01.03.サラ

77: 2/15 :2016/11/06(日) 16:31:12 ID:???
…そして、時はまたも巻き戻る。
女刑事サラ・クルーエル・アモットは、極東の島国で起きた少女連続失踪事件を追っていた。
行方不明者のリストに記載されているのは、いずれも日本に住む、高校生になったばかりの少女達。
「篠原 唯(しのはら ゆい)16歳、高校1年生」
「月瀬 瑠奈(つきせ るな)同じく高校1年生。篠原唯のクラスメイト」
「古垣 彩芽(ふるがき あやめ)2年前の時点で中学2年生。家にこもりがちで、一時は餓死説も出ていた」
「山形 亜理紗(やまがた ありさ) 1年前の時点で中学3年生。古垣彩芽とは友人関係だった」

78: 3/15 :2016/11/06(日) 16:32:29 ID:???
彼女たちの共通点は、過去に「リョナ2板」と呼ばれる掲示板を閲覧、もしくは書き込みしていた事。
こんな辺境のどマイナーで歪んだ性癖持ちの集まる頭のおかしい板など、うら若き乙女が近づいて良い場所では断じてない。
おぞましくも汚らわしい、ネットの掃きだめとも言えるその掲示板に、
なんの悪夢か邪神の悪戯か迷い込んでしまった者達が、相次いで行方不明になっている…
この一連の事象が単なる偶然とは、サラにはどうしても思えなかった。
更にその後のサラの調べにより、この掲示板にアクセスした、もう一人の少女の存在を確認。
「市松 鏡花(いちまつ きょうか)2年前の時点で中学2年生…」
(私の勘が正しければ…きっと、この娘も狙われる!)
リストにあった住所を目指し、愛車「アージェント・グランス」を限界まで加速させる…

79: 4/15 :2016/11/06(日) 16:33:46 ID:???
「ここが あの 女の ハウスね」
サラは、やや古い一軒家の前に銀色のバイクを停車させた。
玄関の鍵は開いている…刑事の勘が、不穏な気配を敏感に感じ取った。
ライダースーツ姿のままドアを開けると、戸惑いがちに出迎えた同居人の制止を振り切り、鏡花の部屋へ踏み込んだ。
そこで見たものは…
「きゃああああぁぁっ!!!」
ノートPCの画面から伸びる無数の手。そして、その手に捕らわれた少女…市松鏡花の姿だった!

80: 5/15 :2016/11/06(日) 16:35:08 ID:???
「何、これぇ…いや、放してぇっ!!」
画面から伸びる無数の手は、既に鏡花の下半身、膝上あたりまでを画面の中に取り込んでしまっていた。
発行する半透明の手が、もがく少女の両腕を捕らえ、長い黒髪を掴み、
制服のスカートの中、ブラウスの内側にまでも入り込もうとしている。
同年代の少女に比してかなりボリューム感のある胸の膨らみへと伸ばされると、
既に内側からの圧力で限界に達していたブラウスの前ボタンは簡単にはじけ飛び、薄いグリーンのブラジャーが露わになった。
異様な光景に一瞬目を奪われたサラだったが…弾かれるように飛び出し、腕時計型のデバイスにコマンドを送る!
「<閃甲>!クレラッパー!!」

81: 6/15 :2016/11/06(日) 16:36:26 ID:???
女時空刑事サラ・クルーエル・アモットが<閃甲>に要する時間はわずか1ミリ秒に過ぎない。
ではその原理を説明しよう!
時空間に存在する未知の物質シャイニング・シルバー・エネルギーが
超時空バイク「アージェント・グランス」によって増幅され、コンバットアーマーへ変換。
わずか1ミリ秒で<閃甲>を完了するのだ!

