 01:36:22 ID:???
「な……ボクは、一体…!…この、首輪か!!くそっ、外れない…」
変態男が自分のぱんつを手にして嫌に上品に匂いを嗅ぐ異様な光景に、愕然とする彩芽。
「試運転は上々のようだな…ああ、忠告しておこう。その首輪を無理に外そうとすると…」
(バチバチバチィッ!!)
「ひ、ぎっ……!!!?」
「…高圧電流が流れるようになっている。反抗的な雌犬には躾が必要だからね。ククク…」
全身に身を焼くような激痛で悲鳴すら上げられず、彩芽は膝から崩れ落ちた。
「あ…ぅ……」
所々に焦げ跡がついたタンクトップや体から立ち上る煙が、小さな首輪に込められた恐るべき悪意の大きさを物語る。

100: 名無しさん :2016/11/11(金) 01:39:48 ID:???
「抵抗は無意味だと、理解できたようだね…では、早速キミの処女を頂こうか」
白衣男に前髪を掴まれて乱暴に引き起こされ、彩芽の心は恐怖と絶望で塗りつぶされた。
今や彼女のスカートの下の貞操を守るものは何も…そう、布切れ一枚さえも残されていないのだ!
「…どうして……ボクが処女だってことまで知ってるんだ」
追い詰められてパニック状態に陥ったさなかに、ふと頭に浮かんだ疑問を口にすると…
数秒の沈黙の後、白衣の男は吹き出し…その後、狂ったように笑い出した。
(なん…なんだよ、これ…悪い夢なら、醒めて…)

101: 名無しさん :2016/11/11(金) 01:49:32 ID:???
…彩芽は謎の変態白衣男に好き勝手に弄ばれ、抵抗どころか、今や自らの意志では指一本動かせない。
まずはコレをしゃぶって大きくしろ、と股間の男性器を目の前に突き出された、その時。
「あそこにいたぞー!ブチころせーー!!」
…背後から集団の足音と、大声。さっき襲ってきた黒服の集団だ!
「あそこ…ブチ、ころ…」
その声を聴いた途端、彩芽の体が『勝手に』動き出し…
先ほどの運動不足な必殺キック(笑)とは全く違う素早く鋭く力強い前蹴りが、白衣男の急所を正確に撃ち抜いた。
(ゴチャ)
「~~~~~っ!!!!!」

102: 名無しさん :2016/11/11(金) 02:04:53 ID:???
「え、今の…何!?」
声にならない悲鳴を上げながらのたうち回る白衣男を見下ろしながら、突然の事態に戸惑う彩芽。
「お、あいつパンツ持ってるぞ!奪い取れー!」「くさそう」
別の男の声に反応し、地面に落ちた自分の下着を拾い上げる。くさそう。
(まさかこの首輪…コイツ以外の声でも反応するの!? で、でもとりあえず…逃げるなら今しかない!)
追手の連中が『あのセリフ』を口走る前に、彩芽は脱兎のごとく駆け出した。
両手で耳を塞ぎながら死に物狂いで走る。…後ろの連中が必ず言うだろう「待てー!」という声が聞こえないように。
(誰の声にも反応するとか、かなり厄介な首輪だな…最悪、耳栓でもして人の声が聞こえないようにするしか…)

103: 名無しさん :2016/11/11(金) 02:08:45 ID:???
…こうして命からがら変態白衣の魔の手から逃げ伸びた彩芽は、
その後、風呂はなるべく毎日入るよう心掛け、服装(特に下着)にも気を遣うようになり、
なぜか首輪とヘッドホンを装備していて、人の話を碌に聞かない上に
話しかけると「ボクに命令しないで」とか文句を言いだす…という
なんかエセ中二病めいた糞メガネキャラにクラスチェンジして
会う人会う人にことごとくウザがられる事になるのだったが、それはまた別の話。


  • 最終更新:2018-01-21 22:50:21

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