82: 7/15 :2016/11/06(日) 16:38:05 ID:???
「はあぁっ!!」
サラは白銀の戦士クレラッパーへと姿を変えると、必殺の<シルバー・プラズマソード>を一閃させた。
(ズバッ! ザシュッ! ザクッ!! ギャヴァァン!!)
鏡花を捕らえた無数の手を瞬く間に切断し、画面に取り込まれかけていた市松鏡花の身体を引き上げる。
「ん…ああ…っ、ふ…やあ、身体…あつい、のぉ…」
しかし助け出した鏡花の身体は…まるで病か何かに冒されたかのように熱を帯びていた。
はだけたブラウスの奥から覘く肌は桜色に染まり、じっとりと汗ばんでいる。
ほのかにシャンプーの香りの混じった汗と…何か別の甘い香りが熱気と共にむわっと立ち上るのが目に見えるかのようだ。
吐息と共に漏れる媚びたような甘い声は、同性のサラでさえ、その理性が揺さぶられてしまう蠱惑的な力を持っていた。
(これは…あの腕に、掴まれたせい?…早くケリをつけた方が良さそうね…)

83: 8/15 :2016/11/06(日) 16:39:19 ID:???
少女を狙う無数の腕に立ちふさがり、サラ=白銀の戦士クレラッパーは
再び<シルバー・プラズマソード>で斬りかかるが…
「そんな…!?」
先程とは違い、火花が飛び散り、白銀の刃が弾き返されてしまった。
半透明の腕は半分程まで千切れたが、瞬く間に元通りに再生し…切断する事が出来ない。
原因は…プラズマソードの出力が極端に落ちているためだ。
(まさか、さっき斬った時に、エネルギーを奪われた…!?)

84: 9/15 :2016/11/06(日) 16:40:28 ID:???
一瞬の判断ミスが、致命的な隙を生んだ。
ソードを持つ腕ごと絡め取られて動きが止まった所へ、今度は両脚、そして胴体へと無数の伸びる手が殺到する!
「う、くぅ…!!し…まっ…!」
アーマーで強化されているはずのサラが全力で振りほどこうとしても、半透明の腕はビクともしない。
コンバットアーマーの出力が急速に低下していき、バイザーヘルメットのスクリーン上にはいくつもの警告メッセージが表示される。
腕や胴など、全身至る所からミシミシ、バキンと耳障りな音が響き、無敵を誇るはずの白銀の装甲には幾筋もの亀裂が走った。
そして、画面から伸びた最後の一本の腕が、太股を這いあがり、股間をくぐり、背中を通り抜け、胸元を這いながら
身動きの取れない白銀の戦士の喉元に迫る!

85: 10/15 :2016/11/06(日) 16:42:26 ID:???
「(まずい…このままじゃ…) <アージェント・グランス>…!」
その時。主の呼び声に応え、『銀の弾丸』の名を持つ超時空バイクが、部屋の窓を派手にぶち破って乱入!
クレラッパーを捕らえていた半透明の腕をまとめてなぎ倒すと、その発生源であるノートPCを前輪で踏みつぶす!
(ぼしゅん…!)
真っ二つに割れたPCは機能を停止し、それと同時に部屋全体を包んでいた異様な気配は消え去った。
「…ふう。ちょっと焦ったけど、何とかなったわね…もう大丈夫よ」
大立ち回りを演じたせいで部屋の中は酷い有様だったが…ともかく、市松鏡花を救出することに成功したのであった。

86: 11/15 :2016/11/06(日) 16:44:24 ID:???
「お、お姉ちゃん…い、今の、何だったの…? その、銀色のひと…誰…?」
一部始終を目の当たりにしていた、もう一人の同居人…小学生くらいの少女が、怯えながら部屋を覘き込んでいる。
彼女は…たしか市松鏡花のファイルに記載されていた、鏡花と二人暮らししている妹だ。
小学5年生で、名前は…市松 水鳥(みどり)。
「っと…お騒がせして御免なさい。そうね、どこから説明したものか…」
少女たちの警戒を解くため、<閃甲>を解除するサラ。銀色の鎧?が淡い光の粒子となって霧散していき…
見事なプロポーションの肢体をライダースーツに包んだ金髪美女の姿が、そこに現れた。

87: 12/15 :2016/11/06(日) 16:45:27 ID:???
「…助けてくれて、ありがとうございました。私は市松鏡花、こっちは妹の水鳥です。ええと…」
「私はサラ・クルーエル・アモット。サラでいいわ」
互いに簡単な自己紹介を交わし、一連の事件のあらましや、鏡花が狙われていた理由などを説明していく。
と言っても、今の所わかっているのは被害者の関係性だけ。肝心な犯人の目的も、その正体も、全くの謎なのだが…
「…というわけ。だから、もう2度とあんなゲスな掲示板に近付いてはダメよ。
 それに貴方もまた狙われるかも知れない。暫くは私も日本に滞在するつもりだけど…くれぐれも気を付けて」
鏡花と水鳥は恐怖と興奮が覚めやらぬのかどこか上の空の様子だったが、忠告には素直に従ってくれるようだ。
「わかりました。…あの…もし良かったら、ですけど。こっちで暮らすのなら、私たちの家で…」

88: 13/15 :2016/11/06(日) 16:48:20 ID:???
<へえ…そこまで調べていたとはね。おまけに、その能力…面白い。どうやらキミも、私の世界に来る資格がありそうだ>
その時。…どこからともなく、低い男の声が聞こえてきた。
「…誰なの!?一体、どこから…!?」
サラは椅子から立ち上がり、声の主を探して部屋の中を見回すが…人の気配は全くない。
用心のため、今は電話も、ネットワークに繋がる電子機器も、全てオフにしてあったはずだ。ただ一つを除いて…
「ここからさ…君は予定外のゲストだが、歓迎するよ」
謎の声の発生源は、サラの腕に装着した変身デバイスだった!

89: 14/15 :2016/11/06(日) 16:52:35 ID:???
「!…二人とも、逃げて! <閃甲>っ…」
「フフフ、無駄だ!さあ、私の世界に引きずり込んであげよう!」
サラの身体を銀の閃光が包みこみ、白銀の戦士へと変える。
その直後、デバイスから伸びた半透明の腕が白銀の戦士を再び絡め取った。
「いやあぁっ!サラさん!サラさぁぁん!!」
至近距離からの不意打ち。まして半壊したままのコンバットアーマーでは碌に抵抗もできず、
サラは変身デバイスの生み出した時空の穴に呑み込まれて消えていった…

90: 15/15 :2016/11/06(日) 16:56:01 ID:???
「お、お姉ちゃん…!」
「水鳥…と、とにかく…逃げ、なきゃ…!」
<ククク…そうだ。恐怖し、無様に逃げまどいたまえ…
 もっとも、あらゆる場所にネットワークの張り巡らされたこの世界に、逃げる場所などどこにもないがね…>

『王』の言葉通り、もはや少女たちに逃げられる場所など存在しない。
今や一家に、いや一人に一台とさえ言われるPC。家電や、携帯機を含めたゲーム機。
道行く人のほとんどが持っているだろうスマートホンや、道端の公衆電話。
街中で自由に使える無線LANスポット、走る車に搭載されたカーナビ、はるか上空を飛ぶ人工衛星に至るまで…
この地球上のどこにも、『追っ手』の及ばない場所はない。
二人が捕らえられ、サラと同じく『王』の世界に堕とされるのも時間の問題だろう。

<それにしても…王を倒すため選ばれた『五人の戦士』の一人と、その戦士を滅ぼす『闇の戦士』が姉妹同士だなんて。
 …私が決めた事とは言え、何とも皮肉な運命じゃないか。フフフ…>

91: 名無しさん :2016/11/07(月) 00:59:19 ID:???
「…ふふっ、ここへ来てサラの最期の仔細を知ることができようとはな…結果は一目瞭然であったが…どのような思いで取り込まれたかを考えるとまた…酒が旨いものよ…」
薄暗い部屋で1人PCの画面を眺めつつ愉悦に浸る男。彼はかつて、あの女刑事サラ・クルーエル・アモットに人生を潰された。

「…忘れもしない、2年前のあの日…」

用意周到に計画を練り、切り札に自身の命と引き替えに爆発する大量の爆弾まで用意した。万一追い詰められても捕まることはない。そう思っていた。
入念な強盗計画はしかし、あの女刑事の手により事前に看破され頓挫。実行に移す前に仲間共々追い詰められてしまった。

切り札の爆弾のことを告げた時、あいつは持っていたマシンガンを捨てた。それを見て仲間達は飛びかかった。勝てると思った刹那、まばゆい閃光が輝き、俺の同胞達は一瞬にして吹き飛ばされた。
『…は、はあ…?』
『その爆弾のことも事前に把握ずみよ。あなたの言う運び屋<ベクター>は既に仲間が押さえているわ。最初から何もかも見透かされてたってわけね。可哀想に。』
俺は頭が真っ白になった。
『まあ、これまでの経歴を見れば納得よね。あなたはこれまで自分で計画を立てたことがない。いや、立てても採用されなかったというのが正しいのかしら?自分の能力に見合わないことをするからそうなるのよ?これまで通り、したっぱとしてこき使われてればこんなことにはならなかったでしょうね。もう二度と大それたことはしようと思わないことね。それがあなたがこれから生きていく上で一番大事なこと。もっとも、あなたの余生は牢獄暮らしだけどね?』
このクソ女、俺を煽ってきやがる…お前に俺の何がわかる…女のクセに生意気なんだよ…お前の背後で復活してる四人の仲間には気付いてんのか…?男と女の力の差を思い知れよ!
『うおあああああ!!!』
俺達五人の最後の攻撃。だがわけのわからんアーマーを纏ったあいつにはまるで歯が立たなかった。
『がはぁっ…!』
あいつの拳が鳩尾に突き刺さる。
『これだからダメなのよ。なんでも力で解決できるとか最低、どうしようもないクズね…』
いつか絶対に殺してやる…激しい憎悪を胸に抱きつつ、俺は意識を失った…

92: 名無しさん :2016/11/07(月) 01:01:59 ID:???
それから先は信じられないくらい上手く事が運んだ。俺が入った牢には同じようにあの女刑事に人生を潰されたやつらがいた。共通の目的で一致団結した俺達は見事脱獄を果たした。どんな残忍な方法で復讐しようかと思案にあけくれていたある日、もともと歪んだ性癖を持っていて日本のある掲示板を欠かさずチェックしていた囚人仲間の1人がこのゲームの存在を知り、俺達に報告してきた。これこそまさに俺の怨敵への復讐にふさわしい。死んでも終わらない永遠の苦しみ。あいつの能力は封印され、俺達の手の内で弄ばれる。獄中で日々思案した幾千の処刑の全てを実行できる…!

あいつを地獄以上の処刑場に送り込むため、俺は再び計画を立てた。あの日あいつから受けた煽りが皮肉にも俺の復讐計画を完璧な物にした。
まずそれとなく日本の失踪事件の情報を流す。勘のいいサラはすぐに食いついた。事件と断定したあいつは事件の全貌が見えないまま次の被害者となる可能性が高い女性の所へ飛んでいった。日本で何があったのかは知らなかったが、数日後ゲームにログインするとプレイアブルキャラに奴の名前があった。
俺はサラに恨みを持っていた多くの組織から称賛と謝礼を受け取り、不自由のない生活を送り続けることができるようになった。言うなればサラのおかげだ。
サラは腕の立つ女刑事から一転、日々残酷な方法で男の慰み者にされる人生の絶対的な敗者へと堕ちた。サラの扱った最後の事件はサラにとって“自分の能力に見合わない”、“大それた”事件だったのだ。

身の丈にあったことをしないとね。これからのお前の人生で一番大事なことだ。もっとも、お前が人の世で生きることはもうないがな?


  • 最終更新:2018-01-21 22:49:43

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